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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第17章

第314回

 コルネリウスは、シャルロットが泣き出したので、はっとわれに返った。彼は、手綱を取り戻して右手で握りしめ、左手でふるえて泣きじゃくっているシャルロットを抱きしめた。シャルロットは、馬のたてがみではなく、彼にしっかりつかまった。こうして、二人はしばらく馬の言うなりになっていた。リユーブランは、疲れるまで走ると、満足して足を止めた。
 そこへアランが駆けつけた。アランは、二人の子どもたちを馬から下ろし、馬だけ連れて厩舎に戻ろうとした。子どもたちはアランの後をとぼとぼと歩いていた。シャルロットはまだコルネリウスにしがみついていた。コルネリウスは、かの女の肩に、慰めるように優しく手をかけていた。
 ドニ=フェリーはそんな二人に声をかけた。
「・・・怪我はありませんでしたか?」
「大丈夫だよ。それより、ぼくたちだけのときは、そんな言葉を使わないで、って言ったよね?」コルネリウスが小さい声で言った。
 ドニはうなずいた。
「顔が腫れているわ、ドニ」シャルロットはドニの異常に気づいた。
「うん。ちょっとね」ドニはあいまいな口調で言った。
「うん、ちょっとね、じゃないわ」シャルロットが言った。「教えて、ドニ。何があったの?」
 ドニは彼らを見て、思いきって言った。「じつは、喧嘩したんだ、パパとね」
「でも、どうして?」
「昨日、ピアノを弾いているところに、彼がやってきたんだ・・・」
「見つかってしまったんだ!」コルネリウスが言った。
「うん・・・。それでね、彼は真っ赤になって怒り出した。『ピアノなんて習ってどうするんだ』って聞かれたから、『サント=ヴェロニック校に行きたい。そして、コルネリウスさまと勉強したい』って答えたんだ」ドニはそう言うと、涙ぐんだ。「そしたら、パパは、ぼくをいきなり殴りつけた。『サント=ヴェロニック校なんて、おまえのような子どもが行く学校ではない。だいいち、おまえは、彼らと一緒に勉強できる身分じゃないし、うちには、おまえをそこで勉強させるお金がない』と言うんだ。ぼくは、奨学金を取るから、お金の心配はいらない、って言ったんだけど、そしたら急に泣き出してね、『わからないこと言わないでくれ』って言いながら、また殴ったんだよ・・・」
「ひどい話だわ」シャルロットは憤慨した。「ムッシュー=フェリーに言わなくちゃいけないわ。ドニは、サント=ヴェロニック校で勉強する資格があるわ」
「やめてよ、ロッティ。そんなこと言ったら、また殴られちゃうよ・・・」ドニが情けない声を出した。
「じゃ、諦めるというの?」コルネリウスが訊ねた。
「・・・仕方ないだろう?」
「そんな、もったいない。ドニは学年で一番成績がいいんだ。サント=ヴェロニック校に一番で入れば、奨学金が出るんだし、卒業までずっと一番だったら、大学に行くための奨学金が出るんだよ。彼は勉強を続けるべきなんだ」コルネリウスがシャルロットに言った。
「やるべきよ、ドニ」シャルロットが言った。「奨学金さえ手に入れば、ムッシュー=フェリーも反対なさらないはずよ」
 ドニはしばらく考え込んでいた。「・・・そうだね、賭けてみる価値はあるかも知れない」
「応援するわ」シャルロットが言った。コルネリウスもうなずいた。
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