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年代記 ~ブログ小説~ 

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【  2009年08月  】 更新履歴 

  08.01.  【 第6章 】  第112回   さわりを読む▼
  08.03.  【 第6章 】  第113回   さわりを読む▼
  08.04.  【 第6章 】  第114回   さわりを読む▼
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  08.07.  【 第6章 】  第117回   さわりを読む▼
  08.08.  【 第7章 】  第118回   さわりを読む▼
  08.10.  【 第7章 】  第119回   さわりを読む▼
  08.11.  【 第7章 】  第120回   さわりを読む▼
  08.12.  【 第7章 】  第121回   さわりを読む▼
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  08.19.  【 第7章 】  第127回   さわりを読む▼
  08.20.  【 第7章 】  第128回   さわりを読む▼
  08.21.  【 第7章 】  第129回   さわりを読む▼
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  08.24.  【 第7章 】  第131回   さわりを読む▼
  08.25.  【 第7章 】  第132回   さわりを読む▼
  08.26.  【 第7章 】  第133回   さわりを読む▼
  08.27.  【 第7章 】  第134回   さわりを読む▼
  08.28.  【 第7章 】  第135回   さわりを読む▼
  08.29.  【 第7章 】  第136回   さわりを読む▼
  08.31.  【 第7章 】  第137回   さわりを読む▼


第112回

第6章

  シャロンは混乱し、いったん考えるのをやめた。 彼は、ステラを信じていた。かの女は、結婚前からずっと自分だけを見つめてきた。ただの一度だって自分を裏切ったことはない、そう信じていた。 でも、本当にそうだろうか・・・? 彼は初めてそう思った。 かの女には、ただの一つも隠し事がない、そんなことがありうるだろうか? もし自分がかの女の立場なら、フレデリックと連絡を取るとしたらどういう方法を採るだろうか・...全文を読む


第113回

第6章

  翌日、火が完全に消えた後になって、現場検証が行われた。 ステラは情緒不安定になっていて、話を聞ける状態ではなかった。かの女は、うわごとのように『赤ちゃんと離れたばっかりに・・・となりの部屋に置いたばっかりに・・・』を繰り返しながら泣きじゃくっているだけだったのである。かの女は、自分が助け出された状況すらわからない状態であった。 残りの人間は、ステラよりはしっかりしていた。ただし、火事の原因につい...全文を読む


第114回

第6章

  ステラは、ひたすら自分を責め続けていた。どうして自分は子どもと離れたのだろう。どうしてあのとき助けに行かなかったのだろう。どうして自分だけ助かったのだろう。どうして・・・。 人間の体には、こんなに涙がたまっているとは思わなかった・・・かの女は思った。いくら泣いても、涙が止まらなかった。それでも、まだ涙がこぼれた。かの女は、ほかに何も考えられない状態だった。 やがて、かの女は高熱に倒れた。熱が下が...全文を読む


第115回

第6章

  ステラの目から涙がこぼれた。「わたしたちは、同罪だ。わたしたちは、二人とも、子どもを助けるために、火の中に飛び込んでいけなかった」シャロンが言った。 ステラは目を伏せた。シャロンは、かの女の肩が震えているのを見た。以前の彼なら、かの女を抱きしめようとしただろう。しかし、彼はそうしなかった。いや、そうできなかった。「・・・だが、あの男は違った」シャロンが続けた。「フレデリック=ダルベールは、火の手...全文を読む


第116回

第6章

  ステラは驚きのあまりからだが硬直した。彼の仮説があまりにも突拍子もないので、とっさに言葉が出てこなかった。 シャロンは、かの女の表情を誤解した。「・・・図星だったようだね・・・」彼は落胆した口調で言った。彼は、かの女の肩から手を離した。 驚きからさめたステラは、反論しようとした。「否定しなくて結構」シャロンはかの女を制した。「わたしには、きみを責める権利はない。わたしも、きみと結婚する前に恋人が...全文を読む


第117回

第6章

 「・・・決心は、変わらない?」シャロンが訊ねた。「ええ」ステラが答えた。「しかし、わたしの決心も変わらない」シャロンが言った。「きみは、ここにいたら不幸になる。一緒にリールへ行こう」 ステラは首を横に振った。「わたしは、二度と子どもを手放しません」「だが、このままじゃ、きみは死んでしまう」シャロンが言った。 ステラの目から涙がこぼれた。「いっそ、あの子のところに行きたい・・・」 シャロンは、一瞬理...全文を読む


第118回

第7章

  シャロンは、結局、妻と一緒にリールへ戻った。 強制的に<娘の墓>から引き離された後、ステラは夫によそよそしい態度を取るようになった。 そんな中、ステラは二番目の子どもを出産した。今度は、男の子であった。 かの女が息子のために選んだ名前は、ルイ=フィリップ=フランソワ=グザヴィエであった。 シャロンは、その名前を拒否しようと思った。フランソワという名前は、初恋の女性を思い出させるからである。それを...全文を読む


