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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第19章

第354回

 シャルロットたちがヤン=クルピンスキーのところに行ったときには、もう夕方になっていた。
 彼は、夕食後部屋に閉じこもって作曲する習慣だったので、夕食直前の訪問を快く思っていなかった。彼の頭の中には、メロディーが浮かび始めていた。
「ヴァレリアンかい? 別の日にしてくれないか?」彼は、玄関のドアを開けて相手を見るなり、不機嫌そうに言った。
「今日は、新しい生徒を連れてきたんだ。ほかの日にはできないよ。会ってやってくれないか?」
 クルピンスキーは子どもをちらっと見て、つまらなそうに言った。「まだ、ほんの子どもじゃないか。それとも、この子が作曲するとでも言うのかい?」
 ヴィエジェイスキーは機嫌良く言った。「この子をよく見てくれ、ヤネク」
「・・・別に何も変わったことは・・・」彼はシャルロットをじっと見つめた。次第にその顔が青くなった。「・・・おじょうちゃん、あなたの名前は?」
「シャルロット=チャルトルィスカです」
 クルピンスキーは真っ青になった。そして、二人を中に招き入れた。
 シャルロットは、クルピンスキーのためにヴァイオリンを弾いた。
「始めてから、まだ2ヶ月目なんだそうだ。だから、細かいところはまだまだなのだが・・・」ヴィエジェイスキーが説明を始めた。
「でも、この子は本物だ」クルピンスキーが言った。ヴィエジェイスキーもそう言うつもりだったので、思わずほほえんだ。
 クルピンスキーは、死んだ友人の子どもをじっと見つめていた。どこか、彼に似たところを探して・・・。
 シャルロットは母親似だった。少なくても、クルピンスキーはそう思った。ウワディスワフは、この女の子よりももっと赤に近いブロンドの髪をして、目は、ブルーと言うよりはアメジストを思わせるような色だった。それでも、この女の子は、どことなくウワディスワフを思わせるところがあった。
「・・・わたしは、考えていたんだが」クルピンスキーはいきなりヴィエジェイスキーにこう話し出した。「<ステファンスキー=システム>をもっと有名にしようと思うんだ。で、こういう企画を思いついたんだ。つまりね、システムの子どもたちの中から3人選んで、トリオを作るんだよ。まあ、ピアノトリオと言うことになるだろうね。この子をヴァイオリニストにしたいんだけど、どうだろう?」
 ヴィエジェイスキーはあぜんとした。
「いきなり、何を言うんだい! この子は、今日、みんなに引き合わせてきたばかりの子で、システムとは何の関わりもない。その子をいきなりトリオに入れようって言うの? むちゃだよ!」
「ほかの二人がしっかりしていれば大丈夫さ。どう、この考え? ステファンスキー教授たちにはこれから話すけど、彼らだって、この子がヴァイオリニストとして最高だと言うことは認めてくれるさ」
「この子がウワディスワフの子どもでなかったとしても、きみはそう言えるかい?」
 クルピンスキーは自信ありげにうなずいた。「もちろん。あの演奏を聴いて、それが見抜けないほど、わたしは間抜けではない。確かに、この子は、まだまだ未熟だけどね」
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