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年代記 ~ブログ小説~ 

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【  2012年03月  】 更新履歴 

  03.01.  【 第55章 】  第979回   さわりを読む▼
  03.02.  【 第55章 】  第980回   さわりを読む▼
  03.03.  【 第55章 】  第981回   さわりを読む▼
  03.04.  【 第55章 】  第982回   さわりを読む▼
  03.05.  【 第55章 】  第983回   さわりを読む▼
  03.05.  【 備忘記録的なもの 】  「年代記」4周年記念?   さわりを読む▼
  03.06.  【 第55章 】  第984回   さわりを読む▼
  03.07.  【 第55章 】  第985回   さわりを読む▼
  03.08.  【 第55章 】  第986回   さわりを読む▼
  03.09.  【 第55章 】  第987回   さわりを読む▼
  03.10.  【 第55章 】  第988回   さわりを読む▼
  03.11.  【 第55章 】  第989回   さわりを読む▼
  03.12.  【 第55章 】  第990回   さわりを読む▼
  03.13.  【 第55章 】  第991回   さわりを読む▼
  03.14.  【 第55章 】  第992回   さわりを読む▼
  03.15.  【 第55章 】  第993回   さわりを読む▼
  03.16.  【 第56章 】  第994回   さわりを読む▼
  03.17.  【 第56章 】  第995回   さわりを読む▼
  03.18.  【 第56章 】  第996回   さわりを読む▼
  03.19.  【 第56章 】  第997回   さわりを読む▼
  03.20.  【 第56章 】  第998回   さわりを読む▼
  03.20.  【 備忘記録的なもの 】  3月20日の日記   さわりを読む▼
  03.21.  【 第56章 】  第999回   さわりを読む▼
  03.22.  【 第56章 】  第1000回   さわりを読む▼
  03.23.  【 第56章 】  第1001回   さわりを読む▼
  03.24.  【 第56章 】  第1002回   さわりを読む▼
  03.25.  【 第56章 】  第1003回   さわりを読む▼
  03.26.  【 第56章 】  第1004回   さわりを読む▼
  03.27.  【 第56章 】  第1005回   さわりを読む▼
  03.28.  【 第56章 】  第1006回   さわりを読む▼
  03.28.  【 備忘記録的なもの 】  順番   さわりを読む▼
  03.29.  【 第56章 】  第1007回   さわりを読む▼
  03.30.  【 第56章 】  第1008回   さわりを読む▼
  03.31.  【 第57章 】  第1009回   さわりを読む▼


第979回

第55章

  シャルロットは、サヴェルネ夫妻に、今の会話の要点を説明した。自分は、作曲家コラン=ブルームがあこがれていたという<そよかぜ>の養女だったことがあること。かの女が引き取ったもう一人の娘は、実は男の子だったこと。その男性は、現在はヘラクレスのような大男で、昔女性として育てられた面影が全く残っていないこと。彼の兄ロジェ=ド=ヴェルクルーズは小説家で、<ムーンライト=ソナタ>という小説を書いたこと。そし...全文を読む


第980回

第55章

  翌日、シャルロットは松葉杖をついてホールに行った。車椅子では、多くの人に迷惑をかけそうだったからである。 マリアーン=ブラッソンは、ホールの入り口のところでパンをかじっているところだった。彼はシャルロットに気がつくと、パンを膝の上に置き、声をかけた。「やあ。今日は、オーケストラの練習かな?」 シャルロットは立ち止まった。かの女は、彼が自分を覚えていることに気づいた。しかし、この様子では名前を覚え...全文を読む


第981回

第55章

  シャルロットがオーケストラの控え室に入ったとき、団員たちは休憩中だった。かの女が一番驚いたのは、コンサートマスターの席にヴァイオリンが置いてあったことだった。テオドール=フランクは、人一倍ヴァイオリンを大切にする人だ。彼はどこに行くにもヴァイオリンを手放したことはない。その彼が、ヴァイオリンを椅子の上に置きっぱなしでどこかへ行くとは、かの女には信じられないことだった。 シャルロットはふといたずら...全文を読む


