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年代記 ~ブログ小説~ 

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【  2009年10月  】 更新履歴 

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  10.29.  【 第11章 】  第188回   さわりを読む▼
  10.30.  【 第11章 】  第189回   さわりを読む▼
  10.31.  【 第11章 】  第190回   さわりを読む▼


第164回

第9章

 「裏切るなんて言葉を、そんなに軽々しく口にしてはいけないよ」ヴェルネがクラリスに言った。「でも、事実なんです」クラリスは言った。「じゃ、あなたは、マリー=クレールが・・・あの男を・・・」ヴェルネは、意識的にヘルムート=シャインの名を口にしなかったことにクラリスは気づいた。「・・・あの男を愛しているということを知っていて、その上であの男を誘惑したのかね?」 クラリスは答えた。「前半は正しいけど、後半...全文を読む


第165回

第9章

  マリー=クレール=ド=フランスの遺族が、事件の当事者たち皆に優しかったわけではなかった。 かの女の弟も、妹夫婦もヘルムート=シャインにだけは冷たかった。 アパートを訪ねたヘルムートに対し、ヴェルネ夫妻は中に入れようとはしなかった。 ヴェルネ氏は、ヘルムートにマリー=クレールが残した最後の日記帳を手渡し、追い返したのである。 ところで、ヘルムートに日記帳を渡したのには、理由があった。 マリー=クレ...全文を読む


第166回

第9章

  ヘルムートはその皮肉を無視した。「そして、プランセスは、人生で最悪の誕生日を迎えたわけだ」オーギュストが言った。「日記帳を見せて。あの日、本当は何があったんだ?」 ヘルムートは日記帳を手渡した。オーギュストは、てきとうなページを開いた。そして、彼は最後のページを探してページを繰った。「わたしは、何も知らなかった。だけど、かの女は全部知っていた。かの女は、わたしがクラリスを愛していることも、クラリ...全文を読む


第167回

第9章

  墓地から出たところで、クラリスはロベール=フランショームと再会した。「・・・さびしいお葬式だったね?」ロベールが訊ねた。 クラリスはうなずいた。かの女の目に、再び涙がたまってきた。 ロベールはかの女に近づき、ハンカチを手渡した。「・・・ありがとう、ロビー」クラリスはハンカチを受け取った。そして、無理にほほえもうとした。「泣いた方がいいんじゃない、クラリス?」ロベールが優しく言った。「わたしの人生...全文を読む


第168回

第9章

  クラリスは、その話を聞くのは初めてだったが、納得できた。 マリー=クレールは、自分が31まで生きられないことを知っていた。そんなかの女は、シューベルトの生涯に思いをはせたに違いなかった。シューベルトは、その短い生涯に、多くの美しいメロディーを残した。かの女は、最後に自分も美しい歌を歌いたかったに違いない。そして、自分の最後のコンサートのために、一番美しいメロディーを選んだのだろう・・・。「・・・...全文を読む


第169回

第9章

  しかし、当事者3人は、数度のカーテンコールを苦々しく思っていた。彼ら3人とも、コンサートは失敗だと思っていた。3人は、無言で握手を交わし、それぞれ自分の楽屋に引っ込んでしまったのである。 それぞれ別々に引っ込んだのが、結果的には3人を救ったのかも知れない。少なくても、ヘルムートは、クラリスとロベールが一緒にいるのを見てしまっていたら、再演には決して同意しなかったであろう。 クラリスは、誰もいない...全文を読む


第170回

第9章

 「・・・ワンちゃんが、目を覚ましたよ」知らない男性の声がした。 クラリスは、あたりを見回した。どこか、ホテルの一室のようであった。枕元に若い男性がいたが、見覚えはなかった。そこへ現われた女性を見て、クラリスは驚いた。「・・・エリー・・・どうしてここに・・・?」 その女性は、エリザベート=ド=バーンであった。かの女は、作曲家メランベルジェの最後の弟子の一人で、クラリスの、というよりはフランソワーズ=...全文を読む


第171回

第9章

 「・・・ところで、これから、どうするつもりなの、クラリス?」エリザベートは真面目な顔で訊ねた。 クラリスも真面目な顔になった。「どうするか、決めていないわ。わかっていることは、一つだけ。もう、パリにはいたくない」「そうね、パリから離れた方がいいと思うわ」エリザベートも言った。「わたしたちも、そろそろ家に戻ろうかと思っているの。ベルナールに誘われて、メランベルジェ校の設立に協力したけど、学校もそろそ...全文を読む


第172回

第10章

  マリー=クレール=ド=フランスの自殺の後パリを離れていたクラリスは、ちょうど一年後、かの女の命日にパリに帰ってきた。 かの女の墓参りを終えた後、クラリスは<地獄のオルフェ>にエドゥワール=ロジェを訪ねた。 彼は、もう昔の彼ではなかった。穏やかだったその目は、どこを見ているか不明だったし、舌がもうまわりきらず、酒を浴びるように飲んでいた。 クラリスは、驚いて彼のグラスを取り上げた。しかし、彼には、...全文を読む


