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年代記 ~ブログ小説~ 

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【  2009年07月  】 更新履歴 

  07.01.  【 第5章 】  第85回   さわりを読む▼
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  07.07.  【 第5章 】  第90回   さわりを読む▼
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  07.09.  【 第5章 】  第92回   さわりを読む▼
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  07.15.  【 第6章 】  第97回   さわりを読む▼
  07.16.  【 第6章 】  第98回   さわりを読む▼
  07.17.  【 第6章 】  第99回   さわりを読む▼
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  07.20.  【 第6章 】  第101回   さわりを読む▼
  07.21.  【 第6章 】  第102回   さわりを読む▼
  07.22.  【 第6章 】  第103回   さわりを読む▼
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  07.24.  【 第6章 】  第105回   さわりを読む▼
  07.25.  【 第6章 】  第106回   さわりを読む▼
  07.27.  【 第6章 】  第107回   さわりを読む▼
  07.28.  【 第6章 】  第108回   さわりを読む▼
  07.29.  【 第6章 】  第109回   さわりを読む▼
  07.30.  【 第6章 】  第110回   さわりを読む▼
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第85回

第5章

 「これからどうするんですか? やはり、パリに行くの?」クラリスはそう訊ねた。「ええ、メランベルジェ校で勉強を続けます。作曲の基礎をついでに勉強したいと思っています。演奏解釈に役に立つと思います」エマニュエルが答えた。「お元気で」クラリスは握手のために手を差し出した。 エマニュエルは、両手でその手を握りしめた。そして、ためらいがちにこう言った。「わたしは、いつまでも待っています、クラリス」 そして、...全文を読む


第86回

第5章

  パリのサン=ラザール病院に着くと、クラリスは他の二人と別れてプランス=シャロンの病室に向かった。 病室の中には、三人の男女がいた。クラリスが病室に入ると、アレクサンドル=ド=ラヴェルダンがいきなりかの女に抱きついた。「聞いたよ、クラリス。きみが妹だったなんて、とても嬉しいよ!」 クラリスはびっくりしてアレクサンドルを見つめた。「・・・どうしたの、わたし、あなたの妹だったじゃないの、ずっと・・・?...全文を読む


第87回

第5章

 「・・・それで、シャロンさんは・・・?」クラリスが訊ねた。 フランソワーズとアレックスは、クラリスが実の父親を他人のように呼ぶのを聞いてびっくりした。「まだ、意識が回復しないんです」フィルが答えた。「手紙に書いたとおり、父は、若いお嬢さんが馬車の前に飛び出そうとしているのをかばおうとして、怪我をしました。病院に運び込まれてから、一度も意識を取り戻していません。担当のクルピンスキー医師は、このまま意...全文を読む


第88回

第5章

 「まあ、盗まれたのかしら・・・?」クラリスは心配そうにつぶやいた。「・・・お金も何もなくなって、絶望のあまり、少女は馬車に身を投げた・・・と記事にするんですね?」白衣の青年が言った。「まあ、想像だけでものを言ってはいけないわ」クラリスが言った。 彼は驚いたようにクラリスを見た。やがて、その表情に笑いが混じった。「・・・わたしの先生も、わたしによくそう言うんですよ」彼は言った。「あなたは、いいひとな...全文を読む


第89回

第5章

  アレクサンドリーヌの方が先に意識を取り戻した。目以外の部分が包帯に覆われていたので表情はわからなかったのだが、すみれ色の目は、三人に気がつくと涙で潤んだ。「リネット!」ゴーティエが叫んだ。「よかった、気がついたんだね・・・」 ジュヌヴィエーヴも泣いていた。「生きていてくれて、よかった・・・」  その言葉を聞くと、アレクサンドリーヌは首を横に振った。 それを見て、クラリスは思わず両手で顔を覆った。...全文を読む


第90回

第5章

  クラリスは、思わずアレクサンドリーヌを抱きしめた。「生きていてくれてありがとう、リネット」クラリスは涙を流しながら言った。「みんな、どんなに心配したことか・・・」 アレクサンドリーヌは、黙ったまま涙を流していた。「あなたは、生きなくてはならない」クラリスが言った。「生き残ったあなたには、生きる義務があるわ」 アレクサンドリーヌは力無く首を横に振った。「・・・生き残った、って・・・?」「あなたを助...全文を読む


第91回

第5章

  プランス=シャロンは、部屋に入ってきた人たちを見て、ほほえみを浮かべた。「ルイ=フィリップ=ド=ルージュヴィルと申します。このような体でなければ、起きてごあいさつすべきところですが、横になったまま失礼いたします」彼は、丁寧に挨拶した。「あなたが、ゴーティエ=ド=ティエ=ゴーロワさんですね。子どもたちがお世話になりました。特に、この夏は、クリス---あなたにとっては、クラリスですね---のためにすてきな...全文を読む


第92回

第5章

 「わたしは、星を永遠に失ってから、その星を必死に見つめていた自分に気づいた。わたしは、かの女を愛していた・・・」シャロンが続けた。「人生って、後悔の連続だよね? 死ぬ間際になって、こんなことを言うのもおかしいけどね・・・」 アレクサンドリーヌは、思わず体を前に乗り出した。体がぐるぐるまきなので、手を出すことができなかったのである。彼の前にひざまずきたいと思ったが、体が自由にならなかった。「・・・プ...全文を読む


