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年代記 ~ブログ小説~ 

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【  2010年05月  】 更新履歴 

  05.01.  【 第19章 】  第344回   さわりを読む▼
  05.03.  【 第19章 】  第345回   さわりを読む▼
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  05.29.  【 第20章 】  第368回   さわりを読む▼
  05.31.  【 第20章 】  第369回   さわりを読む▼


第344回

第19章

  まもなく、ドアをたたく音がした。「お入り」公爵はドイツ語で言った。 黒に近い茶色のふさふさとした髪をした背の高い男が入ってきて、大きく背を曲げてお辞儀をした。「勉強の途中、すまないね、ヘル=エッフェンベルガー」「いいえ、とんでもありません。何かご用ですか?」 公爵は、シャルロットを家庭教師に引き合わせた。挨拶が終わると、公爵はエッフェンベルガーにこう言った。「今後は、この子の勉強も任せたい。立派...全文を読む


第345回

第19章

  ドアのところにヴォイチェホフスキーが立っていた。彼はナターリアたちに一礼した。「ブローニャを無事に連れてきてくれて、ありがとう」ナターリアが言った。「お礼なんて・・・。わたくしは、自分の役目を果たしただけです」ヴォイチェホフスキーは嬉しそうに返事した。 シャルロットは、白髪のヴォイチェホフスキーの気むずかしそうな顔が嬉しそうにほころんでいるのを見て、自分もほほえんでいた。「ところで、ヴィエジェイ...全文を読む


第346回

第19章

  ヴァレリアン=ブルマイスター=ヴィエジェイスキーは、妻のマリアと一緒にナターリアを訪ねた。 コンチェルトがいきなり始まったとき、彼らはちょうどドアのところにいた。二人は、ヴァイオリンの音があまりにも透明な感じがすることに驚いた。ヴィエジェイスキーは、子どもの頃のウワディスワフがこんな弾き方をしていたことを思い出した。 彼が初めてウワディスワフと会ったとき、ウワディスワフはまだ7歳だった。ウワディ...全文を読む


第347回

第19章

  シャルロットが到着した翌日、公爵は結婚後初めて、甥のアレクサンドル=ポニァトフスキーとその息子のアウグストを屋敷に招いた。 実は、公爵は結婚以来、一度も彼らと会っていなかった。アレクサンドルが伯父の結婚にあまり賛成ではなく、ナターリアに対して悪感情を持っていることを知っていたからだった。しかし、今、新しい家族を迎え、公爵は自分の家族を甥に紹介しておくべきだと考えたのだった。 シャルロットとフェリ...全文を読む


第348回

第19章

  10月半ばに、シャルロットはついに疲れすぎで倒れてしまった。 呼ばれてやってきたアンジェイ=ビラノフという内科医は、難しい顔をして公爵に言った。「これは、ただの疲れ過ぎじゃありませんよ。こんなに疲れた人なんて、見たことがありません。熱は当分下がらないでしょうし、しばらく動けないでしょう。意識が戻っても、何もさせてはいけません。よろしいですね?」 アンジェイ=ビラノフは、聖ステファン病院というとこ...全文を読む


第349回

第19章

  ヴィエジェイスキーは、シャルロットをヴァイオリニストとしてデビューさせるつもりでいた。病気が治ると、彼はかの女の特訓を再開した。チャルトルィスキー公爵は、シャルロットがステージに立ちたいと思っていることを知ると、ヴァイオリンを続けることも特訓にも反対はしなかった。「ただ、絶対に無理をさせないでくれ。この子は、体が弱いらしいんでね」公爵が付けた条件はそれだけだった。 ヴィエジェイスキーやほかの音楽...全文を読む


第350回

第19章

  ヴォイチェホフスキーは薄く目を開けた。彼は、公爵にユーレックと呼ばれたのは久しぶりだと思った。「アンテックさま・・・」彼はほほえみを浮かべた。「・・・奥さまは?」「こんなときに、人の心配かい?」公爵は彼を抱き上げて、無事だった馬車まで運んだ。そして、ポニァトフスキーとナターリアに言った。「ヴォイチェホフスキーを病院まで連れて行く。ナターシャ、きみも乗った方がいい」「わたしの怪我なら、病院に行かな...全文を読む


第351回

第19章

  ポニァトフスキーは、女性の悲鳴と、衣擦れの音を聞き、はっとわれに返った。彼は、男をつかんでいた手を離した。 そのとき、気を失う寸前だった男が、小さな声で言った。「あいつの名前は、クラークフのザモイスキー・・・フェリックス=ザモイスキーだ・・・」 そして、男はその場に倒れた。彼も気を失っていた。 ポニァトフスキーは、男の言葉を聞いてはいなかった。彼は、ナターリアを抱き起こし、中に運び込もうとしてい...全文を読む


