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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第21章

第381回

 5人は、二組に分かれたままボートに別々に乗った。そして、ボートがなぜ浮くのか説明しているギュンターから離れるようにフリーデリックはボートをこいだ。
「あの二人には、ついていけないよ、全く!」フリーデリックは大げさにため息をつきながらポーランド語で言った。
「まったく、彼は<歩く百科事典>だね」フェリックスが同意した。そして、3人は歌い出した。
「あれは、ポーランドのクリスマス=キャロルですね?」ギュンターが訊ねた。
「なぜそれを?」シャルロットが驚いて訊ねた。
「ぼくは、半分ポーランド人なんです」
「まあ、あなたって意地悪ね! わたしたちの話、全部聞いていたの?」シャルロットは真っ赤になり、ポーランド語で抗議した。
 彼は、わからないという身振りをした。「ごめんね、ぼくはポーランド語は話せないんだよ」
 シャルロットは、ショックを受けたような顔をした。「どうして?」
 彼は答えたくなさそうに首を振った。
「・・・ごめんなさい、悪かったわ」シャルロットはドイツ語で謝った。何か話したくない事情があるのなら、聞かない方がいいと思ったのである。
「あの曲は、ポーランド人の友人がよく歌ってくれるんですよ。クリスマスになると、故郷が懐かしい・・・って言いながら歌うんです」
 幼い頃にフランスを出たシャルロットにも、その気持ちがわかった。「わかるわ、その気持ち・・・」
「ぼくも・・・」ギュンターが、小さな声で同意した。
 やがて、話題を変えようとして、ギュンターが言った。「<クラコヴィアク>って知ってる?」
「ポーランド民謡の話?」シャルロットが聞き返した。
「いや、そうでなくて、固有名詞」ギュンターが言った。「ピアノトリオの<クラコヴィアク>のこと」
「ええ、知っているわ」シャルロットが答えた。
「ぼくとほとんど同じくらいの年の子どもたちが、ステージで演奏する、っていうんだからなあ!」ギュンターは尊敬がこもったような口調で言った。
「聞きに行ったの?」
「いや、一日目には行かなかった。あしたのティケットを持っている」ギュンターが言った。「ぼくのポーランド人のクラスメートがね、ピアニストの何とかという少年が一人で即興演奏をするのを見るべきだ、って言ったんで、一日目はやめにしたんだよ」
 シャルロットはうなずいた。「なかなか、音楽がわかるお友達なのね」
「そう思うかい?」ギュンターはほほえんだ。「その友達は、こうも言っていた。<クラコヴィアク>って変な集団だってね。ヴァイオリニストは本物の芸術家だし、ピアニストには紛れもなく作曲家としての才能がある。それなのに、3人集まってあんなことをしているなんて不思議だ、ってね」
「あんなこと、ですって?」シャルロットは気を悪くして言った。
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