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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第12章

第206回

 クラリスとエマニュエルの結婚式が終わって、アレクサンドリーヌとジュヌヴィエーヴ、そしてその配偶者たちは同じ列車でスイスに向かっていた。行くときには別々にパリに向かった彼らだったが、帰りの列車は同じコンパルティマンを取った。ジュヌヴィエーヴは、妹のアレクサンドリーヌと話がしたいからといったが、実のところ、長い時間夫と二人きりになる勇気がなかったからであった。
 クラリスたちは知らなかったが、ジュヌヴィエーヴとアルトゥールの結婚生活は、ほとんど最悪な状態になりつつあった。そして、そのごたごたにアレクサンドリーヌとルイ=フィリップは巻き込まれていた。
 話の発端は、1887年にさかのぼる。
 ルイ=フィリップ=ド=ルージュヴィルは、母親を亡くした直後、全寮制のパリの学校に編入する。その同級生となったのが、3つ年上のアルトゥール=ド=ヴェルクルーズであった。アルトゥールも4つ年上の同級生と一緒に勉強していたくらいの秀才であったが、10歳で入学してきたルイ=フィリップには驚かされたものである。
 彼らが最初に出会ったのは、寮の自習室でのことだった。
 ルイ=フィリップは、ほかの人たちが必死で宿題に取り組んでいるそばで、古い本を読んでいた。彼は、すでに宿題は全部片づけていた。勉強を終えた後、ひとりで好きな本を読むのが、母親が亡くなってからの彼の日課の一つであった。本は、ポーランド語で書かれたものであった。
『きみが、ルイ=フィリップ=ド=ルージュヴィル? ぼくは、アルトゥール=ド=ヴェルクルーズ。ジョルジェット=フランショームの最低の息子だ』
 ルイ=フィリップは、びっくりして顔を上げた。<アルトゥール=ド=ヴェルクルーズ>という名前には聞き覚えがあった。フランショーム一族の当主ジョルジェットの三男。
 目の前に立っていた赤毛の少年は、皮肉っぽく笑いかけた。『きみは、ザレスキー一族だろう? 一目でわかったよ。しかも、きみは、どうやら音楽が苦手らしいね。違うかい?』
『・・・違わないよ・・・』ルイ=フィリップは顔をしかめた。
『じゃ、ぼくたちは、仲間だというわけだ』アルトゥールは、握手を求めるように手を差し出した。『お互い、できそこないどうし、仲良くしようよ』
 ルイ=フィリップは立ち上がり、礼儀正しく握手に応じた。
 彼らは、それ以来不思議な交際を始めた。
 二人は、医学部への進学を目指していた。それぞれ違う理由からであったが、同じ医者を志望する仲間でもあったため、二人の関係はいつの間にか友情めいたものへと発展した。
 しかし、ルイ=フィリップは、友人より一年早く大学に合格した。
 1889年、その大学にやはり飛び級で入学したすみれ色をした目の女の子がいた。この女の子が、ジュヌヴィエーヴ=ド=ティエ=ゴーロワであった。ジュヌヴィエーヴは、明るくて如才ないアルトゥールにひかれた。しかし、二人の交際は、初めのうちルイ=フィリップには内緒であった。ジュヌヴィエーヴは、二人が交際しているのを隠すため、休みになると大学の友達を何人か一緒にシャンベリーへ誘った。ルイ=フィリップも、休みの何日かはこのグループと合流した。ルイ=フィリップが、ジュヌヴィエーヴとアルトゥールの間に何かあると感づいたのは最初の夏休みにシャンベリーに行ったときのことだった。それは、彼らにとって運命的とも言える夏休みとなった。
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