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年代記 ~ブログ小説~ 

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【  2010年04月  】 更新履歴 

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第318回

第17章

 「お呼びですか?」ルネ=フェリーが訊ねた。「ああ。実はね、車を運転してもらいたいんだ。ブーローニュ=シュル=メールまで。・・・こんなに長距離では、きみ以外に頼める人がいなくてね・・・」「お任せ下さい」フェリーは自信たっぷりに返事した。「用事は、それだけなんだけど・・・」ドクトゥールが言った。「ただ、気になることがあってね。これなんだ」 ドクトゥールは机の中から、一通の手紙を取りだした。そして、それ...全文を読む


第319回

第17章

  ドクトゥール=ド=ラ=ブリュショルリーは、もし自分が死んで、遺体が見つからないときは、クラリスと同じ墓地に埋葬して欲しい、と走り書きのメモを残していた。そのときは、<ルイ=アントワーヌ=ド=ラ=ブリュショルリー>として葬式をして欲しい、と。 その葬儀は、とても寂しいものだった。遺体がない親子の葬式。ドクトゥールの生前の意思通り、ごくわずかの人たちだけが集まり、形だけの葬儀と埋葬が行われたのである...全文を読む


第320回

第17章

  ユーフラジーの墓の前で泣き崩れていた少年を見つめていたロベールに、エマニュエルが声をかけた。「ロビン、ちょっと話があるんだけど・・・いいかな?」 ロベールはうなずいた。「ちょうどよかった。わたしにも話があった」 二人は、コルネリウスから話が聞こえない位置まで下がった。どちらにしても、今のコルネリウスには、ほかのことが耳に入る状態だとは思えなかったが、彼らは二人きりで話がしたかったのである。 そこ...全文を読む


第321回

第18章

  それは、1902年のクリスマスが終わった後の、ある寒い日の午後のことだった。 ワルシャワでは、その日も雪が降り続いていた。クラコフスキェ=プシェドミェーシチェ大通りでは馬車がたくさん走っていたが、馬車に乗ろうとして立っている人たちも多かった。 若い女性が、乗合馬車の乗り場に向かって歩いていた。かの女は、背が高くも低くもなく、太ってもやせてもいないというように、特に目だったところもない平凡な女性だ...全文を読む


第322回

第18章

  そのとき、6頭だての大きな馬車がやってきて、彼らの前で止まった。御者が降りてきて、男に向かって深々と頭を下げた。それから、馬車のドアを開けた。 馬車の中から、一人の男性が出てきた。目の前の紳士より2~3歳年上くらいだろうか。彼は、男の前にやってきて、すまなそうに頭を下げた。「5分の遅刻でございます。お許し下さい、チャルトルィスキー公爵さま」「きみは、時間通りに来たんだよ、ヴォイチェホフスキー」男...全文を読む


第323回

第18章

  雪は、まだ降り続いていた。満員の馬車は、もう何台もナターリアの前を過ぎていった。そうこうしているうちに、かの女はブルマイスターの家に着いていた。ただ、着いた頃には具合が悪くなっていて、ブルマイスターはかの女を見たとたん、今日の練習は無理だと判断し、馬車を呼んでかの女を帰宅させたのである。 かの女は帰宅するなり、ソファに倒れ込んだ。かの女の世話をしているただ一人の使用人---もともとはかの女の乳母だ...全文を読む


第324回

第18章

  ナターリアが知っているウワディスワフ=スタニスワフスキーという人物は、幸せな人だとは言えなかった。彼らが結婚して以来、幸せだったのはほんのわずかな期間だけだった。 ウワディスワフ=スタニスワフスキーは、1872年にル=アーヴルで生まれた。父親も優れたヴァイオリニストだったのだが、彼が生まれるひと月前に死んでしまった。彼には生まれたときから父親が存在しなかったのである。母親のアンヌもヴァイオリニス...全文を読む


第325回

第18章

  彼らがワルシャワに行ったのは、その直後だった。 ウワディスワフは、どうしても音楽から離れたくなかったので、写譜の仕事を始めた。ナターリアは伴奏ピアニストとして、かつてのウワディスワフの友人たちとくんでステージに立つことを選んだ。ウワディスワフの友人たち、中でも彼のベルギー時代からの友人のヴァレリアン=ブルマイスターは、献身的とも言えるくらい二人のために働いた。二人は、ブルマイスターがナターリアを...全文を読む


第326回

第18章

  ブルマイスターとのコンサートのリハーサルの日、ナターリアはまだ黒い服を着ていた。ブルマイスターもそうであった。二人は、深刻な気分でリハーサルを終えた。 ナターリアは、彼と別れた後、いつものように帰りの馬車を待った。その日も雪が降っていた。寒い日で、馬車はなかなか止まってくれなかった。かの女は、ふとチャルトルィスキー公爵にあった日のことを思い出した。ウワディスワフが死んで以来、ナターリアは自宅に閉...全文を読む


