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年代記 ~ブログ小説~ 

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【  2009年12月  】 更新履歴 

  12.01.  【 第12章 】  第216回   さわりを読む▼
  12.02.  【 第12章 】  第217回   さわりを読む▼
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  12.15.  【 第12章 】  第228回   さわりを読む▼
  12.16.  【 第13章 】  第229回   さわりを読む▼
  12.17.  【 第13章 】  第230回   さわりを読む▼
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  12.19.  【 第13章 】  第232回   さわりを読む▼
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  12.26.  【 第13章 】  第238回   さわりを読む▼
  12.28.  【 第13章 】  第239回   さわりを読む▼
  12.29.  【 第13章 】  第240回   さわりを読む▼
  12.30.  【 第13章 】  第241回   さわりを読む▼
  12.31.  【 第13章 】  第242回   さわりを読む▼


第216回

第12章

  アレクサンドリーヌは、年が明けると勉強を再開した。子どものことを忘れるには、それしかなかったのである。 年明けからまもなくのある日、ジュヌヴィエーヴ=ド=ヴェルクルーズは、妹の家に駆け込んできた。 夫婦喧嘩がその理由であった。 当事者のもう一方、アルトゥール=ド=ヴェルクルーズは、喧嘩の後、シャンベリーへ行ってしまった。 喧嘩の原因は、簡単に言えばアルトゥールの浮気である。 ただ、これが簡単でな...全文を読む


第217回

第12章

  列車はゆっくりと山沿いを走っていた。 4人は、しばらく黙って窓の外を見ているふりをしていた。 やがて、アルトゥールが口を開いた。「わたしたちは、口を開くと喧嘩しそうになってしまう」アルトゥールは、もう彼のトレードマークでもあるあの皮肉なにやにや笑いをしながら言った。「今は、子どもの名前一つ決められそうもない。それで、きみたちに考えてもらいたいと思ってね・・・」 ルイ=フィリップとアレクサンドリー...全文を読む


第218回

第12章

  エマニュエル=サンフルーリィ---正式にはエマニュエル=ド=サン=メラン---は、結婚式の翌月、ようやくパリでのすべての勉強を終えた。 彼は、セザール=メランベルジェ校を卒業すると、北フランスのミュラーユリュードという町にあるサント=ヴェロニック校という私立学校のオーケストラのトレーナーとなった。彼は、こうして、指揮者としてのキャリアの最初の一歩を踏み出したのである。彼は、正式な席以外では、生涯このエ...全文を読む


第219回

第12章

  子どもを出産してから、しばらくの間クラリスの体調は元に戻らなかった。 そのため、ステファーヌには乳母がつけられることになった。 ベッドから起きあがることができるようになってからも、クラリスはあまり子どもと近づきたがらなかった。かの女は、自分の子どもが好きになれないのはどうしてなのだろうか、と思った。弟のルイ=フィリップからは、かの女の母親は、それはそれは娘をかわいがっていたものだ・・・という話を...全文を読む


第220回

第12章

  1897年7月25日、ロベール=フランショームは、クラリスのイ長調のピアノソナタをパリで初演した。このとき以来、このソナタには<光(クレール)>という愛称がついた。このコンサートの批評を書いたエルネスト=マンソンが、この演奏を評して書いた言葉が、その愛称の由来であるといわれている。 いわく、<物事には、二つの面がある。たとえば光と陰。しかし、このピアノソナタには光しかない>・・・このフレーズが一人...全文を読む


第221回

第12章

  ロベールが訪ねてきた日、エマニュエルはたまたまオーケストラの仕事でシェルブールに出かけていた。クラリスは、息子のステファーヌと一緒に庭で遊んでいた。「こんにちは」ロベールは楽しそうな二人に声をかけた。 クラリスは振り返った。そして、ロベールに気がつくと、棒立ちになった。 ロベールもそんなかの女の様子を見て、言葉を失った。 そのとき、ステファーヌがゆりかごの中で何か声を出した。 二人には、それが『...全文を読む


第222回

第12章

  エマニュエルは、子どもをゆりかごに戻し、ロベールの方を見た。「・・・そう・・・よかったですね。同じ学校の同僚として、歓迎しますよ、ロビン」「すべて、あなたたちのおかげです。だから、どうしてもお礼が言いたかったんです」ロベールが言った。 エマニュエルもクラリスも首をひねった。「・・・それは、こういうわけなんです。<クレール>を演奏したとき、そこにたまたまド=ラグランジュ校長が居合わせたんですよ」「...全文を読む


第223回

第12章

  このころ、クラリスは、息子のためにピアノの練習曲を書こうとしていた。 ステファーヌは、2歳になるとピアノの前に座らされた。その教師として選ばれたのがロベール=フランショームだったのである。 クラリスは、自分の息子に、一番最初は、ひたすら「C」音だけを弾かせた。その伴奏になる音楽、つまりロベールが弾くための楽譜をクラリスは作曲したのである。伴奏になるメロディーは、ハ長調だったり、ト長調だったり、ヘ...全文を読む


