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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第6章

第97回

 アントワネットは、下の娘ステラを見たとき、いとこ---ピアニーナの母---のアニェースを思い出した。そっくりだったというわけではない。似ていたのは、美しいブルーの目とひとなつっこい笑顔だけである。12歳だったが、姉より美人になるだろう、とかの女は思った。
 当時、トントンは31歳、シャロンは16歳だった。アントワネットがスカラ、ステラ姉妹を紹介したとき、トントンの方は姉妹と会話したが、シャロンの方は挨拶だけしてあとは何も言わなかった。
 スカラとステラは彼らにピアノを披露した。トントンは音楽には興味はなかったが、ピアノを弾いているステラの姿にひかれた。ステラはコンセルヴァトワールに行っているというシャロンに興味を持ったが、シャロンの方は完全に無関心であった。コンセルヴァトワールにいる彼にとっては、ステラくらいの腕前の持ち主は珍しくも何ともなかったのである。彼は、何か演奏して欲しい、と依頼されたが、「楽器を持ってきていませんから」と冷たく返事したのである。シャロンは、単に女の子とどう話していいかわからなかっただけであったが、ステラは、自分が何か悪いことでもしたかのように落ち込んだ。
 その様子を眺めていたアントワネットは、シャロンとステラが結婚したらどうだろう・・・と思ったのである。二人とも音楽好きだし、4歳差という年齢差もそんなに問題にはならないだろう。シャロンは公爵家の二男だから、家柄だの釣り合いだのと言うことをさほど気にする必要もないだろう・・・。
 しかし、アントワネットは義姉のクリスティアーヌから思いもかけないことを告げられた。
 孫のトントンが、ステラを気に入った、というのである。18歳の年齢差には、さすがのクリスティアーヌでさえ驚いたのである。しかも、ステラはまだ12歳である。かの女が結婚する頃には、トントンは35歳を超えている。いくらなんでも、この組み合わせには無理がある・・・とクリスティアーヌは考えた。いくらお気に入りの孫の願いでも、彼の父親---自分の息子にこの話をするのにはためらいがあった。
 一方スタニスラスは、トントンが女嫌いだと思っていた。どんな縁談を出しても、彼は絶対に首を縦に振らなかったのである。ところが、その彼が自分から結婚したいと言い出したのである。相手がどんな女性であっても、父親はそれを認めるつもりでいたのだが、さすがに18歳の年齢差は彼を戸惑わせたのである。
 スタニスラス自身の口から非公式に打診されたとき、ピアニーナ=ザレスカも最初は驚いた。かの女から最初に話を聞いたとき、ステラはショックのあまり泣き出してしまったのである。かの女にとっては、トントンは文字通り「おじさん」に見えたのである。かの女が好きだったのは、年少のチェリストの方だったのであった。ピアニーナも最初はこの話を断わるつもりだった。しかし、相手はなかなか引き下がらなかった。
 やがて、ピアニーナもこれだけ家族がバックアップしているところに嫁ぐなら、娘も不幸にならないだろうと考えるようになった。ステラは、「時間が欲しい」とだけ答えた。そして、ステラとトントンは婚約した。二人は、ステラが16になったら結婚する、と決めたのである。
 ところが、この結婚は、思わぬ障害で実現しなかったのである。それは、トントンの急な病死、という障害であった。
 1873年の冬の終わりに、クリスティアーヌ=ド=ルージュヴィルが高熱で倒れた。肺炎であった。熱心に看病していたアントワネットとトントンが相次いで肺炎にかかった。なぜか一番若いトントンが最初に亡くなり、クリスティアーヌもそれから一週間しない間に亡くなった。その知らせを聞いたアントワネットは、次は自分だと覚悟を決めたのである。
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