第982回

第55章

  シャルロットは黙ってうなずいた。「だが、今は悲しむ時じゃない」ブーランジェ氏はそう続けた。「涙は、別れの時まで取って置きなさい。今きみに必要なことは、フランク氏と一緒に生きることじゃないのかな?」 シャルロットはもう一度うなずいた。そして、ハンカチを目に当てた。「残された時間は少ないんだよ。彼のそばにいてあげなさい」ブーランジェ氏はそういうと、かの女の肩をたたいた。 かの女は何とかして泣きやもう...全文を読む


第983回

第55章

  アレクサンドル=ピサン氏はにこにこしながら、隣に立っていたマリアーン=ブラッソンの方を見た。マリアーンはどことなく寂しそうな表情で彼らを見つめていた。そして、シャルロットがなぜこの場にいるのかまだ気がついていないようだった。「・・・シャルロット、きみの今日のパートナーを紹介しよう。第36回ジュネス=ピアノ=コンクールの優勝者、マリアーン=ブラッソンくんだ」ピサン氏が言った。そして、マリアーンを手...全文を読む


「年代記」4周年記念?

備忘記録的なもの

 忙しい・・・と言っている間に、時は早三月。このあたりで、一時立ち止まらないと、日記にも「広告」が載ってしまいます。毎日更新している小説の方に「広告」がでることは(たぶん)ないと思いますが、不定期更新中の日記も、今までのところ、広告が出てくるまで放置していたことはありませんでした。そろそろ何か書かなくちゃ・・・と思っていましたが、ここのところ週末になるとなぜかお葬式が続きます。まさか、天国に年末調整...全文を読む


第984回

第55章

  女性は自己紹介した。「わたしの名前は、フランソワーズ=ド=ラヴェルダンよ。よろしくね」 シャルロットは、紹介される前からかの女が誰なのか知っていた。会ったことはないはずだが、想像通りの女性だった。この女性は、かの女の祖父の恋人。フランソワーズ=ド=サックスの祖母で、クラリス=ド=ヴェルモンの養母だ。フランソワーズ=ド=サックスにそっくりだ。外見も、気の強そうなところも。 シャルロットはかの女の方...全文を読む


第985回

第55章

  ヴァーク=ブーランジェはにっこりしてシャルロットを見た。「そうだな、もしオーケストラの連中がいいと言ってくれたら、それも面白そうだと思うんだが」 シャルロットは困惑したように周りを見た。どうやら、オーケストラの全員は同意しているようだ。それで、かの女はマリアーンに言った。「・・・あなたは、すぐにリハーサルを始めたいでしょう?」 マリアーンはほほえみを浮かべた。「ぼくでよかったら、伴奏するよ」 シ...全文を読む


第986回

第55章

  シャルロットは、あの悲しいできごと以来、意識して<クラコヴィアク>を思い出さないようにしていた。しかし、シルヴィー=ペリゴールに会って、あのアルバイトの依頼を受けたときから、かの女はチェロの練習を再開していた。サヴェルネにアルバイトの許可をもらったとはいえ、たとえ彼の友人のヴェルネにであったとしても、誰かにチェロのレッスンを受けるわけにはいかないので、かの女は<クラコヴィアク>時代のレパートリー...全文を読む


第987回

第55章

  今のシャルロットは、グループが解散したときのフリーデリックの年齢にはまだ達してはいなかった。彼はずっと大人だった。彼と演奏しているとき、まるで守られているような安心感を感じたのは、きっとそのためだったのだろう。彼は友人というよりは、小さな保護者だったのかも知れない。 しかし、この少年はどうだろう? シャルロットは、マリアーン=ブラッソンのことを思った。黒髪に黒い瞳の少年。ブロンドの髪に青い目をし...全文を読む


第988回

第55章

  そして、シャルロットは思い切ってこう言った。「マドモワゼル=ド=ラヴェルダン」シャルロットは頭を下げた。「筋違いのお願いだとは承知しています。ですが、お願いがあります。どうか、フリーデリックを助けて下さい。彼の力になってあげて下さい」 フランソワーズはびっくりした。「なぜ、わたしがあなたの助けになる必要があるの?」「わたしの養父エマニュエル=サンフルーリィは、あなたの養女クラリス=ド=ヴェルモン...全文を読む


