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年代記 ~ブログ小説~ 

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【  2011年07月  】 更新履歴 

  07.01.  【 第41章 】  第735回   さわりを読む▼
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  07.21.  【 第42章 】  第755回   さわりを読む▼
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  07.26.  【 第42章 】  第760回   さわりを読む▼
  07.27.  【 第42章 】  第761回   さわりを読む▼
  07.28.  【 第42章 】  第762回   さわりを読む▼
  07.29.  【 第42章 】  第763回   さわりを読む▼
  07.30.  【 第43章 】  第764回   さわりを読む▼
  07.31.  【 第43章 】  第765回   さわりを読む▼


第735回

第41章

  パトリック=ド=メディシスは、翌日もその翌日も学校に戻っては来なかった。 木曜日、シャルロットは、彼を訪ねて<ラ=メーゾン=ブランシュ>に行こうと思った。<ラ=メーゾン=ブランシュ>というのは、パトリックが住んでいる屋敷の通称である。かの女は、エリザベート=ド=ノールマンを誘った。ヴィルフレードの<白いバラの伝説>を彼に弾いて聴かせようと思ったので、伴奏者が必要だったからである。エリザベートが行...全文を読む


第736回

第41章

  その晩、エリザベート=ド=ノールマンは、沈んだ表情でシャルロットの部屋を訪れた。 シャルロットは勉強をしていたが、エリザベートがやってくると教科書とノートを閉じ、かの女のために紅茶を入れた。そして、かの女が話し出すのを待った。「・・・わたし、ディールと喧嘩したの」エリザベートが話し出した。「きっかけは、ピッコリーノのあの曲よ」「ディールのお気に召さなかったの? それとも、シューザンが嫌いだと言っ...全文を読む


第737回

第41章

 「マルフェは、いとこのシュリーのことしか考えていないの。わたしが初めて彼に会ったときから、ずっとそうだった。彼は、あれでも、女の子にもてたのよ、昔はね。でも、彼が愛しているのが死んでしまった女の子だとわかると、みんな、望みのない恋は捨ててしまったの」エリザベートは物憂げに言った。「でも、彼は、あなたに対してだけは違った。あなたが亡くなった婚約者にそっくりだったからなんでしょうけどね。誰に対しても距...全文を読む


第738回

第41章

  翌日の朝、シャルロットはサン=ステファーヌ聖堂の椅子に座って、祭壇の正面の十字架をぼんやりと見つめていた。いつものように朝早く教室に行き、誰かと顔を合わせたくない気分だったのである。 聖堂から外に出ようとしたとき、扉のところにヴィトールド=ザレスキーが立っていた。シャルロットは、彼に会釈をした。「・・・やあ、シャルロット」ヴィトールドは恥ずかしそうなほほえみを浮かべた。しかし、彼はそこを動かなか...全文を読む


第739回

第41章

  シャルロットはずっとふさぎこんでいた。クラスメートたちは、かの女が試験前で緊張しているのだろう、くらいに思っていた。かの女は、一人になりたがっていた。そして、クラスメートたちは、かの女を黙って見守ることを選んだ。 18日の日曜日、シャルロットはいつものように午前6時のミサに出た。ジュール=ド=メディシスと喧嘩状態にあったエリザベートは同行しなかったため、かの女は珍しく一人きりで寮から出た。そして...全文を読む


第740回

第41章

  そして、コルネリウスは思った。もし、そのロザリオが本物のサファイアだったとしたら、ヴィトールドはどうしてそれを簡単に手放したのだろうか。いや、噂は誇張されたもので、たとえそれがサファイア色をしたガラス玉だったとしても、母親の形見の品を、どうして他人に渡したりできるものだろうか? もし、自分がたった一つしか持っていない母親の形見を手放すとすれば、贈ろうとする相手は、自分にとってよほど大切な人だとし...全文を読む


第741回

第41章

  シャルロットは、それからバカロレア試験が終わるまでの約一ヶ月間に起こった出来事を後になってどうしても思い出すことができなかった。かの女は、ひたすら勉強をすることを自分に課した。そうしなければ、めちゃめちゃになった自分の心と向き合わなければならなかったからである。もし、その不協和音をちょっとでも聞くことを自分に許してしまったら、勉強どころではないことは目に見えていた。だから、すべてを忘れようとして...全文を読む


