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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第三部」
第95章

第1746回

 夜が明けて、男性たちは一度家に戻ることにした。子どもたちを安心させて欲しい、とユーリアが頼んだからである。自分はもう少しここに残る。シャルロットがここにいることを誰にも---フリーデマン氏やボレスワフスキーも含めて話さないで欲しい、と念を押してからユーリアは病室に戻った。
「ユーリ・・・」シャルロットは弱々しい声でそう言うと、目に涙を浮かべた。
「目が覚めたのね?」ユーリアはうれしそうにベッドに駆け寄った。
「目が・・・覚めた・・・?」シャルロットはそう言うと、ゆっくりと頭を動かし、目を閉じた。「・・・めまいがする・・・」
「ここは病院よ。たった今まで、ライとルーディもここにいたのよ」
 シャルロットは目を開け、驚いた顔をしたが、何も言わなかった。
「風邪をこじらせた、とリシュジンスキー医師はおっしゃったわ。検査をして、異常がないようだったら退院しても大丈夫だ、とは言っていたんだけど・・・」ユーリアはそこで一度言葉を切った。そして、シャルロットの表情を見て続けた。「家に戻りたくはないわよね?」
 シャルロットはおびえたようにユーリアを見つめた。
「もちろん、家に帰すつもりはないわ。でも、わたしのところも無理ね。ホテルを探すのも難しいわね・・・」ユーリアは続けた。
 そして、いきなり爆弾発言をした。
「フリーデマン氏が、必死であなたを捜し回っているわ。彼の包囲網に入りたくはないでしょう?」
 シャルロットは目を見開いた。
「それとも、彼と直接対決する? その体では無理よね」
 シャルロットはかすれた声を出した。「彼と対決する・・・?」
「悪いけど、話は全部聞いてしまったわ、ライからね」
 それを聞くと、シャルロットはわっと泣き出した。
 ユーリアはベッドのそばにいすを持ってきて、そこに座ると黙ってシャルロットの頭をなでた。まるで自分の娘にするような優しい動作に、シャルロットは次第に落ち着いてきた。
「フリーツェックと話をしなくてはならないわ。でも、彼と二人きりにはなりたくない・・・」
 ユーリアは頷いた。「彼が怖いの・・・?」
「いいえ、自分が・・・」シャルロットはそう言うと毛布を口の所まで引き上げた。そして、泣き出しそうになりながら言った。「わたし、自分が、こんなに・・・その・・・自分が信じられない・・・」
 ユーリアは目を丸くし、一瞬おいてシャルロットの頭をなでた。
「まさか、彼が好きになった、とか?」
「いいえ、そうじゃない」シャルロットは涙混じりに言った。「彼のことは、ずっと兄のように思っていたの。恋愛の対象だと思ったことは一度もないわ。彼の方はそうでないことは知っていたけど、まさか、あんなことまでするとは・・・」
「フリーデマン氏に無理矢理迫られたんですってね」ユーリアが言った。「彼がライにそう告白したそうよ」
 シャルロットは一瞬泣くのをやめてユーリアを見つめた。「・・・ライは、そこまで知っていたの?」
「ええ。どうしてこんなになるまで帰ってこなかったんだ?って、彼は苦しんでいたわ。自分なら、いつだってあなたを待っているのに、って・・・」
 シャルロットはすすり泣いた。
「女性関係が派手な彼が、あなたを落とせなかったなんて」ユーリアは優しく言った。「あなたは、彼が誘惑し損ねた最初の女性に間違いないわ」
 シャルロットは首を横に振った。
「まさか、彼を誘惑しただなんて言わないわよね?」
「彼は、わたしに、そう言ったわ」シャルロットは涙混じりに言った。「わたしが、そう望んだんだろう、って・・・」
 ユーリアは唖然としてシャルロットを見つめた。確かにシャルロットには、男女の機敏がわからないと思える所はたくさんある。しかし、これほどとは・・・。
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