年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第三部」
第83章

第1520回

 フランソワ=ジュメールは、柔術クラブの指導を終えたあとでノルベールをサント=ヴェロニック病院へ案内した。
 ローラン=ティルニーは留守だった。彼らは、コルネリウスの部屋へと通された。
「なんだ、きみか」コルネリウスはフランソワを見るなり、つまらなそうに言った。
「ご挨拶だな」フランソワは笑った。「客人は、こちらだ」
 コルネリウスは、ノルベールに挨拶した。しかし、彼はノルベールを覚えていなかった。ヴィルフランシュ大学を異例の早さで卒業し、インターンをしている彼は、また取材に来たのか、くらいの反応しか示さなかった。
「コルネリウス=ド=ヴェルクルーズです」彼は握手をするために、ノルベールに手を差し出した。
「ノルベール=ジラールです」ノルベールは本名を名乗った。「今日は、あなたにいくつかお聞きしたいことがありまして・・・」
「何でしょう?」
「単刀直入に伺います」ノルベールが言った。「どうして、シャルロット=ド=サン=メランを諦めたのですか?」
 コルネリウスは眉を上げた。「諦めた? ぼくが?」
 コルネリウスは一歩前進した。「いつ、ぼくがかの女を諦めたとおっしゃるんですか・・・?」
「では、諦めておられない?」
 フランソワは、驚きを隠せない表情でノルベールを見つめた。
「でも、かの女は、すでに結婚しましたよね」ノルベールが言った。
「ほんとか?」フランソワは驚いて口をはさんだ。
 コルネリウスは小さくうなずいた。「そうらしい。かの女が手紙でそう知らせてきた」
 フランソワは口の中でうなり声を上げた。「・・・誰とだ?」
「きみの元ルームメイトだ」コルネリウスが言った。「かの女は、フランショーム一族ではなく、ザレスキー家の人間を選んだんだ」
 フランソワは首を振り、ノルベールの方に視線を移した。
 ノルベールはフランソワにうなずいて見せた。
「どうして、そんなことになってしまったんだ?」フランソワが友人に詰め寄った。
 コルネリウスの顔が暗くなった。「こっちが教えてもらいたいくらいだ」
「その手紙を見せて欲しい」フランソワは詰め寄った。
 コルネリウスは引き出しを開け、一番上に乗っていた手紙をフランソワに差し出した。
 フランソワが封筒から中味を取りだしているのを見ながら、コルネリウスがつぶやいた。
「これは、かの女からの手紙の中で、一番短いものだ」コルネリウスが言った。「こんな手紙一通で・・・」
 フランソワは便箋を開いた。見慣れたシャルロットの筆跡で、たった一行、こう記されていた。


ヴィトールド=ザレスキーと結婚しました。とりあえず、ご報告まで。シャルロット


 フランソワは顔を上げ、コルネリウスを見た。「なんだ、これは?」
 ノルベールも横からのぞき込み、絶句した。
「これが、長い間婚約していた相手に対する手紙か?」フランソワは憤慨したように言った。しかし、彼の怒りはすぐにコルネリウスの方に向いた。「マルフェ、かの女に何をしたんだ? プティタンジュが理由もなくこんな手紙を書くはずはない。きみがかの女に何かをしたからこそ、かの女はこんな手紙をよこしたに違いない」
 コルネリウスは苦笑した。「あいかわらず、信用がないんだな、ぼくは・・・」
「当たり前だ。ぼくは、きみよりかの女を信じる」フランソワが言った。
 コルネリウスはもう一度苦笑したあと、引き出しから別の手紙を出した。
「これを読んで欲しい」コルネリウスはフランソワにその手紙を手渡した。
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