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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第21章

第391回

 しかし、シャルロットは自力で川から顔を出した。「フリーツェック、早く、何か投げて! わたしも、沈んでしまう!」
 フリーデリックは真っ青になってふるえていたが、その声でわれに返った。彼は、あたりを見た。その間にシャルロットはアウグストのところについて、その左手をつかんだ。そこへ、フリーデリックが太い縄を投げた。シャルロットは、縄をアウグストの体に巻き付けた。そして、倒れているスタニスワフの右手をつかんだ。スタニスワフは意識を失っていたので、シャルロットは彼を引きずらなければならなかった。途中、かの女は流れの中で再び足下を滑らせ、縄をつかんだまま沈んだ。
「助けて、フリーツェック!」シャルロットは気を失う寸前に叫んだ。
 フリーデリックは、必死で縄を引いた。そこへ、フェリックスがさっきの画家を連れて戻ってきた。彼らは、3人がかりで、やっとおぼれた3人を引き上げた。
 シャルロットは、川岸に横たえられたその弾みで目を開けた。フェリックスとフリーデリックがかの女をのぞき込んでいた。
「フェレック、急いでお医者さんを呼んできて! 急がないと、大変なことになるわ!」シャルロットが言った。
「わかった」フェリックスは返事をするのと同時に走り出していた。
 その間に、シャルロットは、スタニスワフに人工呼吸を行った。フリーデリックはそれを見ながら、アウグストに同じ処置を行った。
 画家は、シャルロットをスタニスワフから引き離した。「どきなさい、おちびちゃん。あんたじゃ無理だ」
 そして、彼は、シャルロットがしていたのと同じ方法で、スタニスワフの胸のあたりを両手で強く圧迫した。
「あ、生き返った!」フリーデリックが叫んだ。アウグストは息を吹き返し、やがて意識が戻った。しかし、スタニスワフの方は、20分経っても身動き一つしなかった。
「医者はまだか? このままじゃ、この子は助からんな」画家がつぶやいた。
 それを聞いて、シャルロットは涙をこぼした。かの女は、声を上げて泣くだけの気力を失っていた。
 やがて、タデウシ=クルピンスキーがやってきた。彼は、画家を見て驚いた。
「あなたには、人工呼吸の知識があるんですね? あなたは、医者ですか?」
 画家は驚いて首を横に振った。
 クルピンスキー医師は目を丸くした。「じゃ、誰がこれをきみたちに指示したのかね?」
「ブローニャです」フリーデリックが答えた。
 医者は、さらに驚いた顔をした。「ブローニャ、こんなこと、いったい誰から習ったんだね?」
 シャルロットには答えられなかった。とにかく、かの女は知っていたのだ、こんな場合の救急の処置の仕方を・・・。でも、どうして知っていたのかはわからなかった。かの女は、昔、誰かがこうして人工呼吸をしているのを見たことがあるような気がしていた。かの女は、とっさに、それを真似したに過ぎない。
「・・・まあ、いい。適切な処置だったよ、ブローニャ」医師はシャルロットに言った。「ところで、気分はどうかね、アウグスト?」
 アウグストは何も言わなかった。
「スターシは?」彼は今度はスタニスワフの方を見た。「・・・これは、助からないな。でも、やるだけやってみよう」
 医者は、人工呼吸を続け、そのほかありとあらゆる手を打った。最後に、彼はポケットから赤い瓶を出し、中の液体をスタニスワフの口に流し込んだ。彼の体が一瞬こわばり、すぐに元に戻った。
「・・・どうやら、死亡診断書が必要なようだね・・・」彼がぽつんと言った。
 フリーデリックとフェリックスは、スタニスワフにすがりついて泣き出した。シャルロットは、画家に抱かれて気を失っていた。
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