第327回

第18章

  ナターリアは、それから毎日3本のバラのつぼみを受け取った。3本とも赤いバラで、ブルーのカードが決まって添えられていた。そのカードには、いつも同じ言葉が書かれていた。<バラのようなあなたへ。アントーニ> 花束が届くのはなぜか、いつもかの女が留守のときだった。かの女はピアノを教えていて、いつも決まった時間に家を出た。花束は、いつもかの女が出かけた後すぐに届くのだそうである。60歳くらいの男性が持って...全文を読む


第328回

第18章

  あたりは暗くなってきていた。雪も降ってきた。ナターリアは決心し、うなずいた。 チャルトルィスキー公爵の表情が明るくなった。 彼は、自分が乗ってきた馬車を帰らせ、小さな馬車を呼んだ。彼は、自分の立場を離れ、ただの男性として振る舞うことに決めたらしかった。彼は、ただの一人もボディーガードさえつけずに、かの女をレストランにエスコートした。食事が終わる頃には、二人は昔からの友人のようになっていた。ナター...全文を読む


第329回

第18章

  彼は、話題を変えようとしてあたりを見た。そのとき、彼の目に一枚の絵がとまった。「おや、ローストですね。本物じゃないですか!」「ええ、彼が描いたものです。<イエズス=キリストの受難>シリーズの一つです」「すばらしい絵ですね」「絵はお好きですか?」「自分では描きませんけどね」彼は、またあの優しい表情に戻った。「ローストの絵は好きですよ。彼は、人の表情を描くのがうまいですよね。このイエズスとペトロの表...全文を読む


第330回

第18章

  その日、ヴァレリアン=ブルマイスターは、約束の時間より一時間も早く家を出て、ワジェンキ公園でナターリアを待っていた。 彼は、ずっとかの女を愛していた。ウワディスワフがいなくなった今、彼は誰にも遠慮なくかの女に会うことができる。彼は、初めて紹介されたときからかの女が好きだったが、子どもの頃からの友人を裏切ることはできなかったので、決して自分の気持ちをかの女に打ち明けることだけはするまいと誓っていた...全文を読む


第331回

第18章

 「どうして、はっきりそう言わなかったの?」「本人の前で、本人を中傷しろって言うの?」 ブルマイスターは反論しようとした。「じゃ、本人のいないところでなら、どんなに中傷してもいい、って言うの?」「いけないわ」マリアは即座に答えた。「だけど、本人の耳には入らないわ。本人はつらい思いをしなくてもいいわ」「多かれ少なかれ、本人は傷ついているさ」「じゃ、あなたは、噂を知っていたの?」 彼は首を横に振った。「...全文を読む


第332回

第18章

  そのカフェは、<ディアメント(=ダイアモンド)>という通称で知られていた。できたばかりの新しい店で、ヴァイオリニストを引退したというふれこみの若い男がマスターだった。コンセルヴァトワールの近くなので、いつのまにか芸術家のたまり場になっていた。そのカフェの名前は、本当はフランス語で<ディアマン(=ダイアモンド)>といった。作曲家のヤン=クルピンスキーが幼なじみのマスターのために選んだものだった。こ...全文を読む


第333回

第18章

 「あなたって、暗いところがないひとだね」「そんな! 人生は、明るい面だけでは存在し得ないものだわ」マリアは笑った。「母は、いつも言っているわ。外国人、それも女性が他の土地に来た場合、何かできるものがないと食べていけないものだわ、って」「あなたは、自分が外国人だと思っているの?」「わたしは、少なくても純粋なポーランド人じゃないわ。父方はフランス系、母方はドイツ系の血筋ですもの」「で、あなたは、作曲で...全文を読む


第334回

第18章

 「スタニスワフスキーが?」その声を聞いた若い男が立ちあがった。 まわりの人たちも彼らのテーブルの方を見た。カウンターの向こうで、カップか何かが割れる音がした。 その男は、マリアに詰め寄った。「マルィシャ、ほんとかね、ウワデク=スタニスワフスキーが死んだっていうのは?」「残念ですが、本当です。わたしは、夫人の口から、直接聞きました」ブルマイスターが答えた。「いつ? 彼は、いつ亡くなったの?」「去年の...全文を読む


