FC2ブログ

年代記 ~ブログ小説~ 

さわりを読む▼をクリックすると更新された内容の冒頭部分がご覧になれますので
久しぶりのご訪問の方は、こちらで未読・既読のご確認ができます

【  2009年09月  】 更新履歴 

  09.01.  【 第8章 】  第138回   さわりを読む▼
  09.02.  【 第8章 】  第139回   さわりを読む▼
  09.03.  【 第8章 】  第140回   さわりを読む▼
  09.04.  【 第8章 】  第141回   さわりを読む▼
  09.05.  【 第8章 】  第142回   さわりを読む▼
  09.07.  【 第8章 】  第143回   さわりを読む▼
  09.08.  【 第8章 】  第144回   さわりを読む▼
  09.09.  【 第8章 】  第145回   さわりを読む▼
  09.10.  【 第8章 】  第146回   さわりを読む▼
  09.11.  【 第8章 】  第147回   さわりを読む▼
  09.12.  【 第8章 】  第148回   さわりを読む▼
  09.14.  【 第8章 】  第149回   さわりを読む▼
  09.15.  【 第8章 】  第150回   さわりを読む▼
  09.16.  【 第8章 】  第151回   さわりを読む▼
  09.17.  【 第8章 】  第152回   さわりを読む▼
  09.18.  【 第8章 】  第153回   さわりを読む▼
  09.19.  【 第8章 】  第154回   さわりを読む▼
  09.21.  【 第8章 】  第155回   さわりを読む▼
  09.22.  【 第9章 】  第156回   さわりを読む▼
  09.23.  【 第9章 】  第157回   さわりを読む▼
  09.24.  【 第9章 】  第158回   さわりを読む▼
  09.25.  【 第9章 】  第159回   さわりを読む▼
  09.26.  【 第9章 】  第160回   さわりを読む▼
  09.28.  【 第9章 】  第161回   さわりを読む▼
  09.29.  【 第9章 】  第162回   さわりを読む▼
  09.30.  【 第9章 】  第163回   さわりを読む▼


第138回

第8章

  プランス=シャロンの葬式が終わってから3日目に、エマニュエル=サンフルーリィはパリのド=ルージュヴィル邸にクラリスを訪ねてやってきた。 クラリスは、まだそこに滞在していた。かの女は、これからどうするか決めかねていたところであった。 エマニュエルは、訪問の理由をこう説明した。「誰かと話をすると、ちょっとは悲しい気分を忘れるんじゃないかと思ったんです」 クラリスは何も言わなかった。かの女は、あっとい...全文を読む


第139回

第8章

 「オーケストラを?」クラリスが言った。「ええ。それも、普段の生活に密着したオーケストラを」エマニュエルがうなずきながら答えた。「たとえば、市民オーケストラとか、サン=ジェルマン校の学生オーケストラみたいな、身近なものを作りたいと思っています。だから、わたしは、勉強が終わったら、どこかパリから離れたところに行きたいと思っています。・・・この考え、どう思いますか?」 クラリスは真面目な顔で答えた。「難...全文を読む


第140回

第8章

  クラリスは、音楽院で勉強するよりも、作曲家に個人的に作曲法を習おうと考えていた。どちらにしても、今から音楽院に入るのは時期的に無理であった。 かの女は、誰に習うべきか決めかねていたのである。 ヴィルフォール音楽院の恩師エリック=ランディは、自分の師アンリ=ロランに推薦状を書いた。ロランといえば、現在パリ音楽院の主任教授であるだけではなく、現在のフランス音楽の第一人者と言っていい人物である。そんな...全文を読む


第141回

第8章

  ピアノの前にいた男は、びっくりしてクラリスの方を見た。その表情には蔑みが見えた。「・・・作曲科の生徒かい? 古い規則に従っている優等生かな? かわいそうなひとだね・・・」彼の口調には軽蔑が混じっていた。 クラリスは自分の衝動的な言葉を恥じていた。自分がカフェ中の注目を集めているのに気づき、逃げ出したいと思った。しかし、彼の軽蔑的な言葉を無視することはできなかった。かの女は、まっすぐに顔を上げた。...全文を読む


