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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第14章

第263回

 シャルロットは、黄色のバラを手に入れたのがうれしかった。
 かの女は、バラを見せるために、コルネリウスのピアノ練習室にまっすぐ駆け込んだ。ところが、かの女は、彼の弾いている曲を聞くと、部屋に来た用事を忘れてしまった。
「やあ、元気?」コルネリウスが訊ねた。
「まあ、さっき会ったばかりじゃない、ドンニィ?」シャルロットは笑いながら言った。バラは、かの女の足下に落ちた。
 コルネリウスは、自分が練習している曲のこと、その練習の首尾を話し出した。シャルロットは、それを楽しそうに聞いていた。そうしているうちに、4時の鐘が鳴った。
「・・・わたし、勉強しなくては。だから、もう行かなくちゃ」シャルロットが残念そうに言った。
 そのときになって、コルネリウスはシャルロットの足下のバラに気がついた。
「・・・おや、きみのバラ?」
「ええ、そうよ」シャルロットは足下のバラを拾った。
「もらってもいい?」
「どうぞ」シャルロットは、彼にバラを差し出した。
「ありがとう。お礼に一曲弾くよ」コルネリウスはピアノに向かった。シャルロットは、ちょっと残念そうに彼を見つめ、部屋から出て行った。
 シャルロットが出て行くのと入れ替わりに、ドクトゥールが入ってきた。彼は、何かを探しているようだった。
「プティ=ドンニィ、わたしのペンを知らない?」
「テーブルの上にありました」コルネリウスはピアノを引く手を止め、返事した。
 彼はテーブルに近づいた。「ありがとう、ドンニィ。探していたんだよ」
 彼は、テーブルの上に、黄色いバラがあることに気づいた。「おや、黄色いバラだね。プレゼント?」
「・・・まあ、そういうことになるでしょうか」コルネリウスはあいまいな返事をした。
「女の子から?」
「はい、ドクトゥール」
 ドクトゥールは思わずほほえんだ。「黄色の花の花言葉は、<わたしはあなたを愛しています>だそうだ」
 コルネリウスは赤くなった。「花言葉、ですって?」
「そう。・・・花っていうのは、言葉に出して言えないとき、言葉のかわりをしてくれるという。きっと、はにかみやさんからのプレゼントだね?」
 コルネリウスはますます赤くなった。
 ドクトゥールは、万年筆をポケットに入れながら言った。「からかってごめんよ、ドンニィ。恐らく、相手の女の子は、そんなことは知らなかったんじゃないかと思うよ。花言葉は、恥ずかしがり屋の大人のためのものだからね。じゃ、またね」
 一人残されたコルネリウスは、ぼうぜんとして彼を見送った。
 彼は、バラを持って自室に戻り、花瓶のかわりにコップに花をさした。
 その後、彼は、いつものように庭に散歩に出た。
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