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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第20章

第364回

 その日の夕方、コンサート=ホールでは、3人の子どもたちがステージの上に並べられたピアノ2台を眺めていた。ステージは真っ暗だった。リハーサルはすでに終わっていて、開場間近だった。
 マネージャーのエドゥワルド=ヴォールトは、楽屋とステージを忙しそうに往復し、椅子と譜面台を並べていた。
「あとは、楽譜だけだけど、きみたちが持っていく?ステージに出しておく?」ヴォールトが訊ねた。
「ピアノの上にのせておいて下さい」フリーデリックが言った。
「上じゃなく、譜面台にのせたら?」スタニスワフが提案した。
「演奏順に乗せなくちゃならないから、わたしたちでやりましょうよ」シャルロットが言った。
「賛成」フリーデリックが言った。
 三人は、楽譜を持ってステージに行った。
「一番下に<小品>、あとは<クラコヴィアク><ピアノ三重奏曲>の順に乗せてね」フリーデリックが言った。
「譜面台から落ちちゃうよ・・・」スタニスワフが情けない声を出した。
「じゃ、今言った順にピアノの上にのせておいて」フリーデリックが言った。「じゃ、次に、座る位置の確認」
 最初に演奏する配置は、フリーデリックがピアノ、シャルロットがヴァイオリン、スタニスワフがチェロだった。三人は、お互いがよく見える位置に椅子を並べ直した。そして、お互いの合図が見える位置まで譜面台を下げた。
「開始の合図は?」スタニスワフが訊ねた。
「ブローニャに任せよう。かの女が弓をあげる動作が一番目立つからね。<クラコヴィアク>は、ぼくから始まるから、準備ができたら、こっちにウィンクでもしてくれ」フリーデリックが言った。
 二人はうなずいた。
 そして、三人はステージからいったん引っ込んだ。
 さて、三人は、それぞれ舞台衣装に着替えた。彼らは、普通のステージ衣装を選ばなかった。フリーデリックとスタニスワフは真っ白のタキシードを身にまとい、シャルロットは真っ赤なドレスを着た。白と赤はポーランドのカラーである。彼らは、公然と、自分たちがポーランド人であるとアピールしたのである。しかも、この日のプログラムは、ショパンとクルピンスキーとベックという三人のポーランド人の曲である。
 開始5分前のベルが鳴った。
「緊張しているの、スターシ?」フリーデリックが訊ねた。
「もちろん。初めてだもの」
 シャルロットは少年たちから離れたところでヴァイオリンの音を合わせていた。スタニスワフも自分のチェロを運んできた。
「緊張していないの?」フリーデリックはシャルロットに訊ねた。
 シャルロットは、いたずらっぽく笑って言った。「もちろん。2回目ですもの」
 これには、二人の少年も思わず笑ってしまった。
 そのとき、開演を知らせるベルがなり、カーテンが開いた。
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