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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第16章

第295回

「でも、どうして? リネットは死んだんだよ・・・」
「本当にそう思っているの? 確か、リネットには、左足と背中に大きな傷があったはずだよね? 死体に傷はあったのかい?」
「・・・確認していないけど・・・」言いかけてドクトゥールははっとした。「・・・アル、どうしてリネットの傷の場所を知っているの?」
 ドクトゥールはアルトゥールの表情を見た。
「・・・きみ・・・まさか・・・?」ドクトゥールは、かすれた声で言った。
 アルトゥールは表情を変えずにうなずいた。「そのとおり。あの晩、わたしは、かの女を自分のものにした。・・・だから、かの女は出て行ったんだ」
 ドクトゥールは真っ青になった。
「自分の一番大切なものを失う、って、どんなものか、きみにもわかったかい?」アルトゥールは皮肉っぽい笑みを浮かべて訊ねた。
 ドクトゥールは急に真っ赤になった。彼は、怒りを抑えきれずにアルトゥールに飛びかかった。しかし、彼は、アルトゥールに手をあげることができなかった。彼は、泣きながらアルトゥールの服の襟をつかんで揺すっていた。
「殴れよ、フィル。どうして殴らないんだ?」アルトゥールはばかにしたような口調で言った。
 そのとき、突然ドアが開いた。コルネリウスは、びっくりしたような表情で、ドアのところで立ちすくんでいた。
 ドクトゥールはコルネリウスを見て、アルトゥールから手を放した。コルネリウスはびっくりして逃げ出した。ドクトゥールは、思わず彼の後を追って部屋から飛び出した。
 コルネリウスの姿は見つからなかった。ドクトゥールは部屋に戻った。
 アルトゥールは、さっきの椅子に座っていた。しかし、その顔はすでに生者のものではなかった。ドクトゥールは驚いて、人を呼びに行った。
 研究所にいた医者たちが全員集まった。
「・・・心臓発作のようですね」最初に診たエドモン=ルフェーブルがこう言った。他の医者たちも、同じ結論を出した。
「解剖してみなくちゃわからないけど、自殺、ということもありうるね」クリストファー=テニスンが言った。
「・・・そういえば、アルから、解剖してもわからないような毒物がある、と聞いたことがあります」ブリューノ=マルローが静かな声で言った。全員、彼の方を見た。「本物の心臓発作と区別がつきにくいような効果がある薬だそうです」
「なるほど、それを使えば、殺人もできる、と」ドクトゥールが言った。「すると、わたしは、一番の容疑者だというわけだ」
 今度は全員の目がドクトゥールに向けられた。
「わたしは、第一発見者だからね」ドクトゥールがマルローに言った。
「・・・すみません、ばかなことを言いました」マルローが謝った。
「いや、ばかなこととも言えないよ。わたしは第一発見者なんだし、プティ=ドンニィは、わたしがアルと喧嘩しているのを目撃しているしね」
 全員、コルネリウスを見つめた。
「本当かい?」テニスンが訊ねた。
「・・・ええ、確かです」コルネリウスは、しぶしぶそれを認めた。
 そこへ警官がやってきた。彼らは、研究所の人たちにいろいろ聞いた後、解剖するからということでアルトゥールの遺体を運んでいった。
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