第742回

第41章

  シャルロットは、びっくりして箱を落としてしまった。かの女の足元に、箱の中味が散らばった。それは、新聞などから切り取った印刷物だった。 シャルロットは真っ青になっていた。しかし、パトリックに表情を読みとられるのを恐れ、かの女は振り向くことができなかった。それで、とっさに足元にかがみ込んで散らばった紙を拾い集めることに集中しているふりをしようと思った。かの女は、そのうちの一枚を拾い上げた。「・・・《...全文を読む


第743回

第41章

  隣の部屋には先客がいた。 そこは書斎になっていて、四方の壁ばかりではなく部屋の中じゅうが本棚のような部屋だった。机が一つあり、そこにジュール=ド=メディシスがいた。彼は、椅子に座って本を読んでいるところに見えた。しかし、本に熱中している風ではなかった。彼は、本を目の前にひろげていたが、両肘をついてぼんやりしていたのである。「・・・ごめんなさい、ノートを取らせてくださらない?」シャルロットは会釈を...全文を読む


第744回

第41章

  そのとき、隣の部屋からシャルロットを呼ぶパトリックの声がした。「・・・行かなくちゃならないわ」シャルロットが言った。 ジュールはかの女の手を取って引き留めようとした。「きみが好きだというのは、アンシャンのこと?」 シャルロットは首を横に振った。「彼をかばうために嘘をつくの?」ジュールが言った。「いいえ、彼じゃない。本当よ」シャルロットはジュールの目をまっすぐに見た。「わたしが愛している男性は、別...全文を読む


第745回

第41章

  書き終わると、パトリックはノートをシャルロットに差しだした。「これには、うちの庭にあるバラが全部載っている。ここには、今、バラが何種類あるか知っている?」「・・・50種類くらい?」シャルロットは当てずっぽうに答えた。今、<きづたの家>にあるバラの種類が約30だと聞いていたからである。ここには、それ以上のバラがあるはずだ。「いや、150くらいだ。正確には147」パトリックが言った。「そのうち、ぼく...全文を読む


第746回

第41章

 「今日ぼくがきみたちを呼んだのは、きみたちにお願いしておきたいことがあったからだ」そう言ってパトリックは二人を見た。そして、にっこり笑った。「---あ、別に、きみたちに仲よくして、って頼むつもりはないよ」 二人は苦笑した。「ただ、ぼくにはわかるんだ。きみたちは、本当は無二の親友にもなれる間柄だということがね。きみたちは、あまりにも似すぎている。だから、お互いに、相手の中に自分のいやなところが見えて不...全文を読む


第747回

第41章

  6月14日の午後になって、降り続いていた雨がやんだ。 その日の午後、イーリス=ド=メディシスがサント=ヴェロニック校を訪れ、シャルロットに面会を求めた。 シャルロットは、担任のアルフレッド=ド=グーロワールと一緒に、外部の人が面会に訪れたときに使う小部屋に行った。イーリスは、シャルロットに挨拶すると、こう告げたのである。「シャルロット、バラが咲いたの」イーリスはほぼ完璧なフランス語で言った。「フ...全文を読む


第748回

第41章

  4人が<ラ=メーゾン=ブランシュ>に到着したとき、屋敷の中は大騒ぎになっていた。 イーリスは、執事に何の騒ぎかと訊ねた。「パトリックさまが、いなくなってしまったんです」執事は青ざめて答えた。「30分ほど前に、薬を持ってお部屋に行くと、ベッドがもぬけの殻だったんです・・・」「で、車椅子は?」ジュールが訊ねた。「車椅子は、そこです」執事は、入り口に置いてある車椅子を指さした。「まさか、車椅子を使わな...全文を読む


第749回

第41章

 「・・・ぼくは、イカルスのように・・・」パトリックの声がとぎれた。唇は動いていたが、シャルロットには残りの言葉は聞き取れなかった。「・・・悔いはない・・・。見てくれたね、ママン・・・?」 これが、パトリックの最後の言葉だった。 シャルロットは、何か答えようとし、彼の激しい呼吸が止まってしまっていることに気づいた。かの女は彼の顔をのぞき込み、彼が幸せそうにほほえんでいることに気づいた。パトリックは、...全文を読む


