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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第三部」
第62章

第1109回

 シャルロットが、マルグリート=ド=ティエ=ゴーロワの死を知ったのは、それから約2週間後のことだった。
 その日、フランスから2通の手紙が来ていた。ロジェとオーギュストからだった。コルネリウスからの手紙はずっと来ていない。もしかすると、コルネリウスの身に何か起こったのか・・・シャルロットはその2通の手紙を見ながら思った。
 やがて、かの女はロジェの手紙の封を切った。
 彼は、長い手紙を書いていた。その手紙は、マルグリート=ド=ティエ=ゴーロワの死という事実を報告したあと、葬式のために集まった人たちの告白が綴られていた。シャルロットは、ドクトゥールとアルトゥールの間の不和について初めて知った。二人は親友だと思っていた。その二人が、一人の女性(ジュヌヴィエーヴ=ド=ティエ=ゴーロワ)をめぐって、たくさんの人を不幸にした。かの女は途中で読むのをやめた。この事実を知ったコルネリウスがどう思ったか、想像がついたからである。自分が望まれなかった子どもだと知って、あのプライドの高いコルネリウスがどんなにショックを受けたか、その場に居合わせなくても想像はつく。シャルロットが見ても、あの親子は普通ではなかった。アルトゥール=ド=ヴェルクルーズは、自分のどの子どもに対してもさほど愛情を持っているようには見えなかった。シャルロットが知る限り、コルネリウスは母親がいない状態で育った。その点は自分も同じだ。そんな自分たちにとって、ドクトゥールが父親代わりで母親代わりだった。しかし、そのドクトゥールが、自分に何もかも偽っていたことを知ったとき、彼はどうしようもない状況に陥ったに違いない。これまで信じていたものが、何もかも嘘だったから・・・。
 シャルロットは首を横に振った。いいえ、ドクトゥールの愛情は本物だった。ロジェは、ドクトゥールにはもう一つ秘密があると書いていた。その秘密は、自分に関係があることに違いないとシャルロットは思っていた。彼がつねづね、《16になったら本当のことを話す》と言っていたからである。シャルロットは、手紙の内容からすると、その秘密は想像もできないくらい突拍子もないものかもしれないと思った。たとえば、自分はアルトゥール=ド=ヴェルクルーズと誰かの間の子どもだとか・・・。
 シャルロットは、自分があまりにも突拍子もないことを思いついて、緊張が解けた。それだけはありえなかった。どう考えても、誰の目から見ても自分はフランショーム一族ではあり得ない。
 では、自分はドクトゥールとジュヌヴィエーヴの娘だった・・・?
 手紙の中身から考えればありそうだが、それも考えられない。
 そもそも、どちらの考えも無理がある。コルネリウスが実の兄なら、彼らが婚約するはずはないからだ。シャルロットはため息をついた。
 かの女は、手紙のほうに考えを戻した。ドクトゥールの話は、コルネリウスにとってはあり得ない話だった。自分の両親のそれぞれが別の人を愛していたこと。自分がいたために両親が離婚を思い止まったこと。もし、その場で離婚が成立していたら、オーギュストの人生が変わったであろうこと。そして、ドクトゥールは、自分の母親の死を12年も隠し続けたのだ。父親のように慕っていた人からこれだけの秘密を打ち明けられたら、動揺しない方がおかしい。
『母を殺したのはマルグリート伯母かもしれない。でも、直接手にかけなかっただけで、母を殺したのは父とあなた(ドクトゥール=ド=ラ=ブリュショルリー)だ!』と叫んで、コルネリウスはその場を去ったという。コルネリウスの気持ちも理解できる。
 シャルロットは手紙の続きを読んだ。
 そして、スタニスワフスカ夫人たちがやってきた。かの女は、マルセル=シャグランの言葉を読んで、胸がつまった。彼がこんな風に許しの言葉をかけてくれるとは思わなかった。ただ、マクシミリアンだけは終始不機嫌だったそうだ。確かに彼は当事者だ。彼とは話し合いをしておくべきだった。かの女は、何か不吉なものを感じ、手紙を閉じた。
 オーギュストの手紙は、マルグリートの話にはあまり触れていなかった。彼は、自分たちの進路について多くのページを割いた。サント=ヴェロニック校の卒業式の風景だ。旧2年7組のメンバーの卒業式。総合順位第一位は1670点のフランソワ=ジュメール。一点差でドニ=フェリー、サルヴァドール=クートン、オーギュスト=ド=マルティーヌ。その一点差の1668点がギイ=フランクとコルネリウス=ド=ヴェルクルーズ。三位までに6人が入るというのは史上初のことで、その点差が2点だというのは、歴史的快挙らしい。しかし、奨学金が与えられるのは2名だということは変えられない事実だった。サント=ヴェロニック奨学金は、第一位を取ったものにのみ与えられ、サント=セシール奨学金は実技で第一位を取ったものに与えられる奨学金だ。これは、進学する限り卒業するまで無償で与えられる権利だが、対象者が進学しなかった場合には、二位のものがそれを引き継ぐことはできない。それは、ドニ=フェリーが、この時点で大学進学の夢を断たれたことを意味する。
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