年代記 ~ブログ小説~ 

「日記」
備忘記録的なもの

にわとり

「とり」年、ということで、鶏の絵が入った年賀状をたくさんいただきました。やっぱりにわとり?と思いましたが、約一名、フクロウの絵の年賀状がありまして、「そうか、フクロウもアリか」と納得いたしました。
あれ?そういえば、毎年鶴と亀の絵の年賀状をよこすあの人も、今年は鶏でしたねぇ・・・。


「にわとり」で、小説中で回収し忘れているエピソードがあったことを思い出しました。


小説中にセバスティアン=ロストフスキー(セバスティアン=ロースト)という画家がいた、ことを覚えている・・・かたがいたら、ちょっと尊敬してしまいます。作者がすっかり存在を忘れていた人間なのに、すごいな、と。

さて、彼の出番はそう多くはありません。より正確に言うと、「よくしゃべる」うちの登場人物中で、(今のところ)まったく台詞がない人物です。彼の名前が最初に出てくるのは、主人公シャルロットの祖母ステラ(ポーランド人)がフランスに嫁いだとき、話し相手として雇われたポーランド人留学生の女性の兄、というものです。ステラの最初の子ども(シャルロットの母親のクラリス)が誕生したとき、娘の洗礼式の代父としてどうだろう、と打診される場面です。結局、その洗礼式は、屋敷の火事、という事件のせいで行われることはなかったわけですが。これが、第一部での彼の唯一の登場シーン?です。

第二部では、ほとんど冒頭で、フランスから帰国し、ポーランドで活躍を始めた彼が、後に彼の代表作といわれることになる7枚の連作を書こうとする場面が出てきます。ある日、彼は、ワルシャワで一人の青年を見かけます。その青年を見たとき、彼は、青年に自分の絵のモデルになって欲しいと頼みます。その連作、「イエズス=キリストの受難」の、キリストのモデルになって欲しい、と。絵は完成し、それによって”セバスティアン=ロースト”は、ポーランドでも有名人となります。
青年の名前は、ウワディスワフ=スタニスワフスキー。かつてヨーロッパで活躍したヴァイオリニストでしたが、左手に致命的な傷を負い、現役を引退せざるを得なくなり、妻のナターリアの故郷ワルシャワで暮らしていました。

(ウワディスワフとナターリア、に聞き覚えがなかったら、作者がかなり落ち込みます。)

絵が完成したとき、二人は、一枚だけ手元に絵を残すことを希望しました。その絵のキーワードが「にわとり」です。
「聖書」では有名なエピソードですが、抜粋で引用します。


人々はイエスを捕らえ、引いていき、大祭司の家につれて入った。ペトロは遠く離れて従った。人々が屋敷の中庭の中央に火をたいて、一緒に座っていたので、ペトロも中に混じって腰を下ろした。するとある女中が、ペトロがたき火に照らされているのを目にして、じっと見つめ、「この人も一緒にいました」と言った。しかし、ペトロはそれを打ち消して「わたしはあの人を知らない」と言った。少したってから、ほかの人がペトロを見て、「おまえもあの連中の仲間だ」と言うと、ペトロは、「いや、そうではない」と言った。一時間ほどたつと、また別の人が、「確かにこの人も一緒だった。ガリラヤの者だから」と言い張った。だが、ペトロは、「あなたの言うことはわからない」と言った。まだこう言い終わらないうちに、突然鶏が鳴いた。主は振り向いてペトロを見つめられた。ペトロは、「今日、鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」と言われた主の言葉を思い出した。そして外に出て、激しく泣いた。
(ルカによる福音書 22章55-62節:引用は「日本聖書協会 聖書 新共同訳」より。太字は引用者による)



このエピソード、4つの福音書すべてに出てくるもので、「三度」とか「火にあたっていた」とか「外に出て泣いた」のように、微妙に表現が違うところがありますが、4つの福音書のうち、ルカのエピソードが一番好きです。太字で引用した「主は振り向いてペトロを見つめられた」が載っているのがこれだけだから、かもしれません。ま、とにかく、にわとりといわれて思い出したのが、セバスティアン=ローストの絵、だったわけです。「年代記」ではこの場面になります。そのとき、主がどんなまなざしだったか、というわたしの解釈、でもあります。
そして、これがこんな小道具として登場するわけです。この場面の後、シャルロットの養父母であるチャルトルィスキー公爵夫妻が誕生するわけで、結構重要な小道具になったりしたわけですが・・・。


