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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第17章

第312回

「真面目な話だよ、ロッティ」コルネリウスはむっとして言った。
「どうしてそんなことを考えたの? わかったわ、ムッシュー=フランショームね?」
「ロベールおじさまが嫌いなんだね?」
「いいえ、嫌いじゃないわ」
「じゃ、ぼくは?」
「もちろん、嫌いじゃないわ」
「じゃ、好きなの?」
「もちろん、大好きよ」
「じゃ、いつか結婚してくれない?」
 シャルロットの顔がくもった。「約束できないわ、ドンニィ」
「どうしてさ?」コルネリウスが訊ねた。
「だって、あなたは、わたしを愛していないもの」
 コルネリウスは、あの冷たいほほえみ---シャルロットが嫌いな、アルトゥールにそっくりな皮肉めいた笑い方---をシャルロットに見せた。「ぼくがきみを愛していない、って、どうしてきみにわかるの?」
「だって、あなたは、わたしにそう言ってくれないわ。今だって、わたしには、あなたが好きかどうか聞いたのに、自分では、わたしが好きかどうか言ってくれなかったわ」
 コルネリウスは真面目な顔をした。「じゃ、きみを愛しているって言ったら、結婚してくれる?」
「あなたは、意地悪だわ、ドンニィ」
「ぼくが? ぼくは、きみをいじめたことなんてなかったよ」
「でも、あなたは、ときどき、わたしに優しくないわ」
 コルネリウスはちょっとの間考え込んだ。「・・・そう見えるかも知れないね。ぼくは、これまで強い男になることを望んでいた。そのために、優しい男であることを否定してきた。本当は、人間は、強いだけでも優しいだけでもだめなんだけどね。どっちも備わった人じゃなくてはね」
「それで、どっちも備わった人になるの?」
「なれたらね。でも、無理だろうね。だから、せめて強くなりたいんだ」
 シャルロットは、即座に否定した。「でもね、ドンニィ、わたしは、強い男の人より、優しい人の方が好きだわ」
 その言葉は、コルネリウスの心臓を突き刺した。彼はショックのあまり、真っ青になった。
 シャルロットは、こう続けようとした。『わたしは、あなたに強くなってもらわなくてもいいの。今のまま、優しい人でいてちょうだい・・・。』・・・しかし、コルネリウスの表情を見て、思わず言葉を引っ込めてしまったのである。
 コルネリウスがその時考えたのは、ドニ=フェリーのことだった。彼は優しい少年だ。シャルロットは、もしかすると、自分よりドニの方が好きなのではないだろうか?『強い男の人より、優しい人のほうが好き』というのは、自分よりドニが好きだ、と言ったのと同じ意味を持つのだろうか?
「ロッティ、ぼくは、優しい男の人より、強い人の方が好きだ、と言わせてみせる」コルネリウスは、シャルロットがこれまで聞いたことがないくらいきつい調子でそう言うと、部屋から飛び出していった。
「待って、ドンニィ! お願いだから、怒らないで・・・」シャルロットは起きあがろうとしたが、体が思うように動かなかった。コルネリウスがどうして怒り出したのか、かの女には理解できなかったのである。そして、かの女は、彼に嫌われたと思いこんで泣き出した。
 コルネリウスはそれを知らなかった。彼も、かの女に愛されていないと思いこんでしまったのである。
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