第119回

第7章

  シャロンは、もはや自分が食べているものの味を感じてはいなかった。 息子が朗読している記事によると、フランソワーズは現在作曲家として活躍し始めたということである。かの女は、今二人の子どもと生活している。曲は、かの女の息子が作ったテーマによる弦楽四重奏曲で、その息子もチェリストとして演奏会に参加するのだという。 フィルは、目を輝かせていた。「・・・すごいですね、まだ7歳でチェロを演奏するんですか?」...全文を読む


第120回

第7章

  フランソワーズ=ド=ラヴェルダンと別れた後、シャロンがその消息を聞いたことはただ一度だけである。生まれたばかりの子どもを連れて失踪した・・・それだけであった。シャロンは、その後、かの女の消息を知ろうともしなかった。実のところ、知りたくなかったのである。子どもを道連れに自殺したのだと思いこんでいたからであった。しかし、考えてみれば、彼が知っているフランソワーズという女性は、間違ってもそんなことをす...全文を読む


第121回

第7章

  フィルは、今朝の両親の会話の中に、自分が知らないことがたくさん出てきたことに困惑していた。彼らが、自分に何かを隠していること、隠そうとしていることがあることに気づいていた。彼は、何を質問していいかわからなかった。 ステラにもそれがわかったようだった。「あなたは、優しい子ね、フィル・・・」 フィルはますます困惑した。「・・・あなたは、ほんとうは、パパの3番目の子どもなのよ・・・」ステラは優しい口調...全文を読む


第122回

第7章

  一方、シャロンのほうも、ふいに、フランソワーズ=ド=ラヴェルダンという名前を聞き、混乱していた。行方不明と聞いて以来、死んでしまったのだと思っていた、彼の初恋の女性・・・。 生きていてよかった、と心から思った。その一方で、これまでどんなに苦しい思いをして生き続けてきたのだろう・・・と心が痛んだ。別れて以来、一度もかの女のことを助けてやれなかった。生きていたのなら、かの女のために何かしてやりたかっ...全文を読む


第123回

第7章

  後に<アレックス>と呼ばれたフランソワーズの弦楽四重奏曲の初演を、シャロンはホールの一番後ろの席で聞いた。ステージの上を直視する勇気が彼にはなかった。 あたたかい音楽だった。それは、ちょうど、彼が初めて聞いたかの女のピアノの演奏を思い出させた。二つの曲に共通点があるとすれば、「ホ長調」というその調性だけだったかもしれない。それは、あのときの練習室を思い出させるような優しさを持っていた。彼は、かの...全文を読む


第124回

第7章

 「あなたは、幸せ?」フランソワーズが訊ねた。「わからない」シャロンはとっさにそう答えた。それは、事実だった。彼は、幸せでもあり、不幸でもあった。「・・・相変わらず、不誠実な人ね」フランソワーズが言った。「すなおに、幸せだったとおっしゃい。わたしは、あなたが幸せだったと思っている方がいいわ。だって、わたしも幸せだったもの」 シャロンはかの女を見つめた。かの女は、ちっとも変わっていなかった。 しかし、...全文を読む


第125回

第7章

  シャロンは、かつての恋人に会いに行こうとしたとき、偶然、パリに行く口実が見つかった。 彼の父親が、突然手紙をよこしたのである。 その内容を見て、シャロンはびっくりした。彼は、ステラに相談しなければならない、と思った。 シャロンは、その手紙を持ってステラの部屋を訪ねた。「・・・実は、相談があるんだけど、いいかな・・・?」 ステラは、彼の真剣な口調にうなずき、真面目な顔で彼を見つめた。 彼が話し出し...全文を読む


第126回

第7章

  マドレーヌ=フェランという女の子は、あまりド=ルージュヴィル家の特徴を受け継いでいない子どもだった。ただ、いとこのフィルと並べてみると、どことなく口元が似ていた。きょうだいには見えないが、いとこ同士だと言われれば、なるほど、と思わせるような女の子であった。 フィルもマドレーヌも、二人ともブロンドの髪に青い目をしていた。ただ、ザレスキー一族であるフィルの目の方が澄んだブルーの目であった。同じブルー...全文を読む


第127回

第7章

  馬車がパリの屋敷の門の前に止まった。 最初にシャロンがおり、ステラが降りるのに手を貸した。 続いて降りたフィルは、こわれた建物を見てびっくりした。フィルは、次にマドレーヌが降りるのを手伝った。マドレーヌはフィルの表情に驚いたが、壊れた建物には見覚えがあった。マドレーヌはごく普通に馬車から降りた。 フィルは、前に聞いた話を思い出していた。『・・・パパの二番目の子どもは、女の子だった・・・。でも、か...全文を読む


