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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第21章

第378回

 ベルリン=コンサートの第一日目が終わった。翌日、彼らは次のプログラムのリハーサルを行った。終了後、自由時間が与えられることになっていたのだが、夕方が近かったので自由時間は取りやめとなった。---はずだったのだが、フェリックスはいつの間にか、ベルリンの地図を買って戻ってきた。3人はあきれて何も言えなかった。
「明日は、街を歩くんだったよね。地図がないと困ると思ってね」フェリックスは何でもないことのように話した。
「でも、お金は?」
「もちろん、持っていたよ。さっき、ゴレツキーさんにね、ちょっと・・・」フェリックスはほほえんだ。
 3人は笑い出した。本当に、フェリックスという人間は、得な性格をしている!
「さて、計画だが」フリーデリックが言った。彼は、地図を指さした。「湖でボートに乗って、馬車で宮殿を見に行く・・・」
「何か食べなくちゃ」フェリックスが遮った。
「そうだ、食べることを忘れるところだった」フリーデリックは真面目な顔で言った。
 結局、彼らの計画は、ウンター=デン=リンデン通りのレストランで少し早いお昼を食べてから、グリューネヴァルトで過ごすことに落ち着いた。スタニスワフがドイツ語をほとんど覚えなかったので、あちこち歩き回ってもつまらないだろう、ということになったのだ。
 グリューネヴァルトにつくと、4人はハーフェル湖に向かって歩き出した。ここでは、4人ともポーランド語で話をしていた。歩きながらポーランド語を使うと言うことは滅多にないことだったので、4人とも歩くのが苦にならないくらい喜んでいた。それに、子どもたちだけで歩くのも久しぶりだった。外出には必ずボディーガードがつくシャルロットなどには、新鮮な外出経験だった。
 そんな楽しい気分が、一匹の犬の存在でぶちこわしになった。まだ子犬だったのだが、犬が嫌いなフェリックスは、犬を見たとたん真っ青になって、近くにあった木に登ってしまったのである。
 子犬はまっすぐにシャルロットに駆け寄り、足下にじゃれついた。シャルロットは子犬を抱き上げた。
「フェレック、降りていらっしゃい。この子、何もしないわよ」シャルロットは木の上に向かって呼びかけた。
「降りられないんだよ・・・」フェリックスが答えた。
 スタニスワフも犬に興味を持ってシャルロットに近づいた。
 一方、フリーデリックは、あたりをみて、犬の飼い主らしい人がいないかどうか探していた。あたりには、少年が一人しかいなかった。ブロンドの髪をした背の高い少年だった。
「ヴォルフィ! ヴォルフィ!」少年はずっとそう叫んでいた。
 フリーデリックは、少年が自分の弟でも探しているのだろうと思った。しかし、ほかには誰もいなかった。
「かわいい目をしているね!」スタニスワフが言った。それで、フリーデリックも犬の方を見た。
 少年は、3人組を見た。そして、女の子が自分の犬を抱いているのに気づいた。
「ヴォルフィ! おいで!」少年は、ドイツ語で言った。
 シャルロットも少年に気がついた。そして、犬に向かってポーランド語でささやいた。「あなた、ヴォルフィっていうの?」
 かの女は、犬を下に置いた。そして、ドイツ語で言った。「さあ、呼んでいるわ!」
 子犬は少年の方を見た。それから、もう一度シャルロットの方を見、かの女の足下にくっついた。
「この犬、どうやら、ブローニャの方が好きみたいだね」フリーデリックがドイツ語で言った。
 シャルロットは思わずくすくす笑った。
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