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年代記 ~ブログ小説~ 

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【  2010年02月  】 更新履歴 

  02.01.  【 第15章 】  第267回   さわりを読む▼
  02.02.  【 第15章 】  第268回   さわりを読む▼
  02.03.  【 第15章 】  第269回   さわりを読む▼
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  02.06.  【 第15章 】  第272回   さわりを読む▼
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  02.18.  【 第15章 】  第282回   さわりを読む▼
  02.19.  【 第15章 】  第283回   さわりを読む▼
  02.20.  【 第15章 】  第284回   さわりを読む▼
  02.22.  【 第16章 】  第285回   さわりを読む▼
  02.23.  【 第16章 】  第286回   さわりを読む▼
  02.24.  【 第16章 】  第287回   さわりを読む▼
  02.25.  【 第16章 】  第288回   さわりを読む▼
  02.26.  【 第16章 】  第289回   さわりを読む▼
  02.27.  【 第16章 】  第290回   さわりを読む▼


第267回

第15章

  1904年6月28日午前9時。 ロベール=フランショームとコルネリウス=ド=ヴェルクルーズを乗せた馬車が、コリーヌ=コンソナンス---ドクトゥールに言わせると<恐い家>---に向かって出発した。 座席の下に、シャルロットはじっと隠れていた。かの女は、見つかるのを恐れて小さな体をさらに縮めて隠れていた。そのかの女の上のシートに、まさかかの女がいるとは夢にも思わない二人が座った。かの女は、思わず声を上げそ...全文を読む


第268回

第15章

  シャルロットは、弾くのをやめ、振り返った。かの女は、さっきの大きな人形が、ブルーの目を開いてこちらを見ているのを見て驚いた。「まあ、あなたは、人形じゃなかったのね!」 クラリスは、シャルロットの表情を見て、くすりと笑った。「・・・あら、わたし、そんなにぐっすり眠っていたかしら?」 シャルロットは、ちょっと首をかしげ、うなずいた。そのかわいらしい動作を見ているうちに、クラリスはどういうわけか心が温...全文を読む


第269回

第15章

 「あなたは知っているわね。わたしは、コンチェルトを書けなくなったら、生きてはいないだろう、ってことを?」 ロベールは、机から両手を放した。「脅かすつもり?」「フランソワーズ=ド=ラヴェルダンは、『作曲することは生きている証でもある』と言ったわ。わたしもそうよ。わたしは、これまで29年生きてきた。わたしは、うれしいときも悲しいときも、ピアノコンチェルトを書いたわ。そして、今99番目のコンチェルトを書...全文を読む


第270回

第15章

  シャルロットは、庭でコルネリウスに会った。コルネリウスは、黄色い大きな花の前に立っていた。「・・・ドンニィ・・・」シャルロットは、そっと声をかけた。 コルネリウスは振り返った。しかし、シャルロットを見ても驚いた様子はなかった。「来てたの、ロッティ? クラリスおばさまには、会ってきた?」「ええ」「で、わかったの?」「何が?」「ドクトゥールが<恐い家>と言ってたわけがさ」「いいえ」シャルロットは肩を...全文を読む


第271回

第15章

 「わたしは、ドクトゥール=ド=ラ=ブリュショルリーを大変尊敬している。彼は、とてもすばらしい男性だ。そして、彼は誰よりもあなたのことを知っていて、あなたのために考えてくれる人だ。だから、彼は、いずれはあなたにすべてを打ち明けるんじゃないかと思う。そのうち、その時が来たらね・・・」エマニュエルが優しく言った。「彼が黙っているのは、まだ、その時になっていないからじゃないのかな。だから、わたしも言わない...全文を読む


第272回

第15章

  その朝、ドクトゥール=ド=ラ=ブリュショルリーは、ロベール=フランショームが出て行くのを窓から見送っていた。そんなことはこれまでにないことだったので、その部屋で計算をしていたアンブロワーズ=ダルベールは不思議に思った。「ドクトゥール、計算が終わりました」アンブロワーズが声をかけても、ドクトゥールは窓際から動かなかった。「・・・ドンニィが乗ったようだけど。どこへ行くのかな?」「コリーヌ=コンソナン...全文を読む


第273回

第15章

  その日の昼過ぎ、ロベールたちの馬車を出迎えたマクシミリアン=シュミットは、馬車からシャルロットが降りるのに手を貸しながら、勘がいいドクトゥールがわざわざ『二人きりだったかね?』と訊ねたことを思い出していた。ドクトゥールは、これまで、ロベールの行動を根掘り葉掘り訊ねたことはなかったのだ。 ドクトゥールは、シュミットが決して自分を騙したりするような男ではないことをよく知っていた。 それでも彼は、馬車...全文を読む