第750回

第42章

  パトリックの死に一番ショックを受けたのは、やはりシャルロットだった。かの女は、どうやって寮までたどり着いたのか、全く覚えていなかった。そして、かの女は、泣きながら眠り続けた。 枕元には、バルバラ=ヴィエニャフスカとヴィルヘルミーネ=フォン=シュヴァルツベルクの二人が付き添っていた。バルバラは、シャルロットの耳元で、たえずポーランド語で慰めの言葉をかけ続けていた。バルバラには、シャルロットが夢を見...全文を読む


第751回

第42章

 《ぼくがいなくなっても、地球には朝が来るんだよ》パトリックはそう言った。その単純な事実が、今のシャルロットにとって何よりも残酷なことだった。 しかし、時間は待ってはくれない。 予定通り、翌週23日の月曜日から期末テストがスタートした。シャルロットにとっては、卒業試験である。 卒業学年の生徒たちのほとんどは、すでにバカロレア試験を受けているので、彼らは学科試験が免除になる。ただし、上級学校に進むか、...全文を読む


第752回

第42章

  その翌日、ヴィオラ部門の演奏試験が行われた。 シャルロットは、ヴィトールド=ザレスキーの演奏を聞きたいと思っていた。それで、自分の練習を後回しにして、試験会場である第一講堂に向かった。 シャルロットは、ヴィトールドの演奏を聞いたことがなかった。ただ、噂を聞いただけである。その噂とは、ザレスキー一族始まって以来これほど出来の悪い当主はいない---というものであった。噂の主が誰なのかは知らないが、かの...全文を読む


第753回

第42章

 「わたしがそそのかすんですって?」シャルロットは驚いた。「どうして、わたしが?」「彼に影響を与えることができる人間は限られています」ローランが言った。「そして、ぼくが知る限り、彼の親しい友人たちで、彼に武器を取るようにそそのかす人間は思い当たりません」「・・・で、わたしだと思ったの?」シャルロットは戸惑った。「どうして? わたしは、彼にそんな影響を与えるような人間じゃないわ!」 ローランは首をすく...全文を読む


第754回

第42章

  卒業試験のピアノ部門は、3日間にわたって行われた。課題曲がコンチェルトで、一人あたりの演奏時間が約1時間になってしまうので、一日にあまり多くの人が演奏することは困難だったためである。それでも、試験は朝の8時から夕方の6時まで、30分の休憩のみで行われた。全試験の中でも一番過酷な日程だった。シャルロットの出番は、3日目の最後から2番目だった。課題曲は、ベートーヴェンの<皇帝>コンチェルトだった。か...全文を読む


第755回

第42章

  演奏部門の結果が次々と掲示されていた。ヴィトールドのヴィオラは98点という高得点で、もちろんヴィオラ部門の第一位だった。シャルロットのピアノ、フランソワ=フランショームのスコア=リーディングも同じ98点だった。しかし、それが最高得点ではなかった。シャルロットは、オルガンの演奏試験で100点満点を取っていたのだ。 そして、演奏試験の最後の部門であるヴァイオリン部門が開始されようとしていた。ヴァイオ...全文を読む


第756回

第42章

  その場に残ったリシャールは、ヴィルフレードとは対照的なまなざしで友人を見つめていた。「きみは、一風変わった場所でトランペットの練習をしたがっているって聞いた」リシャールが言った。「ちゃかすつもりなんだね?」ヴィトールドは気を悪くしたように言った。「なぜ士官学校なんだ?」リシャールは容赦ない口調で言った。「きみには、銃なんて似合わない。もし、戦争に行くなら、トランペットを持っていく人間だと思ってい...全文を読む


第757回

第42章

 <ヴァイオリンの帝王>ギュスターヴ=デュ=ベレーは、ヴァイオリン部門最初の演奏者だった。 ヴァイオリン部門の演奏は、例年くじ引きで順番が決まった。そして、例年運がいい最初の演奏家が1位を取ると言われていた。逆に言うと、くじで一番にならなければ1位にはなれないというジンクスになっていたのである。だから、掲示板に演奏順が発表になるなり、彼が1位になることは<おりこみ済み>の既成事実になり、彼が何点を取...全文を読む


