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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第三部」
第104章

第1910回

「でも、あなたがそう言うのなら、あなたをヴィクトール=コヴァルスキーと呼びましょう。物心ついたときから、ずっとそう呼ばれ続けてきているし、学校でもその名前で通っているのは間違いないんだし」シャルロットは穏やかに言った。「いつか、あなたにもヴィトールドの話をしてあげましょう。あなたの父親は立派な人でした。でも、話を戻しましょう。あなたがたの家出の話に」
 ヴィクトールは頷いた。
「そうですね。本質的な話に戻った方が良さそうです。先日、わたしは、フィッシャーさんから手紙をもらいました」
 ジークフリートはヴィクトールの方を向いた。「そんな他人行儀な話し方をするなよ。きみたちは親子なんだし、ぼくたちは友達だと思っているんだが」
 ヴィクトールはジークフリートに優しい笑みを向けた。そして、司祭に言った。
「もっとくだけた話し方をしてもかまいませんか?」
「わたしのことは、気にしなくてもかまわないよ。ただ、喧嘩口調で話をしないで欲しいと言っただけだ」
「わかりました」ヴィクトールは司祭に頭を下げた。
 そして、ヴィクトールは普段の口調で言い直した。
「ぼくは、フリーディから手紙をもらいました。ぼくたちは、ときどき短い手紙をやりとりするようになっていました。ぼくは学校に通っていたし、彼は家で勉強していましたので、ぼくは彼の家に手紙を出し、彼が出してくれた手紙を週末に読んで返事を書く・・・という繰り返しで、手紙のやりとりを3~4回行いました」ヴィクトールが話し出した。「その手紙を読んでいるうちに、ぼくは、疑問を持つようになったのです。どうして母上は、ボレスワフスキーさんと再婚しようと思っているのだろうか? もしかして、母上には彼ではなくフリーデマンさんの方がふさわしいのではないだろうか、と」
 シャルロットは目をぱちくりさせてから、ヴィクトールに言った。
「どうしてそう思ったのかしら?」
「ぼくは、ボレスワフスキーさんともフリーデマンさんとも一度しかお目にかかったことはありません。いいえ、フリーデマンさんとは、これで二度目ですね」
「・・・初対面だと思うが?」フリーデマンはちいさな声で言った。
「あなたにとってはそうだと思いますが、ぼくには二度目なんです。一度目は、門の所で見ました。あなたが、母のためにバラの花束を持ってきてくださったときに」
 それを聞くと、フリーデマンの顔が一気にぱっと赤くなった。
「直感的に、あなたは立派な紳士だと思いました。あなたのような男性だったら、さぞ女性に人気があるだろうと。フリーディの話を聞いて、その確信が深まりました。ですから、はじめは、できればあなたには母には近づいて欲しくないと思いました」ヴィクトールは淡々と話した。「失礼ながら、あなたのことを調べさせていただきました。ところが、調べれば調べるほど、母にとってはいい材料しか出てこないのです。あなたは、幼い頃に母と出会って以来、一度も他の女性には目を向けなかった・・・」
「・・・それは、過大評価だと思うわ」シャルロットが口をはさんだ。
 ヴィクトールはその抗議を無視した。「彼を知るどんな人に聞いても、答えは同じだった。『フリーツェックは、初恋の女性をずっと愛し続けている。どんな女性も、かの女の代わりにはなれないんだ』と。そこまで深い愛情を持っている相手なら・・・」
「それならば、ボレスワフスキーさんも同じだわ。彼だって、初めて会ったときから・・・」シャルロットがもう一度遮った。
「パニ=ザレスカ」司祭がたまりかねて口を出した。「まず、息子さんの話をよく聞きなさい」
 シャルロットは下を向いた。「申し訳ありません、神父さま。それでは、話を続けて、ヴィクトゥシ」
 ヴィクトールはむっとした。母親が自分を<ヴィクトゥシ>と呼ぶときは、機嫌が悪いということを知っていたからだ。
「続けます。・・・フリーデマンさんは、初恋の女性をずっと愛し続けている。同じ男性として、そういうところに好感が持てました。直接お話をしたことはなかったのですが、彼が誠実な男性だと言うことは、見ればわかります。どういうわけか、ボレスワフスキーさんに対しては、そういう感情が持てなかったんです。どうしてなのだろう、とぼくはぼくなりにずっと考えてきました」ヴィクトールは真剣な表情になった。その表情は、初めて会った頃のヴィトールドを思わせるものだった。シャルロットは、話の内容よりも、息子の表情に気をとられていた。そうだ、あのときの彼と、今のヴィクトールは同じ年齢だった。
 母親がぼんやりとしていると思ったヴィクトールは、突然質問をぶつけた。
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