第142回

第8章

  彼はあごひげをなでて、ピアノに向かった。座るなり、5度の連続で曲を始めた。彼の曲には、大胆で新しい何かがあった。神秘的な雰囲気と明るさが曲からにじみ出ていた。「・・・東洋の音階ね・・・?」クラリスが言った。「そうだ。第4音と第7音がない。だから、5度ずつずれても、減5度はできない」 そう言うと、彼は突然弾くのをやめた。「音楽は実験じゃないわ」クラリスが言った。「そのとおり。ぼくがしているのは、実...全文を読む


第143回

第8章

 「・・・こんばんは。いえ、初めまして、かしら?」一人の男がクラリスを呼び止めた。彼のフランス語には、ドイツ語のかすかななまりがあった。 クラリスは振り返った。「・・・こんばんは」「わたしは、ヘルムート=シャインと申します。よかったら、わたしたちのテーブルにいらっしゃい」「ヘルムート=シャイン・・・?」クラリスはちょっと考えた。「・・・もしかして、あなたは、ヴァイオリニストのシャインさんじゃないかし...全文を読む


第144回

第8章

 「バローは流行なんですよ。わけもわからずに、みんなバローのまねをする。バローの前でピアノを弾いて、彼に認めてもらいたがる。・・・でも、あなたはそうじゃなかった」シャインが言った。「あなたのようなひとを、待っていたんです。恐らく、バロー自身もね」ペコーが言った。「彼だって、自分のまねばかりされるのはいやだったろうと思うね。あなただけは、彼に、自分の意見をはっきり言えた」 クラリスは苦笑した。「あれは...全文を読む


第145回

第8章

  次の日、クラリスはシモン家を訪ねた。 ちょうどそのとき、彼の家には若い弟子が一人来ていた。かの女と同じくらいか少し年上に見えるその青年は、自分の書いた作品を師がピアノで弾くのをじっと聞いていた。「・・・マドモワゼル、ヴァイオリンは弾けるかね?」シモンは急に振り返り、クラリスに訊ねた。「・・・ええ、少しなら・・・」クラリスは答えた。 シモンは、自分のヴァイオリンをクラリスに渡した。そして、クラリス...全文を読む


第146回

第8章

 「曲を見るまでもないだろう」シモンが言った。「書きたいものがあれば、書けばいい。それとも、わたしのもとで勉強して、シモン風に作品を塗り替えるつもりかね?」「・・・わかりました、ムッシュー=シモン・・・。わたし、帰ります。でも、その曲だけは見て下さいませんか?」「きみには、未来がある。こんなところで時間を無駄にするんじゃない」シモンが言った。「第一、人の意見を聞こうとするなんて気が弱い。ベルナール=...全文を読む


第147回

第8章

  クラリスは、シモン家を出ると、まっすぐ<名なし>というカフェに向かった。 夕方6時頃であったが、すでに男性が4人いた。4人とも40歳近い男たちだった。 クラリスは、カウンター席について、コーヒーを頼んだ。「本当にコーヒーでかまわないんですか?」クラリスはマスターに尋ねた。「ここで酒を出すのは、わしが20歳以上と見た人だけだ。あなたは、まだ若い」マスターがコーヒーを入れながら言った。「わたしは19...全文を読む


第148回

第8章

 「で、バローをどう思ったの?」マスターが訊ねた。「同じ作曲家なら、彼が気に入ったんじゃない?」 クラリスはちょっと考えた。「そうね・・・。彼はすばらしい作曲家だと思います。でも、わたしは、彼と同じ道を歩くことはないと思います。彼もそんなことを言いました」「彼って、バローが、そんなことを?」オーギュスト=デュランが驚いて言った。 クラリスは黙ってうなずいた。「へえ、バローがねえ・・・」オーギュスト=...全文を読む