第335回

第18章

  その後も、チャルトルィスキー公爵は、花束を届け続けていた。彼は、今度は、かの女が家にいるときを狙って届けることにしたのだが、かの女は、二度と彼を家の中に入れようとはしなくなった。かの女は、自分の気持ちに気づいてからは、彼が恐かった。彼がそれを察しているらしいことが、かの女には余計つらかった。 3月半ばのある日曜日、朝からずっと降り続く雪の中、チャルトルィスキー公爵は辛抱強く立ち続けていた。彼は、...全文を読む


第336回

第18章

  公爵はかの女に大きな花束を渡した。 ナターリアはそれを受け取った。やはり赤いバラだった。「どうして、いつもバラなんですか?」ナターリアが訊ねた。「あなたに一番似合うと思って」彼は優しい口調で言った。 ヴォイチェホフスキーは、厳しい表情のままこう言った。「御存知ですか、赤いバラの花言葉を?」 「・・・ヴォイチェホフスキー!」彼は、執事をたしなめた。 ヴォイチェホフスキーは、にやりとして続けた。「赤...全文を読む


第337回

第18章

 「女性は、そのひとだけじゃないわ」「そう。わたしは、やっとそれに気づいたのです。わたしは、58になって、やっと本当にひとを愛したのです。ちょうど今日みたいな雪の日に、そのひとはふいにわたしの前に現われました。この年になって、もう誰も愛することはないだろう、もう家庭なんか作れないだろうと思っていたわたしの前に・・・。初めて会ったとき、次に会うときのことを考え、再び会ったとき、また話がしたくなった。そ...全文を読む


第338回

第18章

  ナターリアがチャルトルィスキー公爵との婚約のことを最初に打ち明けた相手は、ヴァレリアン=ブルマイスターだった。夕食の約束を破って以来、なんとなく遠ざかっていた二人だったが、かの女は彼に謝りに出かけ、彼もその謝罪を受け入れた。 彼は、ナターリアの話を聞き、そのスケールの大きさに驚いた。有名な貴族で、政治家でもあるアントーニ=アダム=チャルトルィスキーと婚約するとは思い切ったものだ、と彼は思った。婚...全文を読む


第339回

第18章

  チャルトルィスキー公爵と結婚して幸せな生活を送ってきたナターリアにも気がかりなことがあった。彼との間に子どもがいないことと、フランスにいるはずの娘のことである。 彼の方もブローニャを引き取りたいと願っていた。彼は子ども好きだった。ナターリアはスタニスワフスカ夫人にしょっちゅう手紙を書いた。公爵も、ときどきかの女に黙って手紙を出していた。しかし、フランスからは何も言ってこなかった。 ところで、ナタ...全文を読む


第340回

第19章

  イェジイ=ヴォイチェホフスキーは、63年間アントーニ=アダム=チャルトルィスキー公爵の近くにいた。彼の母親は、公爵の乳母をしていた。彼は公爵より3日前に生まれていた。彼は幼い頃ユーレックと呼ばれていた。そのころは、彼は3日だけ年下の公爵を、ほとんど弟のように扱っていた。使用人の子どもたちのリーダーだった彼を、公爵は---当時は、公爵ではなく<アンテックぼっちゃま>だったが---尊敬さえしていたほどだっ...全文を読む


第341回

第19章

  ヴォイチェホフスキーは、そのブルーの目を見ていた。かの女の目は公爵夫人と同じ目だった。彼は、この女の子が自分が探している子どもだと確信した。しかし、どうやってそれを確かめようか?「・・・どうしたの、わたし、何か変なことを言ったかしら?」 彼は答えなかった。ただ、黙ってかの女を見つめていた。いや、正確に言えば見ていなかった。彼は考えていたのである。 彼はふと、女の子が自分を見ていることに気づいた。...全文を読む


第342回

第19章

  ワルシャワの屋敷では、チャルトルィスキー公爵が待ちかねていらいらしていた。ようやくヴォイチェホフスキーがシャルロットを連れてきたという知らせを聞いて、彼は窓際に寄った。人影が見えなかったので、彼は庭の噴水を見ていた。 ノックの音がした。「ヴォイチェホフスキーです。シャルロットお嬢さまをお連れいたしました」「・・・女の子一人だけ入るように言いなさい」彼は振り返りもせずに言った。 シャルロットは、中...全文を読む


第343回

第19章

  シャルロットは、悲しいような、怒っているような、哀れんでいるような、いろいろな表情の混じった表情でナターリアを見た。不思議なことに、その表情は、ナターリアに、死んだ母親のリベルテ=ザレスカ=スクロヴァチェフスカを思い出させた。そして、死んだいとこであり親友でもあったクラリス=ド=ヴェルモンを・・・。 ナターリアにはわかった、子どもが自分をどう思っているのかが。祖母のアンヌ=スタニスワフスカ夫人は...全文を読む

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