第989回

第55章

  フランソワーズ=ド=ラヴェルダンがこのコンサートのために書いた<小組曲>という作品は、タイトルに反してピアノ二台を伴った交響曲のような大がかりな作品だった。ピアノとオーケストラは、それぞれが主役だった。そのため、フランソワーズは、舞台の上でのピアノの位置まで指定した。 通常、ピアノコンチェルトを演奏する場合、ピアノの位置は、オーケストラの前である。つまり、舞台から一番近い場所になる。ところが、フ...全文を読む


第990回

第55章

  翌日、シャルロットは11時頃ホールに着いた。エーグルフォール教授と論文の打ち合わせをしてからホールにやってきたからである。 かの女は、ピアノの音がしたので、舞台の袖ではなく、客席に向かった。 マリアーンは、リストのソナタを演奏していたが、かの女に気がつくと演奏を止めた。「おはよう、シャルロット」彼はほほえんで挨拶した。「練習の邪魔になってしまった?」シャルロットが訊ねた。「いや、指ならしは終わっ...全文を読む


第991回

第55章

  マリアーンは部屋に入ると、たった一つしかない椅子をかの女に譲り、自分はコンサート用の衣装が入ったトランクに腰掛けた。「・・・ごめんなさいね、そんなところに座らせてしまって」シャルロットは謝った。「足が悪い人に、これを勧めるわけにはいかないからね」マリアーンは平気な顔をしていた。「あなたって、タフな人ね」シャルロットは感心したように言った。「まあ、外国暮らしが長いんでね」「長いって、どのくらい?」...全文を読む


第992回

第55章

  彼はシャルロットの方に視線を移した。「ぼくは、そのときになって初めて、それまでかの女を誤解していたことに気づいた。かの女に済まなかったと心からわびた。それ以来、ぼくは、かの女を実の姉のように思っている。それまでは、少し遠い存在だったかの女が、急に身近になった。かの女も、ぼくたちを本当の兄弟だとみなしてくれるようになったようだ」「本当は優しいひとなのね」シャルロットは思わず涙ぐみそうになった。「か...全文を読む


第993回

第55章

  シャルロットはほほえみながら否定した。「わたしは、天使じゃないわ」 マリアーンは肩をすくめた。 そして、彼は唐突に話題を変えた。「・・・ぼくは、本当はうれしかった」「何が?」シャルロットが訊ねた。「きのう、あなたは、ぼくにこう言いましたよね、『あなたは、ブラームスを演奏したからこそ、優勝できたんじゃないですか』と?」「ええ。でも、それに対して、あなたは、怒ったわ」シャルロットが言った。「あの文脈...全文を読む


第994回

第56章

  霧が深い朝だった。 シャルロット=ド=サン=メランとシルヴィー=ペリゴールの二人は、霧の中で一人の少女を見た。少女の姿は、どことなくフロランス=クールゾンを思わせた。シルヴィーは少女に声をかけた。「ドリー? わたしよ、わかる?」 女の子はびっくりして逃げ出した。 シルヴィーは少女を追いかけてかけだした。 松葉杖のシャルロットは、そうすることができなかったので、シルヴィーが持っていた荷物と一緒にそ...全文を読む


第995回

第56章

  フランショーム家第四代当主エクトール=フランショームは指揮者だった。 彼は、母親のジョルジェットから、生まれる前から作曲家になることを期待されていた。彼の父親は作曲家だった。フランショーム夫妻は、生まれてくる子が男の子だったら、作曲家ベルリオーズにあやかってエクトールと名付けようと決めていたのである。こうして生まれてきた男の子は、過大な期待と共に、エクトールの名が与えられた。 しかし、この子ども...全文を読む


第996回

第56章

  シャルロットは困ったように彼を見つめた。「あなたの息子さんや甥御さんのうち、4人までがすでにわたしを知っています。いったいどんな顔をして彼らに会えばいいのでしょうか?」 エクトールは、その冗談を真に受けた。「4人? アルトゥールの3人の息子以外に、誰を知っているんだ?」「フランソワさんを」シャルロットが答えた。「わたし、サント=ヴェロニック校の卒業生です」「なるほど・・・」彼は口の中でつぶやいた...全文を読む