第352回

第19章

  当時、ワルシャワの音楽教師たちの間では、<ステファンスキー=システム>と呼ばれる教育法が話題になっていた。 コンセルヴァトワールにボレスワフ=ステファンスキーというピアノ科の教授がいた。彼は、自分の生徒の中でも初歩の生徒たちには、ピアノを教えるほかに、いろいろな楽器を弾かせ、和声を教え、その知識から生徒本人に一番あった楽器を選ばせた。だから、ステファンスキーの手元に残ったピアニストはみな、優れた...全文を読む


第353回

第19章

  それは、ヤロスワフ=ベックという作曲家の<ポーランド人の少女(プティット=ポロネーズ)>という曲だった。ベックはポーランド人だったが、パリに出て活躍していた。この曲は、ベックが、ワルシャワに住んでいる幼い妹のために書いた曲である。ベックの妹は、ステファンスキーの弟子だったので、ステファンスキーもその曲をよく知っていた。ステファンスキーは、ときどきそれを自分の弟子に弾かせることがあるが、出版されてい...全文を読む


第354回

第19章

  シャルロットたちがヤン=クルピンスキーのところに行ったときには、もう夕方になっていた。 彼は、夕食後部屋に閉じこもって作曲する習慣だったので、夕食直前の訪問を快く思っていなかった。彼の頭の中には、メロディーが浮かび始めていた。「ヴァレリアンかい? 別の日にしてくれないか?」彼は、玄関のドアを開けて相手を見るなり、不機嫌そうに言った。「今日は、新しい生徒を連れてきたんだ。ほかの日にはできないよ。会...全文を読む


第355回

第19章

  初めは渋っていたステファンスキーだったが、結局ピアノトリオ結成に賛成した。そういう教育法があることを知らせることで、才能ある子どもたちを発掘できるかも知れない・・・というクルピンスキーの言い分を認めたのである。子どもたちの可能性を探るには、早いほうがいい。しかし、このシステムは、まださほど有名なわけでもない。才能ある子どもたちがワルシャワにしか存在しないわけはない。ほかの地域に知られることで、も...全文を読む


第356回

第20章

  その日は寒い一日で、細かい雪が降っていた。 初めて<クラコヴィアク>のメンバーがそろうことになっていて、シャルロットは馬車でステファンスキー家に向かっていた。かの女は、ほかの二人を全く知らなかった。心細く思ったが、不安を顔には出さなかった。自分が不安なのを隠すため、かの女は窓の外を見つめていた。 墓地の方に向かって歩いている一団がいた。シャルロットよりほんの少し年上に見える黒い髪の少年が泣いてい...全文を読む


第357回

第20章

  12月17日、自分のリサイタルを終えたシャルロットは、ステファンスキー家に<合宿>することになっていた。<クラコヴィアク>のデビューは、12月24日に決まっていた。彼らは、泊まり込みで練習することにしていたのである。 アントーニ=チャルトルィスキー公爵は、シャルロットが家を離れていてよかった、と心から思った。 かの女が家にいたら、あの事件のことが耳に入っただろう。ヴォイチェホフスキーの怪我のこと...全文を読む


第358回

第20章

 「サーシャ、いい加減にしなさい。わたしは、ホールの入り口で狙われたのだ」公爵が言った。「誰だって、自分の娘が出るコンサートなら、聞きに出かけるに決まってるじゃないの。そうは思わないかね?」 「そりゃそうです、ですが・・・」  公爵は優しくレシェクを見つめた。「レシェク、もう行きなさい。こんなことに巻き込んでしまってすまない」 「公爵さま、わたくしは・・・信じて下さい・・・あなたを裏切るつもりなんて・...全文を読む


第359回

第20章

  ステファンスキー家に集まった<クラコヴィアク>の3人の子どもたちにとって、3人だけで暮らすと言うことは、初めのうちは苦痛なことだった。6歳の年の開きは、このくらいの子どもたちにとっては大きな開きだった。  最年長のフリーデリックがグループのリーダーとみなされていたが、一人っ子の彼には5歳の女の子のことなどよくわからなかった。シャルロットは、まわりに自分より大きな子どもがいることに慣れていて、年の...全文を読む


第360回

第20章

  やがて、スタニスワフはいたずらっぽく笑った。「きみってすごいんだね、ブローニャ。あのクルピンスキー先生を怒らせるなんてね」 シャルロットは青ざめていた。かの女は、クルピンスキーが怒ったのを見たのは初めてだった。彼がなぜ怒ったのか、かの女にはわからなかった。 フリーデリックもほほえんだ。「彼はね、自分の言うことに逆らわれるのが、何よりも嫌いなんだ」 シャルロットは、二人を悲しそうに見た。「わたし、...全文を読む


