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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第17章

第309回

「3年前の夏、あのステージの上で、結婚式ごっこをしたよね。覚えてる? そのときから---かの女がレースのカーテンをかぶってヴェールのかわりにして、手には庭に咲いたばかりの白いバラを持って、ぼくの隣に立ったときから---あのちいさな花嫁をぼくはずっと愛してきた」ドニが言った。
「それは・・・。だって、ロッティは、あのときまだ1歳だったじゃないか・・・」
「・・・そんなことは、関係ないんじゃないの?」そう言うと、ドニは目を伏せた。そして、いちもくさんに屋敷の方へ走っていってしまった。
 コルネリウスは、ブルーの目をしたちいさないとこのことを思った。かの女を愛していた。しかし、それはいつからだったろう?・・・わからなかった。思い出せないほど前から、彼はかの女を愛していたに違いない。もしかすると、生まれたばかりの時にゆりかごの中にいるのを見たときからだったのかもしれない。どうして?・・・そんなことはどうでもよかった。
 しかし、かの女を愛しているほかの人間の存在に気づいて、彼はなぜか落ち着かない気分を味わっている。それはなぜなのだろう? それも彼にはわからなかった。
 彼は決心して、病院の中に進入した。誰にも見つからないで2階に上がるのは大変だった。しかし、一度2階まで来れば、205号室は簡単に見つかった。
 シャルロットは熱っぽい顔をしていた。しかし、咳き込んだりはしていなかった。
「・・・来てくれたのね、ドンニィ・・・?」シャルロットは、かすれた声でささやいた。
「忍び込んだんだ。見つかったら、きっと追い出されるはずだ。かなり危険な風邪みたいだから。ドクトゥールたちは必死になって、子どもたちを近づけないようにしている。今、アドーニスが危ないらしい」
 シャルロットはそのニュースを聞いて真っ青になった。かの女は目に涙をためてコルネリウスを見た。そして、かの女は、彼が泣いていないことに気づいた。
「・・・悲しくないの、ドンニィ?」
「悲しいよ」コルネリウスが答えた。
「でも、あなたは泣かないのね」
 彼は返事をしなかった。
「ねえ、ドンニィ、あなたは、どんなときにも泣かないの?」
「そんなことないと思うよ」
「でも、あなたは、アルトゥールおじさまが亡くなったときにも泣かなかったわ」
「・・・せいいっぱい、我慢したからね」
「どうして泣かなかったの? 我慢する必要なんかなかったのに?」
「・・・わからない」
「だって、あなたのお父さまだったのよ・・・」
「・・・」コルネリウスは返事できなかった。
 シャルロットは結論を出した。「やっぱり、あなたは、何があっても泣かないんだわ」
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