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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第三部」
第104章

第1907回

 駅から外に出たところに、ユリアンスキーが立っていた。シャルロットは、彼が迎えに来てくれたのだと思ったが、それにしては彼の様子がおかしいことに気がついた。おまけに、彼の隣には、硬い表情をしたフリーデマンが立っている。どうみても、何かあったとしか思えない情景だ。
「・・・ユリアンスキーさん? 迎えに来てくれたの?」シャルロットは、執事に声をかけた。「それにしては、顔色が悪いわ。どこか具合でも悪いの?」
「わたくしなら、どこも悪くはありません。ただ、一つだけ確認したいことがあったんですが」ユリアンスキーは、そう言うと、シャルロットの周りを確認し、おそるおそる訊ねた。「ヴィクトールさまは、ご一緒ではなかったのですか?」
「いいえ」シャルロットは首をかしげた。「夕べ会ったきりだけど?」
「・・・実は、夕べから、ヴィクトールさまの姿が見えないんです」
 シャルロットの顔色がさっと変わった。
「そして、フリーディの姿もない」ユリアンスキーの後ろで、同じように青ざめた顔をしたフリーデマンが口を出した。「彼を見なかったか?」
「いいえ、先日、病院で別れたきり・・・」シャルロットはそう言うと、口をつぐんだ。そのかの女の前に、ユリアンスキーが四つ折りの紙を出した。
 シャルロットはその紙を開いてさっと目を通し、驚いたように二人を見た。
「家出?」
「どうやら、これが置き手紙のようだ」フリーデマンが言った。「心当たりは全部探した。心配をかけたくなかったけど、あとは、ここしか考えられなくて・・・」
 シャルロットは小さく頷いた。「・・・わかったわ。わたしも心当たりを探してみる」
 そして、後ろに立っていた3人に言った。
「うちの息子と、彼の息子さんが家出を決行したみたいなの。置き手紙を残して」
 一同、驚いたような表情をした。
「そもそも、二人は知り合いだったのか?」フリーデマンが訊ねた。
 シャルロットは首をかしげながら答えた。「わからないわ。一度会ったきりだとばかり思っていたんだけど」
「おそらく、そのときが初対面だったはずです」ユリアンスキーが言った。「フィッシャーさまを案内してきた門番の話だと、お二人は、門の所であったのが最初だったのだとか・・・」
「そのあとは、一度もいらっしゃってはいないのよね?」
「ええ」ユリアンスキーは答えた。
「それで、どうやって二人は再会したのかしら? どうしてその二人がそろって家出をしなくちゃならなかったの?」
 ユリアンスキーは少しためらってから答えた。
「・・・おそらく、彼らは、奥さまがフリーデマンさまをお嫌いなのがお気に召さなかったのかと・・・」
 シャルロットは心の中で付け加えた。《最後に会ったとき、フリーディはわたしのことを怒っていた。それも、きっと関係があるに違いない》。
 それで、シャルロットはフリーデマンに訊ねてみた。
「家出する前、フリーディに変わった様子はなかった?」
 フリーデマンは首をひねった。「これといった心当たりはないな。今思うと、ちょっと元気がなかったかもしれないが、気にとめるほどではなかった。あいつは、最近、ぼんやりしていることが多かったし」
 そして、こう付け加えた。「だが、彼が行きそうな場所と言ったら、あなたの家以外には心当たりが全くない。彼は、学校にも行っていなかったし、ワルシャワで友達と言えるような人もいない。同年代の友達でもできればと思って、教会の聖歌隊にでも入れば、と誘ってみたが、反応はいまいちだったし・・・」
 彼はぱっと顔を上げた。「教会? そうか、教会かもしれない。彼には、他に知り合いはいない」
 シャルロットは怪訝そうに彼を見た。そして、早足で歩き出したフリーデマンの後を追った。
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