第361回

第20章

  12月24日の朝、チャルトルィスキー公爵は、いつものようにヴォイチェホフスキーの見舞いに出かけようとしていた。 門のところに、一人の黒い髪の女性が立っているのに気づき、彼は馬車を止めさせ、窓から顔を出した。「・・・きみは、マドモワゼル=ジェルマンじゃない?」公爵はフランス語で訊ねた。 女性は黙ってうなずいた。 公爵は馬車から降り、かの女のそばに立った。「お願いです、教えて下さい。どうしてレシェク...全文を読む


第362回

第20章

 「外に出ましょう。そして、レシェクのところへ行きましょう。そこで、すべてを話してもらえますね?」公爵は丁寧な口調で言った。 ミリアムはうなずいた。 二人は歩き出した。 墓地に向かう途中で、公爵は花束を買った。そして、彼らはまた歩き出した。「なぜ、カトレアの花なんて買ったんですか?」かの女が訊ねた。「墓地に持っていく花じゃないって?」公爵はほほえみを浮かべた。しかし、悲しそうに見えることにかの女は気...全文を読む


第363回

第20章

 「少年は、恐ろしい顔つきになって、わたしを殴りました。オーレリアンは、彼を止めませんでした。わたしは、気を失って倒れていました。気がついたとき、体が縄でがんじがらめに縛りつけられていました。誰も来てくれなかったので、一人で縄を解かなければなりませんでした。わたしは、とにかく、レシェクに知らせようと思いました。すでに夜の7時になっていて、チャルトルィスキー家の人たちはもう出かけてしまったと知らされま...全文を読む


第364回

第20章

  その日の夕方、コンサート=ホールでは、3人の子どもたちがステージの上に並べられたピアノ2台を眺めていた。ステージは真っ暗だった。リハーサルはすでに終わっていて、開場間近だった。 マネージャーのエドゥワルド=ヴォールトは、楽屋とステージを忙しそうに往復し、椅子と譜面台を並べていた。「あとは、楽譜だけだけど、きみたちが持っていく?ステージに出しておく?」ヴォールトが訊ねた。「ピアノの上にのせておいて...全文を読む


第365回

第20章

  ステージが明るくなった。そして、3人は打ち合わせ通りの順番で出て行った。 集まった人々は、すでにシャルロットを知っていた。かの女は、<ブロニスワヴァ=スタニスワフスカ>を名乗っていた。この女の子が、あの悲劇のヴァイオリニスト、ウワディスワフ=スタニスワフスキーの娘であり、一週間前のデビュー=コンサートのあとで、口の悪い音楽評論家として有名なズビグニェフ=チェハンスキーから<20年に一人出るか出な...全文を読む


第366回

第20章

 「ほう? わたしには、きみがリーダーに見えたのだが、お嬢さん?」「わたしが? いいえ、とんでもない。わたしたちには、彼が必要なのです。ですから、彼が自然にリーダーになりました。そして、わたしたちは、それを当然だと思っています」シャルロットが答えた。 シュトックハウゼンは、フリーデリックの方を再び見た。「作曲家になりたいんじゃないかね? もし、その気になったら、いつでもヴァイマールへおいで」「ありが...全文を読む


第367回

第20章

  クラコヴィアクのデビュー=コンサートは大成功だった。そのため、次の年の初めに、もう一度同じプログラムで追加公演をしなければならないほどだった。しかも、そのティケットさえ、2時間のうちに全部売り切れてしまったのである。 コンサート=ホールに押しかけた人のうちの三分の一は、音楽に何の興味もない人たちだった。ほとんどが若い女性で、スタニスワフがお目当てだった。音楽が好きで見に来る人は、シャルロットのヴ...全文を読む


第368回

第20章

 「殺された? 誰に?」フリーデリックはびっくりした。「ロシア人たちにね」スタニスワフが答えた。 フリーデリックは驚いて後ずさりした。「兄さんは、テロリストだったそうだ。アレクサンドル=レシチンスキーは愛国者だった。ロシアで革命騒ぎがあったとき、ツァーリを暗殺しようと企てて失敗したんだ。彼は、捕まって投獄された。でも、仲間の名前はとうとういわずに死んだんだそうだ」スタニスワフが言った。 シャルロット...全文を読む


第369回

第20章

 「やめなさい!」フリーデリックは、グループを組んで以来初めて本気で怒った。二人ははっとした。「ぼくたちが今いがみあってどうしようって言うの? ぼくたちが今憎みあってどうしようって言うの? お願いだから、喧嘩はやめてくれ!」 二人はうなだれた。しかし、彼らはお互いに自分が正しいと思い続けているのは確かだった。「スターシ、和解の条件は?」「死者に対して謝って欲しい」スタニスワフは小さな声で、しかし、は...全文を読む

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