第997回

第56章

  執事が案内した部屋は、音楽室と呼ぶのにふさわしい部屋だった。その部屋には、ピアノとヴァイオリンが置かれ、たくさんの楽譜が棚に収まっていた。大きな机が一つあり、そこにはペンとインクが二組置かれていた。たぶん、フランソワとオーギュストは自分専用のペンを使うのだろう。 部屋の中で、少年が一人、退屈そうに楽譜をのぞき込んでいた。彼は、ノックの音で顔を上げた。 シャルロットは、少年を見た。彼は栗色の髪をし...全文を読む


第998回

第56章

 「チェロを演奏するのには、松葉杖は必要ないわ」シャルロットは真面目な顔でそう言った。 ブリューノはほほえんだ。「・・・ただ、あなたの助けが必要だわ」シャルロットはそう続けた。「一つは、適当なところに椅子を出して欲しいの。それから、チェロを持たせて下さるかしら?」 ブリューノはうなずいた。「それだけで大丈夫?」 シャルロットは、彼の見ているまえで、チェロのケースを開けた。それを見て、ブリューノは、か...全文を読む


3月20日の日記

備忘記録的なもの

 非現実的な仮定の話ですが、もし、今5億円の宝くじが当たったとします。仮定の話に「仮に」も何もないのですが、仮に今、被災者の方のために全額寄付する必要がなくて、全額自由になるとしたら、そして、自分の生活のことを全く考えなくてもいいとしたら(・・・はい、そこですでに100パーセントあり得ない話になりましたね・・・)、「年代記」をアニメ化して、世界に一つしかない非売品のDVDをずらっと本棚に並べてみたい...全文を読む


第999回

第56章

  シャルロットはため息混じりに答えた。「そう思わなくても、人生そのものが暗いわ」「シャルロット、あなたは、そんな暗い人生を何年送ってきたというの?」「・・・もしかすると、わたしの年齢を聞いているの? わたしは11歳よ。もうすぐ12になるわ」「ほんの12年で、人生を諦めたような言い方をするなんて」ブリューノの口調には、まだからかいが含まれていた。「ぼくは17だよ」 シャルロットはまだ真面目な顔をくず...全文を読む


第1000回

第56章

  オスカールは真っ赤になった。彼は差し出された手を握った。「ザレスキー家の女性に会ったのは、あれが初めてだった。そして、ぼくよりもピアノを上手に弾く人に会ったのも・・・」「あら、あなたのほうが上手だったわ」シャルロットが言った。「いや、そんなことはない」そう言うと、彼は手をはなし、ブリューノの方を向いた。「すでに自己紹介はすんでいるとは思うが、ぼくからかの女を紹介させて欲しい」 そして、彼はこう言...全文を読む


第1001回

第56章

 「天使に知り合いはいない」オスカールが答えた。「それ以前に、きみが天国に知り合いがいるなんて信じられない」 フランソワは毒舌の応酬なら負けてはいなかった。「ぼくは、きみよりは交友範囲が広いんでね。きみの知り合いには、ザレスキー一族の当主なんていう大物はいないだろう? ぼくには、天国にも地獄にも煉獄にも知り合いは大勢いるんだ」「それより、ミュラーユリュードの天使、って誰だ? きみの恋人か? それとも...全文を読む


第1002回

第56章

  フランショーム氏の部屋から出たところに、赤毛の男性が一人立っていた。 シャルロットは、オスカールだと思い、ほほえみかけたが、そのほほえみが一瞬凍りついた。「ありうることかしら・・・あなたは、オスカールじゃない・・・」シャルロットはつぶやいた。 彼はにやりと笑いかけた。「そのとおり、ぼくはオスカールじゃない」 シャルロットは目を見開いた。「・・・あなたは、ファンシュ=ル=ソンだわ。でも、まだ帰って...全文を読む


