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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第三部」
第80章

第1461回

「わたしが何をしても・・・?」シャルロットはいたずらっぽく訊ねた。
 フリーデリックはうめいてからうなずいた。「ああ。・・・だが、誓いを破らせることはしないでくれるよね?」
 そう言うと、彼はかの女の口に自分の唇を優しくつけた。そのキスは次第に深くなり、シャルロットはからだから力が抜けていくように感じ、彼にしがみついた。彼はかの女を抱きしめたまま床に押し倒し、さらにキスを続けた。
 シャルロットは力なく横たわり、目を閉じてうっとりとした表情をしていた。フリーデリックは、今のシャルロットだったら、そのまま最後まで自分に身を任せるだろうと思った。かの女が欲しかった。しかし、彼は唇を無理に引き離し、かの女を見下ろした。だめだ。自分は、誓いを破ることはできない。あの男性には、恩義がある。何があっても彼を失望させることはできない。自分は、かの女を無傷のまま彼に渡さなければならない。だが・・・。
 フリーデリックは短くうめくと、薄いドレスを押し上げている二つのつぼみを服の上から吸い、優しく甘がみした。
 シャルロットはあっと短い叫び声を上げ、目を開けた。
「キスすると言っただけだ。唇に、とは言わなかった」彼は小さな声で言い訳しながら身を引き離した。
 そして、彼はシャルロットを起きあがらせ、ドレスのしわを伸ばしながら言った。
「誰か来たら、言い訳に困るだろう、そんな格好をしていたら?」
 シャルロットはいたずらっぽく笑った。「わたしは困らないけど、あなたは大変な目に遭いそうだわ」
 フリーデリックは笑った。「しばらく、唇を冷やしてからみんなと合流した方が良さそうだな。そうでなければ・・・」
《・・・いや、あの男性たちをやきもきさせてやるのも、楽しいかも知れないがな・・・》
 シャルロットは、壁にかかった鏡に顔を映し、真っ赤になった。「まあ・・・当分みんなのところには戻れないわ・・・」
 フリーデリックは、テーブルの上にあった水差しでハンカチを濡らし、かの女に差し出した。
「しばらく口にあてていなさい」
 シャルロットは素直にハンカチを受け取ると、ソファに座った。
 フリーデリックは、かの女から離れた別の椅子に座った。
 そのとき、ノックの音がして、ほとんど同時にフェリックスが顔を出した。
 フリーデリックは大声で笑った。「相変わらずだな、フェレック。ドアを開けるときは一呼吸おきたまえ」
 フェリックスはにっこり笑って答えた。「なんだ。つまらない。もしかすると面白いものが見られると思ったのだがな」
 そのとき、彼の後ろからオーギュストが飛び込んできた。「なにっ! 面白いものだと?」
 オーギュストが見たものは、ハンカチを口に当てているシャルロットと、離れたところに座っているフリーデリックの姿だった。「・・・泣いていたのか?」オーギュストは心配そうにシャルロットに訊ね、フリーデリックをにらみつけた。
「思い出話をしていた」フリーデリックが答えた。確かに嘘ではなかったが、オーギュストは不審そうな表情を浮かべた。そして、フリーデリックはフェリックスに言った。「何を期待していたんだ?」
 フェリックスはにやにやして答えた。「そうだな・・・情熱的なキスシーンとか・・・」
 シャルロットは真っ赤になって目を伏せた。
「趣味が悪いぞ」フリーデリックが言った。「そんなことを続けていると、本当にいつかそんな場面に遭遇するようになるぞ」
 そして、彼は立ちあがった。「ブローニャ、ぼくは行くよ」
「わたしは、もう少しここにいるわ。泣いていたのが知られたら、みんな、心配するわ」シャルロットはそう答えた。
 男性たちは、部屋から出て行った。
 その一分後、シャルロットは隣の部屋から何か大きな物音がするのを聞き、部屋を飛び出した。
 開いていたドアからのぞき込むと、二人の男がとっくみあいをしているのが見えた。
 シャルロットは、思わず悲鳴を上げた。かの女は持っていたハンカチでとっさに口をふさいだが、手遅れだった。
 何枚かのドアが一斉に開き、何人かの男性たちが飛び出してきた。
 シャルロットは慌ててドアを閉め、その前に立った。中にいる人たちをこれ以上苦しめたくなかったからだ。
「シャルロット」ヴァーク=ブーランジェが言った。「そこをどきなさい。何があったんだ?」
「ごめんなさい、大声を出したりして。でも、何でもないんです・・・」シャルロットは弁解する口調で言った。
 そのとき、部屋の中からもう一度大きな音がした。
 ヴァークは乱暴とも思えるくらい強くシャルロットを押しのけた。
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