第224回

第12章

  ロベール=フランショームがクラリスたちの生活に入り込んでくるのとほぼ平行して、エマニュエルのオーケストラへの傾倒が進んでいた。いつのまにか、エマニュエルは、土曜日に出かけて日曜日に帰る・・・というようになっていた。クラリスは知らないふりをしていたが、エマニュエルがシェルブールのかの女と仲良くなっていることは確かなように思われた。 しかし、それでも、クラリスは自分が嫉妬していないことに驚いていた。...全文を読む


第225回

第12章

  ロベール=フランショームは、クラリスが泣きながら「悲しき歌」を演奏をしているのを聞いた。 彼は、これまでに、何度かこの曲を演奏してきた。しかし、今聞くこの曲は、彼が知っている曲ではなかった。聞きながら、自分が恥ずかしくてたまらなくなってきた。自分には、こんな深い悲しみを表現できない。 彼の脳裏をよぎったのは、1896年の復活祭の休暇のことであった。 彼は、かの女にプロポーズするためにフォンテーヌ...全文を読む


第226回

第12章

  クラリスは黙ったまま涙ぐんでいた。「わたしは、ずいぶん昔からあなたの曲を知っていた。あなたの<習作(エチュード)>と名付けられた作品集を初めて手に取ったときから、ずっと・・・」ロベールは英語で話し続けていた。「わたしは、あなたに会う前から、あなたを知っていたんです。あなたの歩んできた歴史と、あなたの精神を、わたしはずっと知っていたんです。わたしは、あなたの魂とずっと歩んできたのです・・・」 クラリ...全文を読む


第227回

第12章

 「ロビー、そこをどいてちょうだい」クラリスが言った。「これは、わたしとマーニュの問題よ」 ロベールは、しぶしぶ一歩下がった。「マーニュ、あなたは、わたしとロビーが何の約束をしたと思うの?」クラリスはエマニュエルの目をのぞき込むようにしながら訊ねた。「人間の想像力の限度は、その人の体験した範囲内だと言うわ。自分にやましいことがなければ、人の行為にやましさを見いださないものだわ」 エマニュエルは言い返...全文を読む


第228回

第12章

  クラリスの顔が真っ青になった。 叫び声の中に、『ステファーヌさま!』という声を聞き取ったのである。 エマニュエルも窓の方に目を移すと同時に、窓の方に走っていた。「だんなさま、大変です、ぼっちゃまが・・・」乳母のベルナデットが泣きながら走ってきた。「・・・ステフィーがどうかしたの?」クラリスも窓際に寄った。「・・・すみません、おくさま。ちょっと目を離した間に・・・」ベルナデットはしゃくりあげた。「...全文を読む


第229回

第13章

  エマニュエルは、息子の小さな棺の前を動かなかった。 クラリスは、その彼を黙ったまま眺めていた。 やがて、彼は顔を上げた。「・・・クラリス、きみは、悲しくないの?」 クラリスは答えなかった。悲しくないわけがない。いや、悲しいのかどうかもわからない。「・・・そうだよね、きみは、ステフィーを愛してはいなかったからね」 クラリスはむなしかった。心の中が空になったような気がした。何も言いたくなかった。『愛...全文を読む


第230回

第13章

  エマニュエルは、クラリスが本気だとは思っていなかった。彼は、かの女が浮気しているという確証をもっていなかった。こうしてかの女を怒らせ、浮気を自分から白状させるか、浮気していないと誓わせるか・・・そんなところだろうと思っていた。さらにいえば、かの女が浮気していないと信じていたかったのである。ロベール=フランショームは、イギリス育ちの騎士である。そういうロマンチシズムの持ち主は、愛する女性をあがめは...全文を読む


第231回

第13章

  アレクサンドリーヌ=ド=ルージュヴィルは、大きなトランクをもって汽車から降りてくるクラリスに駆け寄った。 5年ぶりの再会だった。二人は泣きながら抱き合った。「・・・あら、あなたも・・・?」アレクサンドリーヌはにっこりした。「あなたも、って?」クラリスは驚いた。「わたし、6月に出産予定なの。あなたも、そうじゃない?」 クラリスはびっくりしてうなずいた。「たぶん。まだ、お医者さんに行っていないけど・...全文を読む


第232回

第13章

  ルイ=フィリップは、クラリスを診察し、出産予定日は翌年の6月上旬だと言った。アレクサンドリーヌの予定日が6月下旬なので、クラリスの方が先に出産することになりそうだと言ったのである。 それを聞いて途方に暮れたようなクラリスの表情を見て、ルイ=フィリップは、姉を問いつめた。 ルイ=フィリップは、事情を知るとアレクサンドリーヌ以上にショックを受けた。「・・・わかりました。ぼくは、あなたを見捨てません。...全文を読む