第758回

第42章

  演奏が終わってシャルロットは肩からヴァイオリンを取った。胸元で、大きな十字架が銀色に輝いた。「・・・ねえ、トト、きみのロザリオだろう、あれ?」リシャールがヴィトールドに言った。 シャルロットは首からロザリオをさげていたのだった。それは、間違いなくヴィトールドがシャルロットにおくったロザリオだった。 ヴィトールドは、リシャールの問いに答えなかった。彼は、短くため息をつき、立ちあがった。「・・・外に...全文を読む


第759回

第42章

  そのとき、リシャール=ラ=プランテの声が遠くから聞こえてきた。彼は、ギュスターヴ=デュ=ベレーの親友で、入学以来ずっと彼の伴奏ピアニストだった少年だった。「・・・そんな、きみらしくもない、ラン。きみが一番うまかった」「気休めは、もうたくさんだ!」ギュスターヴ=デュ=ベレーが叫んだ。<ラン>というのは、ギュスターヴの愛称である。その愛称を使う人間は、かなり彼と親しい人に限られていた。 二人は、噴水...全文を読む


第760回

第42章

  ギュスターヴは、立ち上がれない状態のままぼうっとしていた友人に声をかけた。「トトの言うとおりだ。なぜ、あんな風に言ったの?」 リシャールは茫然としていた。「・・・きみの友人、だって?・・・」リシャールはショックのあまり、自分が殴られたということしか考えられない状態だった。「それが、かつての同級生に言う言葉か?・・・」「あれは、ポーランドとポーランド人に対する侮辱だよ。あのおちびさんは、2月に比べ...全文を読む


第761回

第42章

  シャルロットは、パトリック=ド=メディシスが死んだあと、よく噴水を見に来ることにふと気がついた。かの女は、反復する動作を見ることで自分の気持ちが落ち着くことを知っていた。毎朝、日の出を眺め、夕方には日が沈むのを眺め、日中は気がつくと噴水の前にいた。パトリックは、自分が死んでも何もかわらないと言った。しかし、シャルロットは、パトリックだけがいないのだという変化にショックを受けていた。「・・・シャル...全文を読む


第762回

第42章

 「彼は、喜んできみを受け入れて下さるだろう」ヴィトールドが言った。「第一、きみをフランスに呼んだのは彼だそうじゃないか」 シャルロットはうなずいた。「そうであって欲しいような気がするし、そうでなければいいような気もするわ。わたし、考えてみたいの。全部を含めて、これからどうすべきなのか・・・」 そして、かの女は言った。「わたしは、まだ11歳になったばかりだし、何をしたいのか、何をすべきなのか考える時...全文を読む


第763回

第42章

  ヴィトールドはまた笑い出した。「・・・それは、ずいぶん乱暴な論理だね」「戦争は、人殺しの場よ」シャルロットは、ヴィトールドをにらみつけた。「人の命は、かけがえのないものだわ。この噴水の水のように、何度も使えるものじゃないわ」「わかっているよ」「テロで殺されるのも、戦場で殺されるのも、死ぬ人間にとっては同じことなのよ」シャルロットは必死で言った。「わかっているよ」ヴィトールドは同じ答えを返した。「...全文を読む


第764回

第43章

 「・・・考えてみると、ひどく短い一年だったと思う」ド=グーロワールは、生徒たちに向かって言った。「いや、いろいろあり過ぎた一年だった。初めてここにやってきたのは、去年の10月25日のことだった」 生徒たちはうなずいた。「転校生のシャルロットと一緒にここにやってきたとき、ラタン、きみがここに立っていた」「そうでしたね」サルヴァドール=クートンが言った。「自己紹介をしようとしたとき、ぼくは1918年6...全文を読む


第765回

第43章

  卒業式が終わって、シャルロットは花束を持ったまま友人たちと一緒に立っていた。かの女たちは、寮に向かおうとしていた。そのかの女たちを、ジョヴァンニ=ロッシが呼び止めた。「・・・卒業おめでとう、プティタンジュ」「ありがとう、予言者くん」シャルロットが言った。「あなたは、卒業までここにいるの?」 彼は寂しそうに首を横に振った。「戦争になる」 エリザベート=ド=ノールマンは彼にほほえみかけた。「あなたに...全文を読む

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