FC2ブログ

年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第三部」
第59章

第1053回

 フリーデリックは、マルセルの問いを聞くと、額にしわを寄せた。
 フェリックスはびっくりして二人の間に入り、二人を正式に紹介した。フリーデリックは、マルセルが二人の友達だと知ると、態度を和らげた。
 フェリックスは、その場を和らげようとするかのように、肩をすくめて見せた。「・・・全く、どうしてみんな口を開くと戦争、戦争なんだ?」
「忘れたくても、忘れさせてもらえないからさ」マルセルが言った。「新聞売り。それに、士官学校の生徒・・・」
「士官学校の生徒?」シャルロットは首をかしげた。
「きみも見かけたのか、あのポーランド人を?」フェリックスが言った。「確か、ヴィトールド=ザレスキーっていったが、きみの親戚か?」
 シャルロットはびっくりしてうなずいた。「ええ、彼のことはよく知っているわ。でも、あなたたち、彼と戦争の話をしたの?」
「さっき、彼が通りかかったとき、ぼくたちは戦争の話をしていた」フェリックスが言った。「彼は、ぼくがポーランド人だと思って話しかけてきたようだ」
 シャルロットはうなずいた。
「でも、不思議な人だね。あんなに勇敢なことを口にしながら、目では反対のことを言っていた。彼は、臆病なのかい?」
「いいえ、彼は、臆病なんかじゃないわ。ただ、ちょっと優しすぎるのよ」シャルロットが言った。「彼には、人殺しなんかできないわ。しようとはしているようだけど・・・」
「人は、どうしようもない状況になると、人を殺したり、時にはその肉を食べたりするものだ」フリーデリックが言った。
「肉を食べる?」フェリックスは恐ろしそうに言った。
 マルセルはけろりとした口調で言った。「そういえば、まだ、人食い人種は存在するらしい」
 そして、フリーデリックとマルセルは、人食い人種の話を始めてしまった。
 そこで、シャルロットはフェリックスに言った。「あなたは、アドルフ=ブーランジェの奥さまのことを、何か聞いている?」
 フェリックスはびっくりしてシャルロットを見た。「アドルフ=ブーランジェ?」
「確か、ミシェルという名前だったのよね?」
 フェリックスはうなずいた。「フランス風に言えばね。かの女はポーランド人だ。確か、ミカエラ=タンスカというのが、結婚前の名前だと聞いているよ。ブーランジェ一族は、昔から、ポーランド人とは縁が深いらしい」
 そして、彼はウィンクして見せた。
「ポーランドの女性?」シャルロットは目を丸くした。
「うん。でも、どうして、そんなことに興味があるの?」フェリックスが訊ねた。
「今度提出する論文のことで、ちょっと調べているの」シャルロットが言った。「あなたは、カミーユ=ブールドンを知っているわね?」
「いいや、知らないよ」
「ユージェーヌ=ブーランジェと言えば、聞き覚えはない?」
「ユージェーヌ=ブーランジェ?・・・1871年にパリで亡くなったという、ブーランジェ氏の弟のこと?」
「知っているのね?」
 フェリックスはうなずいた。「ブーランジェ氏が、ときどき思い出したように言うんだ。彼は、ブーランジェ一族の出来損ないだったけど、自分にとってはたった一人の弟だった、って。そして、彼を失ったのは、半分は自分のせいだって・・・」
「半分?」シャルロットは、その表現に引っかかりを感じた。半分は自分のせい、とは、どういう意味だろう? 彼は、何を後悔しているのだろうか? 弟を置いてでていったこと? それとも・・・?
 まさか、ミカエラ=タンスカは、弟の恋人だった・・・?
関連記事
 関連カテゴリ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第一部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第二部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第三部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 SIDE-B
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 外伝
総もくじ 3kaku_s_L.png 更新
総もくじ 3kaku_s_L.png 日記
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第一部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第二部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第三部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 SIDE-B
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 外伝
もくじ  3kaku_s_L.png データベース
もくじ  3kaku_s_L.png 設定
総もくじ 3kaku_s_L.png 更新
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
総もくじ 3kaku_s_L.png 日記
  ↑記事冒頭へ  
*Edit
  ↑記事冒頭へ