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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第21章

第383回

<外国遠征>から戻ってきたクラコヴィアクのメンバーを待っていたのは、一通の手紙だった。それは、このようなものだった。


クラコヴィアクのみなさま
 ぼくは、グダィンスクの近くのグディニアという町の14歳の学生です。ぼくも妹も、クラコヴィアクの大ファンです。妹は10歳で、重い心臓病のためにずっとねたきりの生活です。もう、治る見込みもなく、あと1ヶ月の命だと言われています。かの女は、死ぬ前に、もう一度クラコヴィアクのみなさまに会いたい---と言っています。どうか、この願いを聞き届けてやって下さい。お願いします。
                                    ミエチスワフ=レショフスキー


 初めに読んだフリーデリックは、驚きのあまり手が震えて、なかなか読むことができなかった。スタニスワフはさっと目を通し、即座に行くべきだと結論を出した。シャルロットもできるだけのことをしたいといった。3人は、ちょうど近くにいたリシュジンスキー教授に、手紙を読み聞かせ、グディニアに行きたいと訴えた。
「コンサートを控えているのに?」リシュジンスキーはそれだけ言うと、新聞に顔を埋めてしまった。
 クルピンスキー教授ははっきりと反対した。
「グダィンスクから帰ってきたばかりじゃないの。一週間後にワルシャワ公演があるのに、また、グディニアなんて・・・。だいいち、きみたちが行ったところで、病人が治るわけじゃない」
「じゃ、コンサートが終わったら?」シャルロットが訊ねた。
「ブローニャ、きみには確か、ワルシャワ=フィルと演奏会があったはずだね。ヴァレリアンがいいと言うだろうか?」
 シャルロットはうなだれた。
「会いに行くだけなんですよ」スタニスワフも言った。
「ヴァレリアンに聞くんだね。彼がいいって言ったら、わたしも反対はしない」クルピンスキーが言った。彼は、ヴィエジェイスキーは絶対に反対すると確信していた。
 フリーデリックとスタニスワフは、二人だけでヴィエジェイスキーのところに行った。
 ヴィエジェイスキーは、二人だけなら別にかまわないんだけど、と言うと、頭を抱えてしまった。
「ぼくたち二人だけでは、クラコヴィアクじゃありませんよ。お願いです、どうかいいって言って下さい。あなたが賛成して下されば、クルピンスキー教授も賛成して下さるそうです」フリーデリックが頼んだ。
「・・・ところで、どうしてブローニャがいないんだ?」ヴィエジェイスキーが訊ねた。
 二人の少年は顔を見合わせた。
「ブローニャも、わたしが反対すると思っているんだね?」ヴィエジェイスキーが重ねて訊ねた。
「ええ。でも、あなたの顔を見ると、どうしても行きたいとは言えなくなるから、来ないんだって言っていました」フリーデリックが正直に告白した。
 ヴィエジェイスキーはうなずいた。「わかった。ブローニャ一人で来るように言いなさい」
 少年たちはがっかりして部屋を出た。
 シャルロットは廊下で待っていた。かの女は二人を見ただけで、成り行きが想像できた。
「わかったわ。わたしが行ってきます」シャルロットが言った。
「でも、きみじゃ・・・」フリーデリックが心配そうに言った。「ついていってあげようか?」
 シャルロットは不安そうにフリーデリックを見た。
「もしかすると、ヴィエジェイスキー先生は、わたし一人で来なさい、って言ったんじゃない?」かの女が訊ねた。
 フリーデリックはうなずいた。
「やっぱり、そうだと思ったわ・・・」シャルロットはうなだれた。かの女は、二人を悲しそうに見つめ、決然と顔を上げた。「行ってくるわ。10分経っても出てこなかったら、応援に来てね」
「わかった」フリーデリックが答えた。
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