・・・で、結果として、7枚の絵のうち、ポーランドに残されたのがこの絵だったわけですが、その後、この絵は第三部のワルシャワ編でもちょこっと背景の一部として登場したりはしたのですが、原作を読み直してみても、第四部では影も形もなくなってしまっています。
「あ、このエピソード、回収し損ねている」と、年明け早々思ったのですが、作者としても思い入れのあるこの絵、44年のワルシャワ蜂起の時に焼けてなくなってしまった・・・ことにしてしまうのは、非常に惜しいと思ったりしまして・・・。


さて、これを最終的にどう料理しようか・・・またひとつ、悩みの種が増えました。


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~ Comment ~


おひさです。

この記事を読んで反射的に「ローストチキン」というダジャレが……。絵のエピソードを読んだときはそんなこと思わなかったのに、なんでだろ(^^;)

ワルシャワから絵が消えたのはあれだ、39年のポーランド戦の後でナチスが略奪美術品としてベルリンに持っていってしまったからだ、たぶん。小説のエピローグから五十年もしたころに偶然ドイツのコレクターの遺品の中から発見されて、国際的なニュースというかスキャンダルになるタイプのやつに違いない。だから戦火で焼けたわけではない、と思うであります。


……五年前からは考えられないくらいの超ド級のスランプに陥っていて、ライフワークが一向に進みません。自分で書くしか脱出できないのはわかってるんですが、ひたすらにつらいです。ため込むだけため込んで発散ができずもどかしい毎日です。ぬうううう。

お身体にお気を付けください。季節の変わり目ですし。

それでは~。
#333[2017/02/25 22:48]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]

Re: タイトルなし

> おひさです。
>
> この記事を読んで反射的に「ローストチキン」というダジャレが……。絵のエピソードを読んだときはそんなこと思わなかったのに、なんでだろ(^^;)


この記事を書きながら、「ローストチキン」を連想した・・・ことは、不謹慎だと思って黙っていようと思っていたんですけど(苦笑)。


> ワルシャワから絵が消えたのはあれだ、39年のポーランド戦の後でナチスが略奪美術品としてベルリンに持っていってしまったからだ、たぶん。小説のエピローグから五十年もしたころに偶然ドイツのコレクターの遺品の中から発見されて、国際的なニュースというかスキャンダルになるタイプのやつに違いない。だから戦火で焼けたわけではない、と思うであります。


うーん、その可能性は考えませんでした。「ドイツのコレクターの遺品の中から発見され」の可能性はありますけど。
作品を発表する前にネタバレしてしまうのもどうかとは思いますが、元チャルトルィスキー邸は、1939年9月末にはあるドイツ人(とか言わなくても、どの人かバレバレなんですが)が居住しておりました。彼は1944年8月にワルシャワがほぼ壊滅的打撃を受けるまでそこに居住しており、そんな中で絵が盗まれたとすれば、(SSの)カミンスキー少将の仕業かもしれませんが、どちらかといえば、焼けてなくなってしまった・・・ほうが可能性が高いような気がしておりました。
(それに、焼けちゃったら、文字通り「ローストチキン」ですよね?)


> ……五年前からは考えられないくらいの超ド級のスランプに陥っていて、ライフワークが一向に進みません。自分で書くしか脱出できないのはわかってるんですが、ひたすらにつらいです。ため込むだけため込んで発散ができずもどかしい毎日です。ぬうううう。


ポール・ブリッツさんとは、ブログを始めた時期がほぼ一緒でしたよね。当時よりはペースダウンしてはいても、時々雑草が生えているうちのブログよりはうーんと頑張っているように見えます。無責任に聞こえるかもしれませんが、ため込むまでため込めば、いずれは大爆発を起こして、ものすごいエネルギーで作品が書けると信じています。
信じたいです。
うちのブログも、始めた頃のペースで作品を発表していたら、おそらく今頃は「外伝」を書いていたはずだったのですが、どこで計画が狂ってしまったのでしょう?
(少なくても、5年前ではありません。もっと古い話です。震災前にすでにストック切れしていたのを覚えておりますので・・・。まだまだスランプが続きそうです。)
#334[2017/02/26 00:05]  cambrouse  URL  [Edit]














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