FC2ブログ

年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第7章

第125回

 シャロンは、かつての恋人に会いに行こうとしたとき、偶然、パリに行く口実が見つかった。
 彼の父親が、突然手紙をよこしたのである。
 その内容を見て、シャロンはびっくりした。彼は、ステラに相談しなければならない、と思った。
 シャロンは、その手紙を持ってステラの部屋を訪ねた。
「・・・実は、相談があるんだけど、いいかな・・・?」
 ステラは、彼の真剣な口調にうなずき、真面目な顔で彼を見つめた。
 彼が話し出したのは、ステラにとって意外な話であった。
 それは、彼の父親の<隠し子>の話であった。
 スタニスラス=ド=ルージュヴィル公爵には、使用人の女性との間に娘が一人いた。その娘のことは、屋敷内でも公然の秘密であった。ただし、シャロンを含む彼の子どもたちは、その女性を妹とはみなしていなかった。より正確に言えば、その事実を知らなかったことになっていたのである。その女性が、4歳になる娘を残して急死してしまった。彼の父親は、困り果ててシャロンに相談したのである。
「・・・で、きみさえよかったら、その女の子をうちで引き取りたいと思うんだけど、どうだろう?」シャロンはそう提案してみた。「子どもは、フィルのいとこだし、フィルにも同年代の友達がいてもいいんじゃないかと思うんだけど・・・」
 ステラは、首をかしげてシャロンを見た。「その子、何という名前なの?」
「マドレーヌ=フェランだそうだ」シャロンが答えた。
「その女の子は、ほかに身寄りがないの?」ステラが訊ねた。
「子どもの父親は、やはり父の屋敷の使用人だったけど、3年前に病死したそうだ。父は、自分の娘がかわいそうだったので、内緒でかの女たちのめんどうを見ていたようなんだけど・・・さすがに、母親がいない子どもの面倒を見るのは、彼には難しいと言うんだ・・・」
 そう言うと、シャロンは言いづらそうな口調になった。
「きみにとって、女の子の存在は・・・つらい思い出に結びつきそうで・・・こんなことを頼むのは間違いかも知れない・・・とは思う。でも・・・」
 ステラは優しい口調で言った。「でも、子どもに罪はない・・・そうよね?」
 シャロンは黙ってうなずいた。
「子どもは、似ているのかしら・・・フィルに?」ステラは、<クリスに>と一瞬言いかけて、あわてて息子の名前に言い換えた。シャロンにもそれがわかった。
「・・・さあ・・・会ったことがないんでね・・・」
「似ているといいわね。そうしたら、フィルと双子みたい・・・」ステラはほほえんだ。
 かの女は、夫の手を握りしめた。
「お願い、子どもを育てさせて。今度は、娘を大切にするわ・・・そうよ、わたしの娘なのよ・・・」
「ありがとう、ステラ。わたしがお礼を言うのもおかしな話だけど・・・でも、ありがとう・・・」
 彼は、父親に承諾の手紙を出した。
 こうして、彼はパリへ出かけていった。
 ステラは、子どもを連れに行くのだと思っているはずだ。
 彼は、妻に小さな秘密を作ったことに心が痛んだ。しかし、それでも彼は自分の過去に対面したかったのである。
関連記事
 関連カテゴリ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第一部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第二部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第三部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 SIDE-B
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 外伝
総もくじ 3kaku_s_L.png 更新
総もくじ 3kaku_s_L.png 日記
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第一部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第二部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第三部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 SIDE-B
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 外伝
もくじ  3kaku_s_L.png データベース
もくじ  3kaku_s_L.png 設定
総もくじ 3kaku_s_L.png 更新
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
総もくじ 3kaku_s_L.png 日記
  ↑記事冒頭へ  
*Edit
  ↑記事冒頭へ