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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第12章

第208回

 ルイ=フィリップは、青ざめたまま廊下を歩いていた。
 向こうから、ジュヌヴィエーヴが歩いてきた。
 彼は、思い詰めた表情のままふるえる声で言った。『・・・ヴィーヴ、ぼくは、見てしまったんだ・・・アルがほかの女性と抱き合っているのを・・・』
 それは、ジュヌヴィエーヴではなく、妹のアレクサンドリーヌだった。かの女は、知らない男性が出し抜けに変なことを口走ったのを聞き、思わず一歩下がった。
『ペグは、<かの女は、きっとぼくが告げ口をしたと軽蔑するだろうから、言うべきではない>と言った。でも、ぼくは、黙っていられなかった・・・』ルイ=フィリップは、真剣だった。
 アレクサンドリーヌは、彼のブルーの目を見つめた。何というすんだ目なのだ・・・かの女は思った。その目の中には、純粋さがあった。かの女は、彼の話の内容よりも、その真剣さに心をうたれた。
『・・・ええ、ペグの言うとおりだわ。そんなこと、ヴィーヴに言ってはいけないわ』アレクサンドリーヌが彼に言った。『あなたにとって、何もいいことはないわ。いくらあなたが言っていることが正しくても、あなたがしていることは告げ口にしかなっていない』
 ルイ=フィリップは、仰天してアレクサンドリーヌを見つめた。
『・・・わたしがヴィーヴでなくて、本当によかったわね』アレクサンドリーヌが言った。
 彼はまだ何も言えなかった。
『わたしは、ヴィーヴの双子の妹のアレクサンドリーヌです』アレクサンドリーヌは恥ずかしそうに自己紹介した。『あなたは、ヴィーヴのお友達なのね?』
 彼は、ちょっと赤くなった。『ええ。同じ大学の友人で、ルイ=フィリップ=ド=ルージュヴィルといいます』
 アレクサンドリーヌは、彼の表情を見ているうちに自分も赤くなった。
『ヴィーヴに双子の妹さんがいるのは知っていたけど、帰ってきているとは知りませんでした』
 アレクサンドリーヌはほほえんだ。『そうね、ついさっき、帰ってきたばかり。ヴィーヴとペグにはまだ会っていないのよ。ヴィーヴはどこかしら?』
『部屋じゃないかしら』ルイ=フィリップは首をかしげた。
 アレクサンドリーヌは、そのしぐさをみて驚いた。寮にいる病気の友人が、そんな癖を持っていた。クラリスは、今ごろ、元気になったかしら・・・アレクサンドリーヌは、スイスの友人のことを考えた。
『・・・そう。じゃ、会いに行ってみるわ』アレクサンドリーヌが言った。そして、深刻そうな顔をして彼に言った。『あなたは、来ない方がいいと思うわ。レディの部屋に行くのには、ちょっと遅い時間よね?』
 ルイ=フィリップは、ほほえんでうなずいた。
『それからね』アレクサンドリーヌが言った。『さっきの話は、絶対にあなたの口から伝えちゃだめよ。かの女に嫌われるわよ』
『・・・でも・・・』彼は口ごもった。
『真実は、必ず明らかになるものよ。あなた一人が貧乏くじを引いてはだめ。いいわね?』
 そう言うと、アレクサンドリーヌは、彼を残して歩き出した。
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