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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第三部」
第103章

第1894回

 その言葉を聞き、マウゴジャータとギュンターは考え込んだ。
 ずっと黙っていたモジェレフスキーが口を開いた。
「カロル氏に必要なのは、孫のブレインであって、ナンバーツーになるような人材ではないと思う。まあ、どちらにしても、タデックにそれが務まるかどうかは怪しいものだが」
 マウゴジャータは頷いた。「確かに。タデックがそれほどの人物だとは思えないわ。そもそも、彼はそんなものとは無縁の人物だし」
 ギュンターも言った。
「わたしもそう思う。不思議なのはカロル=ルジツキーの行動の方だ。そもそも、彼にボレスワフスキーさんは必要ない」
 3人はそろってシャルロットの方を見たが、シャルロットは黙って考え込んでいた。
「それに、カジーミェシ氏が自殺する理由もわからない。背後にカロル氏の存在があったのは間違いないが」ギュンターはそう続けた。「そもそも、本当に自殺だったかどうかもわからないんだ」
「そうね、不思議なことだらけだわ」マウゴジャータが言った。「カロル氏の話だと、あの交通事故は、単なる事故ではなかったということだったわね。でも、カロル氏が言うことが本当なら、なぜサンドウィッチの皮の一つがカジーミェシ氏だったのかしら? ルジツキー家くらいの金持ちなら、こんな事件、下っ端にやらせればいいと思わない?」
 ギュンターは、ちいさな声で、あっ、と言った。
「わかった。もしかすると、この事件、われわれが思っていたものとは違うものだったのかもしれない」ギュンターが言った。「チャルトルィスキー家の運転手が狙ったのは、ボレスワフスキーさんたちの車ではなく、後続のカジーミェシ氏の車だったんだ!」
 マウゴジャータは即座に否定した。
「まさか。だって、ルジツキーさんは、タデックたちを脅そうとした、と証言したそうよ」
「そもそも、事故を起こした運転手は、もともとルジツキー家の使用人だった」ギュンターは左手に持っていた手帳を開きながら言った。「ルジツキー社には、有名な柔術クラブチームがある。もともとは、ルジツキー氏本人のボディーガード部隊だったが、社会人チームとして全国大会に出るくらいの大所帯になってしまった。結局、チームは縮小されることになったらしい。そのうち何人かは、チャルトルィスキー家のボディーガードにおさまったそうだ。あの運転手は、そのうちの一人だった。つまり、事故を起こした運転手は、事故の結果、自分だけは生き残れると思っていたはずだし、げんに、彼が一番軽傷だ。彼は事故を起こす前から、自分がさほど重い罪には問われないはずだと知っていたはずだ。その証拠に、彼が、道路にいるはずがなかった子猫を避けようとしたという目撃者が二人も現れた。最初に事故を目撃したと名乗り出た老婦人は、あの二人を現場で見た記憶がないといっているのに、逆に二人の方があの現場に老婦人がいなかったと証言した。おかしいよね?」
 モジェレフスキーはうーんと言って黙り込んだ。
「組織をあげてあの運転手をかばおうとしているのに、誰もカジーミェシ氏を弁護しない。何か変だと思っていたんだけど」ギュンターは何度も頷きながら言った。「そうだ、ルジツキーは、事故を装って息子を殺そうとしたんだ。彼にとって息子が邪魔になったからだ。モジェレフスカさんの推測が正しければ、息子に愛想を尽かした・・・というところだろうな。でも、どうしてこのタイミングだったのだろう?」
「道路に雪があるからじゃないかしら?」マウゴジャータは不真面目に答えた。「他の季節では、<運転を誤る>のは、冬場よりは難しいわ。雪で滑ったというのは、この季節でしか考えられないし、あたりが暗くなる時間も比較的早いし」
 モジェレフスキーはにやりとした。
「目撃者は、一人でも少ない方が望ましいわ」マウゴジャータはそう締めくくった。
「それにしたって、自分の息子さえ邪魔にするとはね」ギュンターはため息をついた。「親というのは、どんな子どももかわいいものだと思っていたし、できが悪い子ほどかわいいと言うし・・・」
 マウゴジャータはがっかりしたような表情になった。
「残念ね。いい推理だと思ったんだけど」
 モジェレフスキーは口を開いた。
「いや、あながち間違っているとも言えないと思うな。遺書がなかったんだから、自殺とは言い切れないわけだしね」
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