第93回

第5章

  ゴーティエとフィルは、部屋を出た。 フィルは、ゴーティエに向かって口を開きかけた。 先に話し出したのは、ゴーティエの方だった。「わたしは、妹たちの父親代わりだった。かの女たちのことは、よく知っているつもりだ」ゴーティエが言った。「一番はっきりした性格なのは、ヴィーヴだ。明るくて、活発で・・・いつでも人気者だった。きみが・・・いや、きみとアルがヴィーヴに夢中だったのは知っていた。ヴィーヴがアルに夢...全文を読む


第94回

第5章

  フィルは、まっすぐにゴーティエの目を見つめた。「どちらでもありません。ぼくは、父が自分の命と引き替えに助けた女性を、自分の命に替えても守りたいんです」フィルが答えた。「そして、それが父の遺言だと思っています」 ゴーティエは思わず目をそらした。 フィルは、ちょっと赤くなった。「・・・リネットを愛しています。そう言えば、あなたも納得してくれますか、ゴート?」「こんなことになったから・・・?」 フィル...全文を読む


第95回

第6章

  ルイ=フィリップ=エルキュール=シャルル=ド=ルージュヴィルは、古い家柄の貴族の生まれであった。彼自身は、3番目の子どもで、年の離れた兄と姉がいた。シャロンというのは、シャルルという名前からきた愛称であった。父も兄もルイ=フィリップから始まる名前だったので、区別する必要があった。そのために家族内で用いる愛称が必要だったのである。彼の父は三番目の名前のスタニスラスが通称だった。親しい人たちは彼をス...全文を読む


第96回

第6章

  時代は、18世紀末。フランスで革命が起こり、貴族たちは次々と外国に亡命していった。 当時、ケーニヒスベルクの街にアリシア=コヴァルスカという少女が住んでいた。かの女の一家は、そこの裕福な商家であった。父親は貿易商であったが、母親はドイツ系の貴族の娘であった。さらに、娘の一人はポーランド貴族に嫁いでおり、有力な姻戚関係もあった。アリシアには、音楽の才能があった。かの女は、ピアノの名手であった。その...全文を読む


第97回

第6章

  アントワネットは、下の娘ステラを見たとき、いとこ---ピアニーナの母---のアニェースを思い出した。そっくりだったというわけではない。似ていたのは、美しいブルーの目とひとなつっこい笑顔だけである。12歳だったが、姉より美人になるだろう、とかの女は思った。 当時、トントンは31歳、シャロンは16歳だった。アントワネットがスカラ、ステラ姉妹を紹介したとき、トントンの方は姉妹と会話したが、シャロンの方は挨拶...全文を読む


第98回

第6章

  祖母と兄の葬式のためにローザンヌにやってきたシャロンであったが、実のところ、彼は彼らの死より現在も苦しんでいる母親代わりだったアントワネットの病気の方が気がかりであった。彼にとってアントワネットは、母親以上の存在だったのである。 ステラとその母親ピアニーナは、婚約者だった男性の葬儀のためにローザンヌに来ていた。ステラは、アントワネットに呼び出されたとき、恐らく婚約者の死についてお悔やみを言うつも...全文を読む


第99回

第6章

  その恋は、シャロンの一目惚れから始まった。 1872年の秋、新学期が始まってまもなくのある日の夕方のことであった。 シャロンは、チェロの練習をするために開いている練習室を探していた。ある部屋の前を通りかかったとき、彼は不思議な思いを感じた。曲はベートーヴェンのピアノソナタであった。 それまで、彼はベートーヴェンという作曲家はあまり好きではなかった。彼の師も『きみには、ベートーヴェンは向いていない...全文を読む


第100回

第6章

  部屋を飛び出したシャロンの後を父親のスタニスラスが追いかけた。 シャロンは、廊下の突き当たりに飾ってあった母親の肖像画の前で泣いていた。「・・・シャロン、どうしてトニー叔母様に返事しなかったの・・・?」父親が訊ねた。 シャロンは振り返った。 スタニスラスは、息子がこれほど絶望的な表情を浮かべているのを見たことはなかった。彼は、はっとして次の言葉を飲み込んだ。 ややあって、シャロンがつぶやいた。「...全文を読む


第101回

第6章

  シャロンは、自分の人生はこれで終わりだと本気で考えていた。 この先の人生は、もう自分の人生ではなかった。彼は、他人が渡してくれた地図を頼りに、人が決めた道を人が決めたとおりに歩いていくという人生を選択したのである。その人生を選択せざるを得なかったのである。 彼は、これまでの人生に終止符を打つためにパリに戻った。 彼は、音楽院に退学届けを出し、恩師に別れを告げた。・・・そこまでは、何も難しいことは...全文を読む


