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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第12章

第214回

 ルイ=フィリップも、小さなため息をついた。
『女性って、単純な恋ができない人種なの?』
 ジュヌヴィエーヴはほほえんだ。『あら、問題を複雑にしたのは、殿方たちじゃないの・・・?』
 彼はまだ硬い表情をくずしていなかった。
『あなたが、キーパーソンだったのよ』かの女が言った。『あなたさえ、態度をはっきりしていれば、物事はこんなに複雑にならなかったのかも知れない』
 ルイ=フィリップは悲しそうだった。彼は首を横に振った。『きみが、ぼくを好きだったなんて、どうしてぼくにわかるというの?』
『ほんとうに、わからなかったの?』
 彼はうなずいた。
 かの女も小さなため息をついた。『ほんとうに、あなたって、大人になりきれていないのね・・・』
 彼は困惑して下を向いた。
『あなたには、女性の心理がわからないんだわ。でも、あなたがキーパーソンなのは変わらない。あなたが、今後どう動くかが問題だわ。あなたは、どうするの? ペグの気持ちにこたえるの? リネットを追いかけるの? それとも・・・?』かの女は彼の目を見た。
 彼には、自分がどうしたいのかわからなかった。ジュヌヴィエーヴが、すべてのキーを彼に渡した。選ぶのは、彼だった。
 彼は、肩をすくめ、立ちあがった。
『ヴィーヴ、どうもありがとう』彼は、手当のお礼を言い、部屋から出て行った。
 翌日の早朝、ルイ=フィリップは、ゴーティエの叫び声で目を覚ました。
 ゴーティエは、クラリスの部屋のドアを狂ったようにたたいていた。
 ルイ=フィリップは、思わず自分の部屋から出た。
 ゴーティエとクラリスは、小さな声で何か真剣に話し合った。と、クラリスは、部屋からかけだして、アレクサンドリーヌの部屋に向かった。そこは、もぬけの殻であった。
 クラリスは、アレクサンドリーヌが自殺を図る気だと思った。かの女は、馬に乗ってあたりを探すつもりで外に出て行った。
 ゴーティエとルイ=フィリップの目があった。
 その瞬間、ルイ=フィリップは、ゴーティエに頬をたたかれていた。
『リネットに、何をしたんだ?』ゴーティエは、理性を失った様子でルイ=フィリップに訊ねた。『きみは、すべてを知っているはずだ!』
 ルイ=フィリップは、床に四つんばいになっていた。立ちあがろうとする元気はなかった。
『リネットが出て行った。死ぬつもりに違いない。なにもかもきみのせいだ!』ゴーティエはその姿に向かってこう続けた。
 ルイ=フィリップは、床から手を離した。そして、涙がいっぱいたまった目でゴーティエを見つめた。
 ゴーティエは、彼から目を背けた。ゴーティエもまた泣いていた。
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