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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第三部」
第87章

第1587回

「どちらにしても、きみは彼に、いずれは謝罪しようとするはずだし、彼は和解を拒むだろう」
 シャルロットもそれ以外の展開はないと思った。コルネリウスとの再会の時、ロジェがいてくれたら、コルネリウスの気持ちが少しは和らぐのだろうが・・・。しかし、自分たちが再会するのは、もっと後のことになるだろう・・・シャルロットは漠然とそう考えた。たとえば自分か彼が死ぬことが知らされる後になるまで、彼は動こうとはしないだろう。死ぬ間際のシャルロットの謝罪を受け入れるためにコルネリウスがやってくるか、あるいはその逆で、死に際しているコルネリウスがシャルロットを枕元に呼び寄せるか、その二択しかあり得ないように思えた。
 ヴィトールドはふっとため息をついた。
「・・・もし、ぼくが死んだら、きみはコルネリウスと再婚したいと思っているか?」
 シャルロットはびっくりしてヴィトールドを見つめた。
「仮に、だよ」ヴィトールドが言った。彼はふうっと長い息を吐いてから言った。「・・・ロジェがこんなことになった。ぼくも遺言状を残したいと思うんだ。ぼくだって、不死身じゃないからね。それで、<もし、ぼくが死んだ後>きみがどうするつもりなのか・・・と思っただけだ。ザレスキー家当主であるぼくとしては、きみがフランショーム家の誰かに嫁いでくれることを願う立場にあるわけだが、当事者のきみの意見を聞いておきたかった。このような場には不似合いの話題ではあるが」
 シャルロットは首を振った。「ドンニィがわたしを許すはずはないわ。あなたと結婚するとき、わたしはあえて彼の心を修復不能なまでに砕いたから。それに、わたしは、誰とも再婚するつもりはありません」
「それでは、選択肢は二つだな。一つは、きみのおなかの中にいる子どもが女の子だった場合、その子とロベール=フランショームを婚約させる」
 その言葉を聞き、シャルロットは驚いた。妊娠の可能性・・・?
 ここ数ヶ月、シャルロットの身の回りには色々なことが起こりすぎた。自分自身の身体のことを考える余裕はなかった。そう言われてみれば、ずっと月のものもなかった。そうだ、きっと自分は身ごもっている。それにしても、どうしてヴィトールドは今まで何も言ってくれなかったのだろう、気づいていたのだったら・・・?
 ヴィトールドは、シャルロットのその表情を見て驚いた。何ということだ、本当にかの女は自分の体調の変化に気づいていなかったのか? まさか。かの女は、これまで3回も出産しているんだぞ。そんなことがありうるのか? 今回に限っていつまでもリオネルに診察を依頼しなかったのは、わざとではなく、本当に気づいていなかったからだったというのか?
 ヴィトールドは、かの女が本当に何も気づいていなかったと確信した。そんなことだったら、もっと早く忠告してあげたのに。他の人のことは後回しでもいいから、生まれてくる子どものために、自分の身体をもっと大切にしろと言ってあげたのに!
 ヴィトールドの口調は少しだけ優しくなった。「・・・もしそうでなかった場合は、現在生存するザレスキー一族ただ一人の女の子に、フランショーム一族の誰かと婚約させること」
 シャルロットは否定した。「一昨年生まれたデルフィーヌ=ド=レニーヌのことね。父親のミシェル=ド=レニーヌは、子どもが生まれてすぐ、婚約者を決めてしまっているわ。あなただって、彼らの婚約を祝福してしまったはずよ。もう手遅れよ」
 現存するザレスキー一族の人間は、ヴィトールドとシャルロット(そしてその子どもたち)を除くと、スティーヴン=ビショップ=テニスン(アレクサンドル=ド=ルージュヴィル)、ヴィンセント=ストックマン・スクロヴァチェフスキーとその二人の息子たち、ミシェル=ド=レニーヌとその娘デルフィーヌ、そしてミシェルの弟ラザールで全部である。娘が生まれたとき、ミシェルが娘のフィアンセに一番ふさわしいと考えたのは、またいとこのスティーヴンが養子にしていたルネ=クリスティアン=ダルディだった。スティーヴンが結婚しない限り、ルネ=クリスティアンはスティーヴンの後継者となる可能性がある。そうでなくても、ルネ=クリスティアン自身が伯爵の息子である。彼は、ヴィトールドが娘の結婚相手に介入する前に先手を打ったのである。当時ヴィトールドも、自分に娘が生まれると期待していたので、彼らの婚約を祝福したのであった。
「・・・では、第三の選択肢としては、やはりきみ自身が再婚して女の子を産むしかない」
 シャルロットは首を振った。「再婚はいやよ」
「フランショーム家の人間と結婚するはずのザレスキー一族の女の子が必要なんだ。もし、その子がまた男の子だったら、きみが再婚するしか道はないんだよ。ただ、きみ自身がザレスキー一族だから、再婚相手は誰であっても問題はない。一応聞くが、希望する再婚相手はいるか?」ヴィトールドが訊ねた。
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