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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第8章

第154回

 クラリスは返答に困ってますます赤くなった。
「最近、ティケットを手に入れたんでね」彼はポケットから券を二枚出した。「例のコンサートさ。<クラリス=ド=ヴェルモンの夕べ>って言うんだね、これ?」
 クラリスはびっくりして券を見た。
「知らないわ、こんなコンサート・・・」クラリスは絶句した。
 オーギュストもびっくりしたような顔をした。「じゃ、一枚あげるよ。誰と一緒に行くか決めていなかったんでね。ぜひ、ご一緒させて下さい」
 クラリスがあぜんとしていたので、オーギュストは続けた。
「作曲家と同席するコンサート、というのは、滅多にない機会ですからね」
 クラリスは首を横に振った。
「まさか、行かないつもりなの?」オーギュストは驚いた。
 クラリスは考え込んだ。「わからないわ。でも、来て欲しいのなら、彼から招待状が来ると思うわ。もし、そうでなかったら・・・来て欲しいんじゃないとすれば・・・行かない方がいいのかしら・・・。わからないわ」
 オーギュストは何も言えずにかの女を見つめていた。
「・・・わからない。彼は、どういうつもりなのかしら・・・?」クラリスはつぶやいた。
「わかるように説明して」オーギュストはついにそう言った。
 クラリスは、まだ混乱していて、順序立てて説明することはできなかった。
「この前、ロビンと別れたとき、彼が言ったの。『わたしは結論を出さなくちゃならない』って。わたしは、その結論が知りたいの」
「結論?」
 クラリスは、大切な秘密を打ち明けるような真剣な口調で言った。「わたし、ザレスキー一族なの」
「ほんと?」オーギュストは驚いた。「ザレスキー一族を近くで見るのは初めてだ」
「まあ、わたし、見せ物じゃないわ!」
 それを聞いて、オーギュストの顔から緊張が解けた。彼は笑い出した。
「・・・わかった。あなたたちは、<ザレスキー=フランショーム戦争>のさなかにいたわけだ!」オーギュストは目を輝かせた。「つまり、彼の結論というのは・・・」
 そのとき、シャインが二人の後ろから声をかけた。
「やあ、クラリス!」彼は、二人の方へ歩いてこようとした。
「・・・どうしたの、飲み過ぎだよ」オーギュストは、足下がふらふらしているシャインに声をかけた。
「飲んでいないよ」シャインはやや不明瞭な口調で否定した。
「いや、飲み過ぎているよ」オーギュストが言った。「そこに座って。こっちから行くから」
「いいんだよ」シャインははっきりしない口調で言った。「大丈夫さ」
「よくないよ。どうしてそんなになるまで飲んだの? マリー=クレールのこと?」
 クラリスは、立ちあがった。
「座って、クラリス。話がある」シャインが引き留めた。
「大切な話?」
 シャインは答えなかった。彼はためらう様子を見せた。
 クラリスはそれに気づいたが、無視することにした。「じゃ、別の日にうかがいます。あなたは、酔っています」
「わたしは、酔っていない」シャインが答えた。
 クラリスは肩をすくめた。「あなたは、自分が何を言っているか、わかっていない」
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