第173回

第10章

 「しかし、悪いのは彼の方だ。彼だって、それは知ってるよ」バローが言った。「その話は、もう、やめて!」「ヘルムート=シャインは、有名な女嫌いだ。その彼を、あそこまで追いつめたのはあなただよ、クラリス」「わたしが、追いつめたんですって!」「彼には、あのとき、ああするしかなかった、ってことさ。彼は、プランセスではなくて、あなたにひかれてしまった。彼には、もう、あなたのことしか頭になかった。プランセスが彼...全文を読む


第174回

第10章

  クラリスは、のっぽのバローの後ろ姿が消えていくのを黙って見送った。「・・・クラリスじゃないの?」 クラリスは振り返った。そこにロベール=フランショームが立っていた。「パリにいたんだね? 元気だった?」「ええ。あなたは?」クラリスは、自分が元気そうに見えないことに彼は気づいていないのかしら、と考えた。目の前のロベールも元気そうには見えなかった。「まあまあだよ」ロベールは答えた。「荷物を持つよ。どこ...全文を読む


第175回

第10章

 「わたしは、正直言って、恐ろしいわ」クラリスが言った。「わたしも恐いよ。だけど、逃げたくない」「あなたは、きっと逃げ出すわ。わたしにはわかるの」「逃げるものか」ロベールは言い返した。 クラリスは悲しそうにほほえんだ。「なぜ、そんなに自信を持って言えるの? あなたが逃げ出したら、傷つくのはわたしなのよ」 ロベールはほほえんだ。「逃げないよ」彼は再度言った。「じゃ、わたしを助けてくれるのね?」 ロベー...全文を読む


第176回

第10章

 「クラリス、わたしが嫌いなら、はっきり言って欲しい。ほかに好きな人がいるのなら、はっきり言って欲しい。きみの心は、もう、わたしの方を向いていないんじゃない?」 クラリスは首を激しく横に振り続けた。体の力が抜けていき、かの女はじゅうたんの上に座り込んだ。「もうわたしを愛していないんだね?」ロベールが言った。「・・・いいえ、あなたが好きなの。あなたしか愛していない。本当よ・・・」 ロベールはひざまずき...全文を読む


第177回

第10章

  クラリスは、フォンテーヌブローに戻ってきた。 エリザベート=ド=バーンは、クラリスが心に大きな傷を負って帰ってきたことに気がついた。 しかし、かの女は黙って見守ることを選んだ。 ちょうど1年前も、クラリスはあんな顔をしていた。あのとき、かの女は親友を亡くしたといっていた。今度は、誰を失ったのだ? かの女の夫のアドルフ=ド=バーンは、クラリスに話をさせることを選んだ。話したほうが楽になる場合もある...全文を読む


第178回

第10章

  クラリスは、パリに着くと、エドゥワール=ロジェの墓参りをした。 昔、彼はかの女の夢の中に現われて、『自分に正直に生きるんだ』と言った。 彼の人生は、他人が見ると自由な生き方をしていたように見えたかも知れない。彼は、医者の息子に生まれ、恵まれた少年時代を過ごし、家族の薦めで医者になるための勉強をするが、結局彼が選んだのは作曲家としての仕事であった。同じ大学出身で医者になった同級生の妹と結婚し、作曲...全文を読む


第179回

第10章

  クラリスの足は、<名なし>に向かっていた。 エドゥワール=ロジェが死ぬまで飲んでいたものならば、こんな思いを忘れさせるような力があるのではないだろうか? そんな魔法のようなものがあるのなら、自分も飲んでみたい。 クラリスは、カウンター席に座った。そして、マスターに言った。「ねえ、何でもいいから、お酒が欲しいの。今日はいいでしょ? わたしはもう大人なんだから」 マスターは驚いてクラリスを見た。彼は...全文を読む


第180回

第10章

 「わたしは、今、とても悲しい。わたしは、あなたがそんなことをしているのを見るのがつらい。そんなあなたを見たくないんだ。お願いだ、クラリス、もうやめてくれないか?」 クラリスは、エマニュエルの方を見た。彼の悲しそうな顔がぼんやり見えた。「お願いだ」エマニュエルはもう一度言った。「・・・どうして、そんなに悲しそうに見るの? 悲しいのは、わたしのほうだわ」「あなたは、確かに悲しいだろうね。でも、あなたを...全文を読む


第181回

第10章

 「・・・起こしてしまったかしら?」エマニュエルは優しく訊ねた。「・・・ここは?・・・どうして、ここにあなたがいるの?」クラリスが訊ねた。「ここが、わたしの家だからですよ」エマニュエルはほほえんだ。「どうしてここにいるのか、思い出せない?」「・・・わからないわ・・・」クラリスが答えた。「きのう、わたしに会ったことも、覚えていない?」 クラリスは首を振った。「でも、もう起きた方がいいですよ。もう、2時...全文を読む