第149回

第8章

  シャインは、まわりの人たちにクラリスを紹介した。「この子は、クラリス=ド=ヴェルモンといって、作曲家だ。かの女とは、昨日<レザンフェール>で会った。あそこの若いやつらといったら、どいつもこいつもバローの仲間だろう? ところが、かの女は違った。酔いがまわってピアノを弾き出したバローに向かって、『それでは、5度とオクターヴの連続だわ』って言ったんだ」 拍手が起こった。「やった!」誰かが叫んだ。「バロ...全文を読む


第150回

第8章

  オーギュスト=デュランとヘルムート=シャインが行ってしまうと、クラリスは、ただ一人その場に似合わないように見える女性に近づいた。さっき、マリー=クレール=ド=フランスと紹介された女性だった。「ここに来てかまいませんか?」クラリスが訊ねた。「ええ、どうぞ」マリー=クレールが答えた。落ち着いた雰囲気の持ち主で、育ちがいいのは明らかだった。かの女のような人がなぜこのようなにぎやかなところにいるのか、ク...全文を読む


第151回

第8章

 「どうしたの、暗い顔をして?」さっき、シャルル=マリ=デュランと紹介された男性が、マリー=クレールにグラスを差し出しながら言った。「真面目な話? それとも・・・?」 クラリスは、シャルル=マリ=デュランに訊ねた。「さっき、聞きそびれたんだけど、あなたは、オーギュスト=デュランのお兄さん?」 彼はにやっとした。「隠しておこうと思っていたんだけどね、実は、彼のほうが兄なんです」 マリー=クレールが驚い...全文を読む


第152回

第8章

  マリー=クレール=ド=フランスに会いたくて、クラリスはそれから毎晩のように<名なし>に出かけたが、かの女はあの晩以来カフェに現われなくなってしまっていた。クラリスは不審に思い、オーギュスト=デュランに理由を尋ねると、マリー=クレールは体が弱いのだという答えが返ってきた。「体が弱いの? それじゃ、あの青白い顔は、病気のためなの?」「そうだ。でも、あの顔の青さが、かの女の魅力の一つでもあるけどね」オ...全文を読む


第153回

第8章

 「彼らって? どういうこと?」オーギュストが訊ねた。「わたしが、ヘルムートとサンディに初めて会ったとき、『アンリ=ロランにあてた推薦状をもらってパリに勉強に来たの』と言ったら、即座に『やめなさい』と止めたの」クラリスが言った。 オーギュストはにやりとしてうなずいた。「なるほど。やめて正解だな。あなたには、ロランは必要ない」「そうかしら?」クラリスはまた首をかしげた。「そうさ。その点では、わたしも彼...全文を読む


第154回

第8章

  クラリスは返答に困ってますます赤くなった。「最近、ティケットを手に入れたんでね」彼はポケットから券を二枚出した。「例のコンサートさ。<クラリス=ド=ヴェルモンの夕べ>って言うんだね、これ?」 クラリスはびっくりして券を見た。「知らないわ、こんなコンサート・・・」クラリスは絶句した。 オーギュストもびっくりしたような顔をした。「じゃ、一枚あげるよ。誰と一緒に行くか決めていなかったんでね。ぜひ、ご一...全文を読む


第155回

第8章

 「かもしれない。でも、わたしは酔っていない」シャインが繰り返した。「目がすわっているよ」デュランが言った。 クラリスは、シャインを無視して外に出た。 シャインは、ふらふらした足取りで後を追ってきた。 店を出たところで、彼が訊ねた。「クラリス、今日は何月何日だ?」かなり不明瞭な口調であった。「まあ、11月18日よ」クラリスが答えた。かの女は、彼が酔っていることを確信した。そして、何とか彼を追い返そう...全文を読む


第156回

第9章

  ステージに現われたロベール=フランショームは、青ざめていた。 彼は、客席のクラリスの姿にすぐに気がついた。彼を不安がらせたのは、その2列前にエマニュエル=サンフルーリィの姿があったことだった。しかし、どうやら、二人はお互いの存在に気づいていないようであった。 ロベールは、クラリスが作曲した<エチュード>と名がつく曲の中から36曲選んで演奏した。クラリスの<エチュード>は、この時点で全部で144曲...全文を読む