第102回

第6章

  シャロンは、ルイーズ=アントワネット=ド=ラ=ブリュショルリーと彫られた新しい墓の前に立っていた。「・・・トニー大叔母様、すべて終わりました・・・」彼は墓に向かって言った。「わたしは、あなたとの約束を果たすために帰ってきました・・・これで、満足ですか?」 そう言うと、彼は顔を覆ってすすり泣いた。「・・・わたしは、本当に幸福だと、あなたは今でも思っているんですか・・・?」「・・・シャロン・・・」誰...全文を読む


第103回

第6章

  シャロンとステラは結婚し、リールの別荘に住むことになった。彼は、家のことや経営のことなどを学ばなければならなかった。 家の中で一人きりになりがちな妻のために、シャロンは、ひとりのポーランド人女性を使用人として雇った。その女性は、亡命してきたポーランド人の娘としてフランスに生まれ、大学を卒業した後家庭教師をして生活していた。名前はカロリーナ=ロストフスカといい、ステラより5つ年上であった。カロリー...全文を読む


第104回

第6章

  シャロンは、そういった<伝説>には興味がない方である。 しかし、彼は、妻のまわりをうろついている赤毛の男性の存在が気になりだしていた。 これまで、彼は、かの女のサークルの人間にも興味を持たなかった。いや、あえて興味を持たないようにしていた。ただ一度だけ、彼はその誓いを破りかけた。そのサークルの中に、コンセルヴァトワール時代の友人が入っていたのを見たときである。 その友人は、とんでもない事実を彼に...全文を読む


第105回

第6章

  その晩、ステラの部屋から遅くまでヴァイオリンの音色が聞こえていた。 フレデリック=ダルベールは、ずっとステラを独占していた。彼は、かの女に伴奏させて何曲も何曲も演奏した。客たちのほとんどが帰った後になって、彼はやっと演奏をやめた。 彼をよく知る人たちは、彼に忠告し続けていた。彼の片思いは、何があっても報われることはない。いいかげん目を覚ましなさい・・・と。何があっても、ステラが彼の方を向くことは...全文を読む


第106回

第6章

 「・・・あなたに、なぜそんなことがわかるんです?」シャロンが落ち着いた口調で訊ねた。 フレデリックは、ステラの方を向き直った。「彼は、冷たい男性です。御存知でしょう、彼の昔の恋人のこと・・・?」 ステラははっとした。「・・・いいえ・・・」「この人は、自分の子どもを身ごもっていた女性を捨てたんです」フレデリックが言った。「その女性は、今、行方不明だそうです。きっと、絶望して・・・」 ステラは思わず叫...全文を読む


第107回

第6章

  ステラ=ド=ルージュヴィルが最初の子どもを出産したのは、1875年3月5日のことであった。 かの女は、自分が妊娠していることがわかると、パリの屋敷で出産することを希望した。シャロンは、妻の希望を叶えるために、何人かの使用人と共にパリに移った。もちろん、カロリーナ=ロストフスカも同行していた。 子どもは女の子であった。 ステラは幸福であった。 かの女は、子どもを見つめながら思った。 自分の子どもを...全文を読む


第108回

第6章

  その晩、ステラと小さな子どもがいる離れから火の手が上がった。 ド=ルージュヴィル家のパリの屋敷は、庭をはさんでカタカナのコの字型をしていた。庭から見て左側にステラたちの寝室が、右側にシャロンの寝室があった。シャロンはたまたまカーテンを開け、目の前の建物の異常に気づいたのである。 シャロンが表に飛び出してきたあとで、左側の建物からも何人かの人たちが出てきた。「・・・ステラは・・・?」シャロンは、建...全文を読む


第109回

第6章

  その日、フレデリック=ダルベールはパリのあるコンサート=ホールの舞台の上にいた。彼の伴奏をしていたのは妹のソランジュ=ド=ヴェルモンであった。 演奏会が終了した後で、フレデリックは楽屋で友人と会話していた。「・・・ところで、ド=ルージュヴィル公爵夫人が母親になったことを知っているかい?」友人が訊ねた。 フレデリックは首を横に振った。あの日以来、彼はかの女に会ったことはない。「女の子だったんだって...全文を読む


第110回

第6章

  気がついたステラが子どもの名前を叫んだとき、フレデリックはとっさに屋敷の中に戻っていった。ステラのために、子どもを助けようと考えたのである。 子どもがどこにいるかわからなかったが、子どもの泣き声が続いていた。彼は、泣き声だけを頼りに、中に進んでいった。 煙の中で、彼は一人の女性とぶつかった。「・・・リック、どうしてこんなところに?」ソランジュ=ド=ヴェルモンは、兄を見てびっくりして叫んだ。「きみ...全文を読む


第111回

第6章

  シャロンは、火の中に飛び込んでいった後ろ姿に見覚えがあるような気がしていた。 彼は、記憶をたどり、ある考えに至った。 あの男じゃないか? でも、どうして・・・? シャロンは、頭の中が混乱しかけてきたので、ゆっくりと考えをまとめようと思った。 あの赤毛の男---名前は、確かフレデリック=ダルベールといった---リールで、ステラに言い寄っていた男だ。ヴァイオリニストだった。 あの日も、彼はステラとアンサン...全文を読む

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