第1003回

第56章

  シルヴィーの仕事は、ほとんど一日中フランショーム氏のそばでピアノを弾くというものだった。彼がかの女にひかせる作品は多種多様なものだった。そして、それはピアノ曲に限らなかった。彼は、かの女がスコアを読めることがわかると、自分の勉強にまでかの女をつきあわせたからである。 しかし、かの女の仕事の大部分は、彼が「仕事」をしていないときに演奏することだった。「・・・でも、本に没頭しているように見えても、ぼ...全文を読む


第1004回

第56章

  シャルロットは少し悲しそうな顔をした。「あなたは、わたしがピアニストだということをお忘れなんですね?」 フランショーム氏は真面目な顔で答えた。「きみは、小説家なのだと思っていた」 シャルロットはびっくりしたように彼を見上げた。「きみは、あの隠れたベストセラー<バラ園>の作者だろう?」彼はにやりとした。「まあ、そんなことまで・・・!」シャルロットは絶句した。 彼は笑った。「わたしは、いろいろ知って...全文を読む


第1005回

第56章

  昼食後、シャルロットは音楽室に行った。そこには、すでに先客がいた。ブリューノがベートーヴェンのソナタを演奏していたのである。 曲が終わると、シャルロットは彼に声をかけた。「27番のソナタね? それにしても、この家の人は、ベートーヴェンが好きなの? それとも、単に、勉強の対象?」 ブリューノが答えた。「たぶん、好きなんだと思う」 そう言いながら、彼は別の曲を弾き始めた。今度は30番のソナタだった。...全文を読む


第1006回

第56章

  ブリューノとのアンサンブルは、何度合わせてもいつも新鮮な感じがした。一回として全く同じように曲が仕上がったことはなく、それでいていつも不完全なわけではないのだった。一度あわせるごとに演奏がよくなっていくことが二人にはわかっていた。 ところが、その日は違っていた。シャルロットは、あくまでも彼とペースをあわせようとはしなかった。かの女は、スタニスワフがしたように演奏してみようと試みたのである。ブリュ...全文を読む


順番

備忘記録的なもの

 テレビのアナログ放送も「あと3日」と表示が変わりました。3月31日正午で放送が終了するということは存じておりますが、対策なきまま現在に至ってしまいました。(当日、)法事から帰ってくるまでには放送が終了しているはずですので、それからチューナーを買いに行って間に合うものか?(=まだ売っているのでしょうか?) 買いに行く暇がなかったのですが、そもそも、つける必要があるのかどうか。(20年もののテレビに、...全文を読む


第1007回

第56章

  シャルロットはもう一度涙を拭きながら同じ言葉を言った。「矛盾だわ」  オスカールはふっと笑った。「・・・そうだね。神さまは、人間に、苦しみを与えられた。そして、その苦しみを軽くする二つのプレゼントを下さった。涙と忘却だ」  シャルロットはバラの方を見た。そのバラの色は白だった。かの女はそれに初めて気がついた。 「涙は、苦しみを洗い流す。忘却は、苦しみそのものを心から取り去る」  シャルロットはバラの...全文を読む


第1008回

第56章

 「・・・じゃ、戦争にはならないと思う?」シャルロットは希望を込めて訊ねた。「戦争を望んでいない人だっている」オスカールが言った。そして、彼は唇の端をゆがめた。「戦いたがっているひともいる。たとえば、ヴィトールド=ザレスキーみたいに・・・」シャルロットはそっとため息をついた。「彼は、本当は、戦いたいとは思っていない」「まさか」シャルロットはバラからオスカールへ視線を向けた。「じゃ、どうして、彼は軍人...全文を読む


第1009回

第57章

  その翌日、シャルロットは<音楽室>の机に向かって論文を書いていた。 シルヴィーは、ベートーヴェンの31番のソナタを弾いていたが、急に手を止めて訊ねた。「・・・ねえ、シャル、前から気になっていたことがあるんだけど、聞いてもいいかしら?」 シャルロットはペンを置いた。「何かしら?」「あなたのそのネックレスなんだけど・・・。それ、指輪でしょう?」「ええ、婚約指輪よ」シャルロットが答えた。「婚約?」「彼...全文を読む

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