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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第10章

第173回

「しかし、悪いのは彼の方だ。彼だって、それは知ってるよ」バローが言った。
「その話は、もう、やめて!」
「ヘルムート=シャインは、有名な女嫌いだ。その彼を、あそこまで追いつめたのはあなただよ、クラリス」
「わたしが、追いつめたんですって!」
「彼には、あのとき、ああするしかなかった、ってことさ。彼は、プランセスではなくて、あなたにひかれてしまった。彼には、もう、あなたのことしか頭になかった。プランセスが彼を愛しているということは、あのときの彼には関係なかったんだ。より正確に言えば、彼はそれに気づいていなかったんだけど。彼は、あなたを探した。そして、やっと見つかったあなたに、彼は愛の告白をした。ただ、そのタイミングが最低だったというわけだ」
「そんなに単純な話じゃないわ」
「あなたにとってはね。しかし、彼にとってはそうなんだ。彼は、女の子の口説きかたどころか、まともな話し方さえ知らなかったんじゃないかな」
「・・・あなた、ヘルムートに頼まれたの?」
「全然。でも、ぼくは彼が好きだ。だから、何とかしてあげたいと思うのさ」
 クラリスは思わずバローをにらみつけた。
「でも、わたしには好きな人がいるわ」
「ロベール=フランショームかい?」
 クラリスは驚いた。「どうして、それを?」
「ヘルムートから聞いた。彼は、それを、プランセスが残した日記から知ったそうだ」
 クラリスは何も言わずにバローを見つめた。
「ロビン=カレヴィじゃ、あなたにとっては少々役不足だと思わないかい?・・・いや、あなたは、彼にはもったいなさ過ぎる」
「どうして?」
「じゃ、あなたは、彼と一緒にいれば幸せになると思う?」
「彼って、ロビーのこと?・・・いいえ、思わないわ」クラリスは正直に答えた。
「じゃ、幸せにしてくれる人を捜すべきだ」
「ヘルムートがそうだって言うの?」
「そうは言わないよ、クラリス。ただ、ロビンよりはいいと思うだけだ」
「・・・そうかしら?」
「少なくても、ヘルムートには、行動力がある。彼は、あなたにプロポーズしたくて、あなたを探し続けた」バローが言った。「恋をしている男性は、相手の女性のためになら何でもする。ああいう行動力の持ち主なら、きっとあなたを幸せにできる」
 クラリスは首を横に振った。かの女はヘルムートを愛してはいない。それに、あんなことがあった後で、ヘルムートを愛せるだろうか? たとえ天国のプランセスが許しても、かの女の遺族たちは---いや友人たちだって---そんなことを許してはくれないだろう。
「だけど、ロビンは? 彼は、あなたを探してプロポーズしてくれたことがある? 彼には、そこまでの覚悟ができていないんじゃないの?」
 クラリスはバローの言うとおりかも知れないと思った。
「ぼくの話はそれだけ。おやすみなさい」バローは中に戻っていった。
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