第274回

第15章

 「いいえ。誰も説明してくれませんでした。マーニュおじさまは、そのときがくれば、ペール=トニィがきっと説明してくれるって言っていたわ」「そのとおりだ。今は、まだ説明することはできない」ドクトゥールがうなずいた。「わたしは、あなたに、人を愛することができるひとになってほしいと思っているんだよ。人を憎んだりするようなひとではなく、ね。わかってくれるね?」「でも、ペール=トニィ・・・」 シャルロットは、彼...全文を読む


第275回

第15章

  その1週間後、クラリスは、できあがったばかりのピアノコンチェルトを書き直そうと決心した。 かの女は、ピアノの前に座った。ピアノの音に驚いてやってきたエマニュエルに、クラリスは自分の決意を告げた。そして、ミュラーユリュードに行き、シャルロットを連れてきて欲しいと頼んだのである。 エマニュエルは、ドクトゥールの一家がミュラーユリュードに越してきて以来、一度もその家を訪ねたことはなかった。その彼の突然...全文を読む


第276回

第15章

  ドクトゥールは素早く頭を切り換えた。かりにシャルロットにピアノが弾けるとして、彼は、クラリスのためにかの女にいったい何ができると思っているのだ? いや、何をさせようとしているのだ?「一つ質問があります」ドクトゥールはエマニュエルの目を見た。「かの女は---ロッティは、その99番目のコンチェルトとどんな関係があったのですか?」「クラリスは・・・例の事故で・・・」エマニュエルは言葉を一瞬濁した。「・・...全文を読む


第277回

第15章

  しばらくの沈黙の後、ドクトゥールは言った。「わたしは大人です。自分のしていることには責任が持てるつもりです。命を持って償うことだってできます。クラリスの<病気>には、わたしにも責任があります。わたしの命なら、クラリスが欲しいと言えば、いつだって差し上げます。クラリスにはその権利があります。でも、ロッティは別です。あの子がクラリスのために死ぬ理由なんかありません。あの子には、自分で自分を守ることさ...全文を読む


第278回

第15章

  シャルロットは、それから毎日コリーヌ=コンソナンスに通い続けた。 クラリスは、書きながら、弾かせながら、自分の曲についてシャルロットに説明した。かの女がそれをわかっているかどうかお構いなしに、クラリスは話し続けた。 シャルロットが覚えていた書き直す前の99番のコンチェルトは、メランベルジェ流の<統一テーマ>を使った三楽章からできている音楽だった。 メランベルジェの<統一テーマ>というのは、曲の中...全文を読む


第279回

第15章

  さらに、クラリスは、自分の思い出を少しずつシャルロットに聞かせた。自分の子どもたちのこと、恩師であるセザール=メランベルジェのこと、育ての親であるフランソワーズ=ド=ラヴェルダンとポール=ド=ヴェルモンのこと・・・。「・・・人間が30歳までにできることは、自分という人間をよく見つめることだけよ、シュリー」クラリスは、シャルロットをこの愛称で呼び始めていた。「昔、わたしにそう言ったひとがいたわ。そ...全文を読む


第280回

第15章

  シャルロットは首をかしげた。「・・・じゃ、死んだら、どうなるの?」 クラリスは目を閉じた。 メランベルジェのしわだらけの顔がぼんやりと浮かび上がった。かの女は、ふと、昔見た夢を思い出した。メランベルジェに、死について、レクィエムについて訊ねる夢だった。『クラリス、この世には死というものがあるが、それは、体が滅びてしまうことだ。でも、体がなくなっても、魂は天国で生き続けるものなのだ。少なくても、生...全文を読む


第281回

第15章

  それからも、シャルロットのコリーヌ=コンソナンス行きは続いた。 まわりにいる人たちも、二人が変わったことに気づいた。何がどう違うか説明するのは難しいが、確かに何かが変わったのだ。二人の間には、名付けようもない大きな愛が育っていた。 やがて、コンチェルトはほぼ完成し、初演の日時が決められた。 1905年2月5日日曜日。場所はパリのシャン=ゼリゼー劇場。25年前の同じ日、同じ会場で、当時4歳だったク...全文を読む