第157回

第9章

  同じ頃、クラリスはホールの前でオーギュスト=デュランと会った。「あら、これからなの?」クラリスはオーギュストに訊ねた。「帰るの? じゃ、ちょっとつきあってくれないかな?」オーギュストはにやりとして言った。 二人は、その近くの<ペレグリーノ>というカフェに入った。「まだ終わっていないと思うんだけど、どうして帰ってきたの・・・?」オーギュストが訊ねた。「わからないわ。ただ、帰りたくなっただけ」クラリ...全文を読む


第158回

第9章

  その数日後、クラリスは、マリー=クレールと<ボリス>で再会した。 オーギュストがそこを選んだ理由は、そのカフェが落ち着いた雰囲気であることと、そこにはヘルムート=シャインが寄りつかないことを知っているからであった。そのカフェは、彼の家からもコンセルヴァトワールからも遠かった。芸術家もあまり顔を出さないので、知っている人に会う可能性もあまりなかった。 久しぶりに会うマリー=クレールは、かなり痩せて...全文を読む


第159回

第9章

  マリー=クレールはうなだれて、ゆっくり首を振った。「彼は、本当に、あなたのことを・・・」クラリスは言いかけた。 マリー=クレールは遮った。「あなた、まさか、オーギュストのことを・・・?」 クラリスは首を横に振った。「彼は、誰にでも優しい人だわ・・・」マリー=クレールがつぶやいた。「彼がいてくれたおかげで、わたしの人生も、そう悪くなかったかも知れない。でも、わたしが好きだったのは・・・」 クラリス...全文を読む


第160回

第9章

 「クラリス、わたしはきみを愛している。それを言うために、ずっと探していたんだ」シャインが言った。 クラリスは、後ずさりし続けていた。 さすがのシャインも、かの女の様子が変だということに気づき始めた。「わたしは、一度だって、あなたにそんなふうに考えさせるようなことをした覚えはないわ。それに、わたしには、プランセスを裏切るようなまねはできないわ」クラリスは、完全におびえていた。「だから、なぜ、ここにマ...全文を読む


第161回

第9章

  一晩中捜し回って家に帰ったクラリスを待っていたのは、二人の刑事であった。  クラリスは、彼らに会釈し、家に入ろうとした。 「・・・あなたが、マドモワゼル=ド=ヴェルモン・・・ですね?」年上に見える方の刑事が声をかけた。  クラリスはうなずいた。一晩中寝ていないぼうっとした頭で、自分が何か悪いことでもしただろうか・・・と一瞬考えた。 「ええ、クラリス=ド=ヴェルモンです」 「マリー=クレール=ド=フラ...全文を読む


第162回

第9章

  クラリスは、泣きながらオーギュストに訴えた。「・・・昨日は、マリー=クレールの30歳の誕生日だったのよ」「知ってるよ、クラリス」オーギュストが返事した。「わたしは、かの女に、とんでもない誕生日のプレゼントをあげてしまったのよ。親友を裏切るというプレゼントをね」「あなたが悪いんじゃないよ」「いいえ、わたしが悪かったのよ。わたしがもっと早くヘルムートに会ってさえいれば、彼は、昨日<ボリス>に来ること...全文を読む


第163回

第9章

  その事件から1月末までに起こった出来事を、クラリスはよく覚えていなかった。少なくても、後に、順序立てて説明することはできなかった。 事件から3日後、クラリスとオーギュスト=デュランの二人は、マリー=クレールのアパートを訪ねた。 かの女の遺体がアパートに移されたと聞いたからである。 そのとき、彼らのためにドアを開けた人物を見て、クラリスは驚いた。「・・・ムッシュー=ヴェルネ?・・・どうして・・・?...全文を読む

 更新履歴カレンダー