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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第10章

第182回

 エマニュエルはほほえんだ。「それに、知らないところで目を覚ますのも、ね」
 クラリスは赤くなった。「ここは、まったく知らないところではないわ」
「そうかも知れませんがね」エマニュエルは穏やかに言った。「でも、あの状況だったら、あなたは誰の後にでもついて行ってしまったでしょうね。そうしたら、あなたは、本当に全然知らないところで目を覚ましていたでしょうね」
「・・・わたし、そんなに酔っていた・・・?」
「ええ、そう見えました」彼は真面目な口調で答えた。
 クラリスは真っ赤になった。「わたし・・・本当に、何も覚えていないの・・・」
「大丈夫、何もありませんでしたからね」彼はほほえんだ。「・・・さあ、本当にお昼はいらないんですか?」
 クラリスはほほえんだ。
「お昼だけではなく、夕食も一緒にしてくれるともっといいんですが。それに、明日の朝もね」
 クラリスは驚いて彼を見た。「エマニュエル、わたし、そんなに長くここにはいられないわ。それに・・・わかっているの、それは、プロポーズのせりふだわ」
「プロポーズしては、いけない?」
「わたし、ロベール=フランショームと別れたばかりなのよ。そんなに簡単に恋人を変えることは、正しいことかしら?」
「もちろん、正しいことですよ。あなたがわたしを愛してくれるというのなら、どんなことでも正しいことです」
「でも、わたしは、ロビンを愛しています」クラリスが答えた。
「だけど、あなたは、彼と別れました」エマニュエルはほほえんだ。「わたしは、以前に言いました。『もし、ロビーと別れるようなことがあったら、わたしを思い出して下さい。いつまででも待っています』と」
 クラリスは考え込んだ。
「わたしは、89年に初めて会って以来、ずっとあなたを見てきました。いつか、あなたがわたしのほうを見てくれる日が来ると信じて・・・。でも、あなたは、彼に夢中になってしまった。それでも、わたしは、あなたを待ちました。彼には、あなたを幸せにすることができない。あなたは、いずれはそれに気がつくと思っていたからです。そして、そのとおりになりました・・・」エマニュエルが言った。「愛しています。これからは、ずっと一緒にいましょう、クラリス」
 クラリスはうなずいた。「ええ、死ぬまで、一緒に」
 エマニュエルは驚いたようにクラリスを見つめた。「・・・クラリス、本気なの?」
「本気じゃいけない? じゃ、本気じゃないわ」
「クラリス・・・お願いだから、わたしをからかうのはやめて下さい。わたしは本気なんです」エマニュエルが言った。彼は勢い込んでかの女の両肩に手を置いた。「愛しています。あなたはどうなの? 真面目に答えて下さい、クラリス」
 クラリスは、彼の目を見た。その目があまりにも真剣だったのを見て、思わず目をそらした。「時間が欲しい・・・わたしは、まだ彼のことが忘れられないの・・・」
「わたしが、彼のことを忘れさせてみせます。あなたを、きっと幸せにしてみせます。あなたを愛しています・・・」エマニュエルはかすれた声で言った。「・・・『もし、ロビーと別れるようなことがあったら、わたしを思い出して下さい。いつまででも待っていますから』わたしは、以前、あなたにそう言いました。あなたは、『・・・いつまでも? そんなこと、ありうるのかしら?』と答えた」
 彼はクラリスの顔を自分の方に向けた。そして、そのブルーの目をのぞき込んだ。
「・・・そう、あなたが言うとおりだった。いつまでも、なんてあり得ない。もう、じゅうぶん過ぎるくらい待った。これ以上、待てないよ・・・」
 彼はそう言うと、かの女をそのまま自分の方に引き寄せ、もう決して離さないと言わんばかりに強く抱きしめた。
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