第128回

第7章

  当時6歳だったフィルは、この短い滞在期間のできごとを忘れることはできなかった。 ステラは、この家の中では、まるで目が見える人のように動いた。かの女がここに住んでいた8年前と何も変わっていなかったから、かの女は昔の記憶通りに動けたのである。 かの女は、一人で火事の現場に行き、いつまでもそこにとどまって泣いていた。 『ごめんなさい、わたしが悪かったのよ・・・あのとき、ちょっとでもあなたのそばを離れな...全文を読む


第129回

第7章

  ステラが最初に体の変調を感じたのは、リールに戻った直後のことであった。 かの女が熱を出して倒れたとき、シャロンは旅の疲れが出たのだと思った。かの女自身もそう思いこんでいたので、そのときには医者も呼ばなかった。 かの女の熱は3日でひいた。ただ、ベッドを離れるまでには一週間を要した。その間、家族は心配してかの女を見守っていた。 やがて、かの女の体は回復した。その年のクリスマス近くのことであった。 翌...全文を読む


第130回

第7章

  フィルは、ずっと家庭教師のロストフスカ嬢について勉強していた。彼はずばぬけて賢い子どもだったが、実際に学校に行く年齢になったときには、すでに小学校課程以上の学習は終了していた。彼の教育問題も、シャロンとステラの課題だった。 シャロンはどんな形であれ、学校へ行かせるべきだと考えていた。 一方フィルは、絶対に母親のそばを離れない決心をしていた。小学校へ行っても、学ぶものは何もない、だから、ここにいた...全文を読む


第131回

第7章

  ステラは、どうして涙が出てくるのかわからなかった。シャロンがこんなに優しい言葉をかけてくれたのは、何年ぶりのことだろう・・・?「・・・フィル、その手を離しなさい。そして、ステラのことは、わたしにまかせなさい・・・」 フィルは、母親の手を離した。かの女がなぜ泣き出したのか、彼にはわからなかった。しかし、手を離さなければならないことだけはわかった。 ステラは、夫が何を言おうとしているのかわかった。子...全文を読む


第132回

第7章

  その後も、ステラは発熱を繰り返した。少しずつ、かの女の体は弱ってきていた。 そして、三年の月日が経過した。 ステラの日常には、大きな変化はなかった。 ただ、<かの女のショパン>だけは成長し続けていた。あの少年は、今や立派な青年になり、そして、また人生の転機を迎えようとしていた。 その日のレッスン曲は、ショパンの作品61であった。<幻想ポロネーズ>という名前で有名な曲である。 かの女は、こころもち...全文を読む


第133回

第7章

  ショパンの作品で、作品61の後は、大きな曲はない。ノクターン、マズルカ、ワルツで、生前出版されたピアノ曲は終了である。 その最後の作品、64-3もまた変イ長調であった。 ステラは、そのワルツを演奏した。 青年の魂はすでに天国の方を向いていた。かの女の演奏には、もはや<悲しみ>はなかった。そこには、あらゆる感情を知り尽くし、もう何事にも動じない人間の姿があったのである。 シャロンは、ステラが自分の...全文を読む


第134回

第7章

  シャロンはうなだれて聞いていた。「わたしは、婚約者を取り換えた。新しい婚約者は、前の婚約者の弟だったの。彼は、わたしにとっては初恋の人だったけど、彼にとってのこの結婚というのは、わたしにとっての前の婚約と同じ意味を持っていたのよ・・・つまり、彼はむりやり結婚させられたのよ。人生ってうまくできていないものね・・・」ステラは苦笑した。「そして・・・後で知ったんだけど・・・彼には好きな人がいたの。そし...全文を読む


第135回

第7章

  埋葬式が終わった後、ステラの新しい墓の前で、ステファンスキーがシャロンに言った。「わたしは、ポーランドに帰ることにしました。ステラさんが・・・かの女のショパンが、国に帰れとわたしに勧めたのです」 シャロンは彼と握手した。「あなたは、ポーランド人です。ショパンはついに国に帰れなかった・・・ステラもそうですけど・・・でも、あなたは、戻らなくてはならないのです」 ステファンスキーはうなずいた。「ありが...全文を読む


第136回

第7章

  フィルは、父親が穏やかにほほえんでいる顔を見つめていた。 彼は、振り返ってフランソワーズ=ド=ラヴェルダンを見た。かの女は、椅子に座ってこちらを見ていたが、何か考え込んでいるように見えた。「マドモワゼル=ド=ラヴェルダン・・・失礼な質問をしてよろしいでしょうか? あなたは、父を・・・愛していらっしゃるのですか、今でも・・・?」フィルはそう訊ねた。 フランソワーズは、初めて愛した男によく似た少年に...全文を読む


第137回

第7章

 「母は、亡くなる数年前から、あることを始めました。それは、ショパンの作品を、作品1から順番に演奏していく、というものでした」フィルが話し出した。「かの女は、だんだん弱っていく体で、その演奏会を続けました。そして、ついに作品64まで終了しました・・・」 フランソワーズははっとした。音楽家であるかの女には、彼が何を言おうとしているのかわかりだしたのである。「亡くなる前に、母は父に尋ねました。『あなたは...全文を読む

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