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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第三部」
第67章

★第1211回

***************閲覧注意! 暴力的シーンがあります。*************** 

自己責任の上ご覧ください。
(18歳未満の方、および暴力シーンが苦手な方は閲覧をご遠慮ください。)

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 シャルロットは悲しそうに首を横に振った。「わたしには、運命の人が存在するの。わたしは、生まれる前からその人と結婚するさだめなの。その人を愛しているの。わたしには、ザレスキー一族を捨てるつもりはないし、まして、あなたにザレスキー一族であることをやめてもらうつもりもないわ。立ってちょうだい、ウラディ。あなたにそうしてもらうのは、とても心苦しいわ」
「ぼくの、運命のひと・・・」ウラディーミルはかの女の手を取ろうとしたが、シャルロットはその手を引っ込めた。
「お願い。家に戻って。そして、お父さまと和解してちょうだい」シャルロットが言った。「わたしは、あなたの人生を変える女性かも知れない。あなたは、コンクールに優勝した。自分の天職に自信を持ったはず。わたしの役目は終わったのよ」
「きみは、手紙にもそう書いたよね」ウラディーミルはかの女の腕をつかんだ。今度はシャルロットも逃げ切れなかった。「だが、そうじゃない。ぼくにはわかるんだ。ぼくは、きみを避けようとした。でも、そうできなかった。きみに出会ったときから、運命は決まっていたんだ」
 シャルロットは、抗議するように言った。「手をはなしてちょうだい、ウラディ」
「いやだ!」彼は答えた。
「放さなければ、大声を出すわよ」シャルロットは彼をにらみつけた。そして、急に身を翻そうとした。
 シャルロットは、彼の手をすり抜けた。しかし、一瞬のあと、彼はかの女の腕を捕まえた。かの女はバランスを崩し、彼の腕の中に抱きかかえられる格好となった。彼は、そのままかの女を長いすに押し倒した。
「お願い、はなして!」シャルロットはもがきながら言った。
「愛している」ウラディーミルはそうつぶやくと、かの女の唇を奪った。
 シャルロットは混乱した。どうすればいいのか、全くわからない。この場から逃げなければならないことはわかっていた。しかし、彼の腕力は強すぎ、かの女は、わなにかかった小動物のようにもがきつづけることしかできなかった。出し抜けに、スミス夫人が言っていたのは、こういう恐怖だったのだと思った。愛する男性に抱きしめられても恐いのならば、そうでない場合はどんな恐怖が待ち受けているのだろう?
「やめて!」シャルロットは息を切らしながら言った。
 ウラディーミルは耳元で何かささやいた。しかし、シャルロットには彼の激しい息づかいの中に混じった『運命』という単語しか聞き取れなかった。彼の心臓の音が聞こえてくるくらいの距離にあって、シャルロットは恐怖しか感じていなかった。次に何が来るのかわからないが、痛めつけられるのはわかっている。スミス夫人が泣きながら告白した、あの痛みがやってくる。しかし、もうどうやってもその運命から逃れられそうもない。しかも、彼が体のあちこちに手を走らせている。気持ちが悪いが、その攻撃から逃れるすべはない。そうしている間に、布が破れるような音と、ボタンが取れるような音がした。同時に冷たい空気にさらされたのを感じ、一瞬置いて、彼の手が胸に触れた。シャルロットは、彼を突き飛ばそうとした。彼は、かの女の虚しい抵抗に対し、両手の手首を持ったままその手を頭の上に固定した。
「おねがい、やめて・・・」シャルロットの抗議の声は、もう弱々しいものになっていた。
「ロッティ・・・」ウラディーミルは、うめきながらかの女の名を呼んだ。そして、固定した手を左手だけで押さえ込み、自由になった右手を動かし始めた。かの女は、おぞましい感覚に耐えきれず、逃れようと体を動かし続けた。どうやっても、彼の束縛から逃れることはできない。とうとう、かの女の力が尽きた。
 シャルロットはぎゅっと目を閉じた。もう、何が起こっているのかわからなくなっていた。自分に起こっていること、起ころうとしていることを考えまいとした。これは、悪い夢だ。
 かの女は、悲鳴を彼の唇で封じ込まれたあとは、もう何も考えられなかった。それからあとのことは、何も覚えていない。彼がうめき声を上げながらかの女の体の上に倒れてくるまでのことは。
 彼の重みを感じ、シャルロットは意識を取り戻した。かの女は、体をねじるようにしながら、彼の体の下から出ようとした。息を弾ませていた彼は、あっさりとかの女の体をはなした。かの女は、彼から離れるとゆっくりと起きあがった。
「・・・どこへ行くの・・・?」彼が訊ねた。
「シャワーを浴びてくるわ」そう言ったとたん、シャルロットの目から初めて涙がこぼれ落ちた。
「すまない」彼は小さな声で言った。そして、彼は目を閉じた。
 シャルロットはシャワールームに駆け込み、中から鍵をかけて一人閉じこもった。そして、体を丁寧に洗った。そんなことをしても、体がきれいになるとは思えなかったが、彼が触ったところは全部石けんでこすった。涙が止まらなかった。
 しばらくしてシャワールームから出たとき、ウラディーミルは疲れ果てて眠っていた。
 シャルロットは、着替えたあと、荷物をまとめてホテルから去った。
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