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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第17章

第308回

 コルネリウスは、翌日の新聞でコンサートでの事件を知った。しかし、彼にはその重大性がわかっていなかった。言い換えれば、ねらわれたのがシャルロットだと気づいていなかったのである。
 むしろ、彼を驚かせたのは、後ろの方に乗っていた小さい記事だった。ある文芸コンクールの小説部門で、2位を取った人物の名前に心当たりがあったのである。《ガルディアン=ド=マルティーヌ》・・・。これは、兄のロジェが好んで使っていたペンネームだった。このペンネームの由来を、彼はロジェからもシャルロットからも聞かされていた。名付け親はアンブロワーズ=ダルベールだということになっていた。
 昔、ロジェはシャルロットと一緒に小説を書いた。その小説を読んだアンブロワーズが、『主人公をこれ以上不幸にしたら、読んであげないからね』と言ったが、ロジェが『だって、平凡な人生なんて、つまらないと思わない?』と反論したため、ロジェにこう諭したという。『ぼくは、弱いものいじめをする人は嫌いだよ、ロジェ。男の子は、女の子を守ってあげるべきだと思うな。きみは、ロッティの守護者(ガルディアン)なんだよ』・・・ロジェは、そのときから、自分を《守護者(ガルディアン)》と位置づけたのである。
 コルネリウスは、作品名の<カレー海峡>というのは、なんとなく彼らしくないと思った。彼がカレーに行ったことがあるとは思えなかったのである。オート=サン=ミシェルの<イギリス海峡>なら、まだ理解できそうな気がするのだが・・・。
 1位は、フィールウントゼヒツィッヒステルパウゼとでも読むのだろうか、変な名前の作家の<秋のファンテジー>という作品だった。
 この奇妙な記事が、この日一日、コルネリウスの心に引っかかっていた。
 さて、新聞を読んだ後で、コルネリウスはいつものように病院に行った。
 いつものように、<子どもは風邪がうつりやすいから>という理由で、コルネリウスはシャルロットに会わせてもらえなかった。その日もあっさりと追い返された後、どうにかして入り込めないものかと考えていたとき、噴水のところにいたドニ=フェリーに会った。
「病院に行ったんですか、コルネリウスさま?」ドニが訊ねた。
 コルネリウスはびっくりしたようにドニを見つめた。ドニがこんな風な言葉遣いをしたのが意外だったのである。
「ユーフラジーおじょうさまは?」ドニが重ねて訊ねた。
「・・・どうしたの、ドニ?」コルネリウスが訊ねた。「どうして、そんな風な言い方をするの?」
「パパから、『コルネリウスさまやユーフラジーさまは、住んでいる世界が違う人間だ』って言われた。だから、前みたいに『きみ』と呼んではいけない。『あなた』と呼びなさいって・・・」
「どうしてさ! この前までは、誰もそんな風には言わなかったのに!」コルネリウスは憤慨した。
「ぼくたち、もう子どもじゃないんだよ」
「・・・」コルネリウスは返答に困った。
「でも、そんなのってないよね。大人の価値観がすべて正しいのだろうか? ぼくには、そうとも言えないと思う。もし、間違っているのなら、なおしていくべきだ。ぼくは、一生懸命に勉強して、正しい人間になりたい。ぼくは、間違っているかしら?」
「いや、きみは間違っていないよ」コルネリウスは確信を持って言った。
「人間は、みな、平等なはずだ」
「確かにね。学校ではそう習ったよ」コルネリウスが答えた。
「じゃ、ぼくがユーフラジーを好きになることも間違っていないよね? ぼくは、7つの時からずっとかの女が好きだった。それを否定しなくても、かまわないよね?」
 コルネリウスは思わず目をぱちくりさせた。
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