第233回

第13章

  そのとき、部屋に小さな子どもが入ってきた。「・・・ねえ、ピアノを弾いてもいい・・・?」赤毛の女の子は、ルイ=フィリップに向かってかわいらしい声で訊ねた。「お客さまの前ですよ、オーギュスティーヌ」ルイ=フィリップは子どもに注意した。 女の子は、クラリスの方を見て、スカートの裾をちょっと持ち上げて、優雅にお辞儀をした。「オーギュスティーヌ=ド=マルティーヌです」 女の子は、そのお辞儀をするにはまだ幼...全文を読む


第234回

第13章

  1898年の復活祭が終わって少したったある日、ローザンヌのアレクサンドリーヌのところへ、いとこのエミリー=ド=マルティーヌが訪ねてきた。かの女は、赤ん坊を抱いていた。「かわいい子どもね・・・」アレクサンドリーヌが言った。「・・・でも、なぜ赤毛なの・・・?」 アレクサンドリーヌは、そう言ってエミリーの目をのぞき込んだ。そして、はっとしてルイ=フィリップの方へ目をやった。彼も同じことを考えていた。「...全文を読む


第235回

第13章

  エミリーは、さらに驚くべきことを言い出した。「実は、夫には、この子が女の子だと言っているの・・・」 二人は顔を見合わせた。「男の子だとわかると、今度こそ、ド=マルティーヌ家の跡取だとして取り上げられてしまうでしょ。それだけはいやだったのよ」エミリーは説明した。「子どもの名前はオーギュストです。でも、オーギュスティーヌだということにしています」「・・・どうせばれる嘘をつくんですか、エミリー?」「離...全文を読む


第236回

第13章

  オーギュスティーヌは、クラリスを気に入ってしまっていた。確かに、家中の人はこの赤毛の子どもに夢中になっていた。それなりにみなに愛されていたはずであった。しかし、オーギュスティーヌは孤独だった。かの女---便宜的にかの女と呼ぶ---の本当の気持ちは、誰にも理解できなかったのである。ところが、このクラリス伯母だけはどこか違った。初めてクラリスの前でピアノを弾いたときから、クラリスには自分のことがわかる・・...全文を読む


第237回

第13章

  クラリスは、自分がまさかフランショーム一族の女の子から、こんなに元気をもらえるとは思っても見なかったのである。ここに来たときの自分は、絶望しきっていた。まもなく子どもが生まれるというのに、子どもの父親はここにいない。しかも、彼は、自分の子どもが生まれると言うことさえ信じていない。子どもが生まれた後、自分は、どうやって子どもと一緒に生活していけばいいのだ・・・? かの女は、正直途方に暮れていたので...全文を読む


第238回

第13章

  クラリスの子どもが生まれたのは、その翌朝のことであった。女の子であった。 子どもが枕元に置かれてまもなく、オーギュスティーヌが部屋に入ってきた。オーギュスティーヌは、今まで泣いていたとわかる表情でクラリスを見つめた。「・・・ミュー、あなたの妹よ・・・」クラリスが言った。クラリスは、オーギュスティーヌと二人きりのとき、よくこの愛称でかの女を呼んだ。「かわいい・・・?」 オーギュスティーヌは涙で潤ん...全文を読む


第239回

第13章

  オーギュスティーヌの真剣な顔を見ているうちに、クラリスは青くなっていた。「・・・どういうことなの、ミュー・・・?」クラリスは、やっと訊ねた。 オーギュスティーヌの表情もくもった。「・・・ごめんなさい、クラリスおばさま・・・わたし、本当は男の子なの・・・でも・・・」エマニュエルそっくりのすみれ色の目が再び涙で潤んできた。「・・・でも、本当のことを言ってはいけないって・・・誰にもいうなって・・・」 ...全文を読む


第240回

第13章

  アレクサンドリーヌの出産予定日が近づくにつれて、屋敷の警戒態勢が厳しくなった。 今度の子どもは、何があってもこの家から出さない。ルイ=フィリップはそう決心していた。最初の子どもの二の舞はごめんだ。 クラリスとオーギュスティーヌは、この間、ふたりきりで---いや、赤ん坊と三人で---部屋で過ごした。念のため、かの女たちにもガードがついた。誘拐犯が、クラリスの子どもを間違って連れ出したりしないように、とい...全文を読む


第241回

第13章

  クラリスは部屋に入り、先客たちと挨拶した。そこには、すでにアルトゥール=ド=ヴェルクルーズと妻のジュヌヴィエーヴ、そして二人の息子たちが来ていた。上の子どものロジェは10歳になっていた。父親から赤毛とブルーの目を受け継いではいたが、どちらかというとその表情は母親のエミリーに似ていた。下の子どものコルネリウスは、驚くほど父親とそっくりであった。まだ5歳だったが、アルトゥールが子どもになってそこにい...全文を読む


第242回

第13章

 「『フランショーム一族には、ザレスキー一族の女性に一目惚れしてしまって、その目の魔力のために一生独身を通した人が何人もいるんです』・・・そのとき、彼はこう言いました」クラリスが続けた。 そして、今ロベール=フランショームがしていることが、まさにこれである。クラリスは、心が痛んだ。 アルトゥールにもそれがわかっていた。しかし、彼は兄に同情していなかった。兄がその状態に満足していることを知っていたから...全文を読む

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