第182回

第10章

  エマニュエルはほほえんだ。「それに、知らないところで目を覚ますのも、ね」 クラリスは赤くなった。「ここは、まったく知らないところではないわ」「そうかも知れませんがね」エマニュエルは穏やかに言った。「でも、あの状況だったら、あなたは誰の後にでもついて行ってしまったでしょうね。そうしたら、あなたは、本当に全然知らないところで目を覚ましていたでしょうね」「・・・わたし、そんなに酔っていた・・・?」「え...全文を読む


第183回

第10章

  エマニュエルは、後に<回想録>の中で『あの日、ベッドの中で見た夕焼けは、とても美しかった。こんなに美しい夕焼けを見たのは、これが初めてであった。それは、もうすぐ春が訪れるという約束の印に思われた・・・』と振り返っている。 エマニュエルは、クラリスを抱いたまま、窓の外に広がる夕焼け空を見つめていた。 ほかの季節に比べて、冬の夕暮れには風情がない。彼はそう思っていた。冬は、寒く厳しく暗い。だからこそ...全文を読む


第184回

第10章

  エマニュエルが目を覚ましたとき、クラリスはもうそこにはいなかった。<おはよう、エマニュエル。よく眠れましたか? わたしは、家に帰ることにしました。あなたは、ここで勉強を続けて下さい。そして、ちゃんと卒業して下さい。それまで、あなたをずっと待っています。机の上にあった懐中時計を、婚約指輪のかわりに頂いていきます。不便でしょうから、かわりに、わたしの時計を置いていきます。クラリスより> その時計を見...全文を読む


第185回

第10章

  復活祭の休みに、ロベール=フランショームはパリに戻ってきた。 彼は、クラリスの姿を求めてパリを歩き回った。そして、かの女が<名なし>というカフェによく出かけるという情報を入手したのである。 ロベールが<名なし>を訪れたとき、カフェには人がまばらであった。彼は、誰かに話しかけようと思ったとき、オーギュスト=デュランが彼に気がついて近づいた。「・・・この辺では見かけない顔ですね」そうは言ったが、オー...全文を読む


第186回

第10章

  ロベールもサンディも口をはさまずに聞いていた。「そして、かの女たちは、ほかの場所で会うことにした。その場所は、わたしが紹介した。ヘルムートが一番行きそうもないカフェ・・・という条件にぴったりの店だった。ところが、ヘルムートはそこを探し当てた。恋する男性のエネルギー、って、本当にすごいよね。ヘルムートは、かの女にプロポーズした。ところが、彼がかの女に<名演説>をしているとき、当の友人が現われた。ク...全文を読む


第187回

第10章

  サンディはびっくりしたようにオーギュストを見た。「・・・でも、いい気味だ。彼も、少しは苦しむべきなんだ。せめて、クラリスの半分程度はね」オーギュストがつぶやいた。「・・・どういう意味?」「気づかなかったの? 彼は、ロベール=フランショームだった」 サンディは驚いた。その話が聞こえるところにいた全員が、オーギュストに驚いた顔を見せた。 オーギュストは、黙ったまま彼が飛び出していったドアを見つめてい...全文を読む


第188回

第11章

  その日、クラリスは、フォンテーヌブローの自分のアパルトマンで、エマニュエル=サンフルーリィが来るのを待っていた。かの女は、彼に手紙を書いた。どうしても会って話したいことがある、と。彼は、復活祭の週の土曜日を指定した。かの女は、とっておきの洋服に着替えた。駅まで迎えに行きたかったが、彼は家で待っていて欲しいと書いてきた。かの女は、時計とにらめっこしていた。そういえば、彼は何時に来るか書かなかった・...全文を読む


第189回

第11章

  ロベールは、その言葉を初めて聞いた人のような表情を浮かべた。「待てなかった、って、どういうこと?」「・・・わたし、あなたとは結婚できないの・・・」クラリスがほとんど消え入るような声で言った。 ロベールは、もう一度訊ねた。「ねえ、待てなかった、って、どういうこと?」「・・・ごめんなさい・・・わたし、結婚するの、6月に・・・」クラリスは彼から目をそらした。「・・・だから、あなたには、『はい』って言え...全文を読む


第190回

第11章

  エマニュエル=サンフルーリィは、ロベール=フランショームが、クラリスのアパルトマンから出てくるのに気がついた。 ロベールの様子は変だった。あの調子では、エマニュエルが隣に立っても気づかないに違いない・・・そんなふうに見えた。 エマニュエルは、相手がロベール=フランショームだということが気になった。 クラリスは、ロベールを呼んだのだろうか? それとも、ロベールがかの女を訪ねてきたのか? 後者に間違...全文を読む

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