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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第三部」
第66章

第1178回

 ルークレール警部は頭を抱えた。マルグリートを殺した犯人は、ほかにいる。その人物は、アレクサンドリーヌに罪を着せようとしていた。
「・・・それでは、あなたは、ぬいぐるみがどこにあるか、本当に知らないんだね?」ルークレール警部が訊ねた。
 エティエネットはもう一度顔を上げ、目を見開いた。「ぬいぐるみ・・・?」
 それが答えだった。
 ルークレール警部は立ちあがった。犯人はいったい誰だ?
 そのとき、彼の脳裏に一つの名前が浮かんだ。
 マルグリートのダイイングメッセージ。
 犯人は、やはり<viol>だった。
 そのとき、ノックの音がして、ナッソー刑事が顔を出した。
「エルスタン嬢に、面会人が来ています」
 ルークレール警部は眉を上げた。
「弁護士のマクシミリアン=エルスタンと名乗る青年です」
 それを聞くと、エティエネットはさっと顔を上げた。「会いたくありません!」
「知り合い?」ルークレール警部が訊ねた。
「弟です」エティエネットの口調に、軽い憎しみが混じっていた。
「お嬢さん、わたしたちには、面会を断わることはできない」警部が言った。「あなたを弁護士に会わせないわけにはいかないんだよ」
 そして、ナッソーに軽く合図をした。
 部屋に入ってきたのは、灰色の目をした男性だった。
「出て行って!」エティエネットは立ちあがって叫んだ。「あんたにだけは、弁護を頼む気はないわ!」
 青年は悲しそうに姉を見つめた。
「もしこの世に、あんたと創世記の蛇しかいなかったとしても、あんたに頼むくらいなら、蛇に弁護を頼むほうがましだわ」エティエネットはそう言うと、彼に背を向けた。
 マクシミリアンは、悲しそうな表情を一瞬浮かべたが、すぐに無表情に戻った。
「・・・よろしい。望み通り、蛇をつれてきてあげよう」マクシミリアンが言った。
 エティエネットはくるりと振り返り、3歩で彼との距離を縮め、左手で彼のほおをひっぱたいた。
 マクシミリアンは微動だにしなかった。
 エティエネットは自分の席に戻った。
「・・・どうなさいますか?」ルークレール警部がマクシミリアンに訊ねた。
 マクシミリアンは彼に頭を下げた。「よろしくお願いします」
 警部は眉を上げた。
「本人の希望です。別の弁護士を連れてきます」マクシミリアンは淡々とした口調で言った。
「いったい、誰に頼むつもりですか?」警部が訊ねた。
 マクシミリアンは、一瞬のためらいもなく言った。「彼に」
「彼?」警部は首をかしげた。
「シャルル=ファルロー弁護士です」マクシミリアンが答えた。
「まさか!」ナッソー刑事が驚いて口をはさんだ。
 エティエネットは一瞬驚いた顔をしたが、さっとその表情を消した。
「それが、あんたの望みなんだろう?」マクシミリアンはそう言い、部屋から出て行った。
 警部はナッソーと顔を見合わせた。今見聞きしたことをどう解釈すべきなのか、彼らにはわからなかった。
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