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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第14章

第255回

 アレクサンドリーヌの葬儀は、彼らが結婚式を行ったその教会で行われた。
 それは、さびしい葬式であった。
 かの女にとって救いだったのは、その葬式にゴーティエ=ド=ティエ=ゴーロワの姿があったことである。
 ゴーティエには事情は知らされていなかった。
 彼は、ルイ=フィリップに深々と頭を下げた。
「許して欲しい。こんなことになる前に、一度話がしたかった・・・」ゴーティエは泣いていた。アレクサンドリーヌは、彼にとって、一番かわいがっていた妹だった。彼は一番下の弱虫の妹を、父親のかわりに見守っていた。その妹と仲違いして以来、彼がかの女を気にかけなかった日はなかったのである。
 ルイ=フィリップは、それを知っていた。「リネットは、あなたを愛していました。今は、かの女もすべての事情がわかっていることでしょう。そして、きっと、天国からあなたを守ってくれると思いますよ・・・」
 ルイ=フィリップは、嘆き悲しみ、自分を責めているゴーティエを見ているうちに、彼にだけはすべて話したい、という気持ちになった。しかし、それだけはできなかった。なぜならば、彼は、マルグリート=ド=ティエ=ゴーロワと一緒に住んでいるからである。ルイ=フィリップは、マルグリートには決して自分の手の内をみせたくなかった。<次はシャルロットの番です>という脅迫の文字が頭から離れなかった。ルイ=フィリップは、無理に心を鬼にした。
 ルイ=フィリップは、シャルロットを抱いているマドレーヌ=フェランの方を見つめた。そして、全く違うことを考え始めていた。もしかしたら、自分の娘を殺したのはマルグリートだったのか、という疑いが、思わぬ形で晴れたことである。シャルロットは、自然死だったのだ。かの女の死は、誰かの仕業ではなく、全くの事故死だったのだ。もしそうでなかったら、かの女が死んだことをマルグリートが知らないはずはなかった。自分には、マルグリートさえ知らない秘密がもう一つあるのだ・・・ルイ=フィリップは不思議な喜びを感じた。結局、被害者は最初の息子だけだったのだ。
 それにしても、もし、息子が生きていたら、あのくらいになっていただろうか・・・ルイ=フィリップの目は、甥のコルネリウスの方に向けられた。外見は全く違っていたが。自分の息子は、ブロンドの髪に、アレクサンドリーヌと同じすみれ色の目をしていた。そして、コルネリウスは、父親譲りの赤毛とブルーの目をしていた。それでも、ルイ=フィリップは、二人はきっと似ているだろうと思っていた。
 コルネリウスは、母親を失った。彼はそれを知らない。彼の母親は出て行ったのだ・・・そう思っているだけだ。その方がいいのかも知れない。いずれ、本当のことがわかるだろう。今でない方が、彼にとって幸せだろう・・・。
 ルイ=フィリップは、悲しんでいるふりをしなければならないのだ。もちろん、ジュヌヴィエーヴを失ったのは悲しいことである。彼にとって、かの女は初恋の女性だったからである。だが、今の彼は、妻を失って悲しんでいることになっているのだ。
 彼は、葬式が終わると、子どもたち(オーギュスティーヌとシャルロット)とマドレーヌ=フェランだけを連れてローザンヌを後にした。行き先は、自分が小さい頃住んでいたリールであった。
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