第282回

第15章

 「・・・で、かの女は・・・クラリスの命は・・・あの・・・?」エマニュエルは言いにくそうに口ごもった。 ドクトゥール=テニスンは、首を振った。「わたしには、わかりません。あとは、かの女しだいです・・・。わたしにわかることは、かの女の意識がまもなく戻るだろうということだけです」 彼はそう言うと、診察に使った道具を鞄に詰め始めた。そうしながら、シャルロットに言った。「ユーフラジーさま、一緒にミュラーユリ...全文を読む


第283回

第15章

  1905年2月5日、コンサートの当日、エマニュエルはクラリスを車椅子に乗せて会場に連れて行った。彼は、クラリスに付き添うため、コンチェルトの指揮を辞退した。彼がクラリスの同意を得て選んだ指揮者は、ヴァンセスラス=ロマノフスキー=ブーランジェ---ヴァーク=ブーランジェという芸名で知られるポーランド出身の若い指揮者---であった。 プログラムは二部構成で、第一部は、シャルロットのソロで、クラリスのピアノ...全文を読む


第284回

第15章

  パリに行ったのがきっかけなのか、コンチェルトの初演を終えたことがきっかけなのか、クラリスはコンサート直後から、食事を取ることさえ難しくなった。 3月4日、クラリスは枕元のエマニュエルにこう言った。「マーニュ、わたしね、あなたに謝らなくちゃならないと思っているの」「謝るって、何を?」「ステフィーが死んだとき、あなたと喧嘩したでしょう?」「・・・ああ、そのこと・・・?」「あなたは、わたしが彼を愛して...全文を読む


第285回

第16章

  葬式の前の晩、エマニュエル=サンフルーリィは、クラリスの友人たちを家に呼んだ。 彼は、一人きりになりたくないと思っていた。誰かが一緒だと、少しはこの悲しみを忘れられるのではないか・・・そう思っていた。しかし、その場の誰もが、自分と同じように悲しんでいるのを見て、彼は自分の考えが幻想に過ぎなかったことに気づいた。 オーギュスティーヌ=ド=マルティーヌは、クラリスの足下にひざまずいたまま身動きひとつ...全文を読む


第286回

第16章

  クラリス=ド=ヴェルモンの葬式には、かの女を知る人々が大勢詰めかけたので、オート=サン=ミシェルの教会は、中に人が入りきれないくらいだった。町の人たちにとっては、それは不思議なことの始まりだった。 クラリスが葬られたとき、エマニュエル=サンフルーリィとロベール=フランショームの二人だけは、墓から離れたところに立っていた。 やがて、エマニュエルがその場を去ると、一人の老婦人がロベールに近づいた。か...全文を読む


第287回

第16章

  その直後から、エマニュエルはコリーヌ=コンソナンスの自分の屋敷の庭だったところに、大きな建物を建て始めた。町の人たちは、そこに音楽をするためのホールができると聞いて驚いた。 学生時代から、彼は自分のオーケストラを持つのが夢だった。クラリスが死んでしまった今、その悲しみから逃れる手段は、自分の夢を追うことしかないと、彼にはわかっていた。きっとかの女も、それを喜んでくれるはずだと思った。 エマニュエ...全文を読む


第288回

第16章

  コンサートが終了した晩、クラリスの友人たちは、コンサートの打ち上げパーティのかわりに、かの女の部屋に集まって静かに語り合うことを選んだ。何と言っても、この晩は、クラリスの最初の命日だったのである。 ロベール=フランショームは、全員に飲み物が行き渡った時点で、いきなりこう言いだした。「みなさん御存知の通り、クラリスは、生涯に膨大な作品を残しました。そして、そのほとんどを自分の手で破棄しました。わた...全文を読む


第289回

第16章

  1905年の夏、ドクトゥール=ド=ラ=ブリュショルリーは、3つ目の博士号である物理学の博士号を取った。ミュラーユリュードではそれが話題になったが、なんせ狭い町のことで、そのニュースが広まって一週間経たないうちに、サント=ヴェロニック校のアドルフ=ド=ラグランジュ校長は、自分の学校の物理の教師として招待したいと言ってきた。サント=ヴェロニック校というのは、かなりユニークな学校だと聞いていたし、アン...全文を読む


第290回

第16章

  当時、研究所には、ドクトゥールを含めて7人の研究員がいた。 まず、彼の義理の兄のアルトゥール=ド=ヴェルクルーズ。アルトゥールは生物学の博士号を持っていて、専門分野は遺伝学だった。 年の順で行けば最年長になるのがクリストファー=テニスンで、彼は医者だった。彼はイギリス人だったが、フランスの大学で学び、内科医の資格を持っていた。 アレクサンドル=シャルパンティエ。彼も医者だった。外科医の資格を持っ...全文を読む

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