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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第17章

第303回

 そこに立っていたのは、コルネリウスにそっくりな少年だった。かの女は思わずほほえみそうになったが、その赤毛の少年は、よく見るとコルネリウスより年上に見えた。かの女は怒ったような表情をして少年に言った。
「まあ、あなただってまだ子どもじゃないの。音楽の邪魔をする人って、最低ね。今すぐ出て行って」
 少年はすまなそうな顔をした。「ごめんね。部屋を間違えたんだ。今すぐに出て行くよ。でも、もしかして・・・きみがユーフラジーかい?」
 シャルロットはびっくりしたような顔をした。「ええ。でも、どうしてわかったの?」
「ぼくは、オスカール=フランショーム。ザレスキー一族なら、見当がつくよ。とてもきれいなブルーの目をしているそうだから・・・。今回、このコンクールに参加したザレスキー家の女性はきみだけだから、たぶんそうだと思ったんだ」
「・・・そんなこと、誰に聞いたの?」
「ロベール=フランショームにね。彼は、ぼくの叔父なんだ」
 そう言うと、オスカールは、にっこりとほほえんだ。「・・・噂通り、ザレスキー家の女性は、本当にきれいなブルーの目をしているんだね・・・。ちょっぴり、叔父さんの気持ちがわかったよ。それに、いとこたちの気持ちもね・・・。コルネリウスがうらやましいな」
 シャルロットは、そういえば、アルトゥール=ド=ヴェルクルーズの葬儀の時、彼を見かけたような気がした。「あなたは、コルネリウスのいとこだったわね。双子の、お兄さんの方・・・。サン=ナゼールで一度会っていると思うけど・・・?」
「よくわかったね。・・・といっても、ぼくたちは、双子だけど、あまり似ていない。一緒に生まれた兄弟だ、って言っているくらいだ。ロジェたちも、絶対に間違ったことがないよ」
 ロジェの名前を聞くと、シャルロットはうれしそうに訊ねた。「ロジェとミューは元気かしら?」
「元気そうだよ。ミューは、ぼくの弟のフランソワと気があって、一緒に作曲しているし、ロジェの方は、何か小説を書いているよ。懸賞に応募するんだって」
 シャルロットはうなずいた。かの女は、別れる間際、ロジェと約束していた。高校生以下の子どもを対象とした文芸コンクールがあり、それに作品を応募しよう、と。
「ロジェに伝えてね、わたしは約束を守った、って」
 オスカールは怪訝そうな顔をした。「約束・・・?」
「そう言えばわかるわ」シャルロットはほほえんだ。
「わかった」彼は渋々うなずいた。「・・・残念だけど、もう行かなくちゃ。きみの邪魔になるし・・・それに、本当は、ほかの人の部屋に入っちゃいけなかったんだよね。さよなら・・・いや、また会おう、かしら。きみには、きっと会えるよね?」
「たぶん、本選でね」シャルロットは握手するために手を差し出した。オスカールは、その手を握りかえした。
 これが、シャルロットとオスカールの最初の出会いであった。
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