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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第12章

第210回

 ルイ=フィリップは、ジュヌヴィエーヴの表情を見ているうちに、気づいたのである。
 ジュヌヴィエーヴは、アルトゥールとエミリーのことを知っている。少なくても、何かありそうだと思っているはずだ。かの女は、知らないふりをしているだけだ。アルトゥールはそれに気づいていない。
 では、なぜ、知らないふりをしているのだろう・・・? アルトゥールを問いつめるには、プライドが許さないからなのだろうか? それとも、別の理由?
 こういう微妙な話は、誰にも相談できなかった。かの女の姉妹たちに聞けるような問題でもないし、まさかジュヌヴィエーヴ本人に確認するわけにも行かない。
 アルトゥールは、にやにやしながら言った。『フィル、かの女はやめたほうがいい。かの女は、すでに結婚している女性だ』
 ルイ=フィリップは、抗議しようとして口を開きかけた。
『この人は、絶対に不倫なんかできないわ。そういうことができる人じゃないわ』ジュヌヴィエーヴがアルトゥールに言った。
<でも、あなたは違うわ>ジュヌヴィエーヴの目はアルトゥールにそう言っていた。
 ルイ=フィリップは、二人を残したまま部屋を出た。
 ジュヌヴィエーヴとアルトゥールは、顔を見合わせた。
<・・・あら、彼、本気でエミリーのことを好きだったのかしら・・・?>ジュヌヴィエーヴの顔にはそう書かれていた。かの女は不思議そうな顔をしていた。
<怒らせてしまったようだ>とアルトゥールは考えていた。<余計なことをしゃべらなきゃいいが・・・>
 ところで、ルイ=フィリップは、まだ考え込んでいた。いつのまにか、彼は外に出ていた。彼の足は、中庭に向いていた。そこにあるベンチに座り、彼は考えごとの続きを始めた。
『・・・あら、寒くないの・・・?』アレクサンドリーヌは、彼にショールを掛けながら尋ねた。
『どうして、こんなところへ・・・?』ルイ=フィリップが訊ねた。
『あなたが、ふらふらっと出て行くのが見えたの』アレクサンドリーヌが小さな声で言った。<だから、これを持ってきたの。だって、あなたは、コートも着ていない・・・>かの女はそう言えずに、ただほほえんだだけであった。
『ありがとう、アレクサンドリーヌさん』彼もほほえもうとした。
『リネットと呼んで下さいな』アレクサンドリーヌがさらに恥ずかしそうな表情になった。
『じゃ、ぼくも、フィルと・・・』ルイ=フィリップが言った。
 ルイ=フィリップはそう言うと、急に真面目な顔をした。
『ぼくには、女性の心理はよくわかりません。だから、ヒントを下さい』
『どんな?』アレクサンドリーヌが訊ねた。
『昨日の話です。ヴィーヴは、かの女のいとことアルトゥールのことを知っています』
 アレクサンドリーヌは絶句した。『・・・まさか・・・』
『知っていて、知らないふりをしているとすれば、それはなぜですか?』
 アレクサンドリーヌは小さなため息をついた。
『わたしとヴィーヴは、全然似ていない姉妹です。わたしの考えとかの女の考えが同じだとは思えません。ですが、わたしがもしかの女の立場にいたら・・・』アレクサンドリーヌはちょっと目を閉じ、ゆっくり開いた。『・・・優越感から、かしらね・・・』
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