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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第22章

第395回

 ヴォイチェホフスキーは、隙を見て男に飛びかかろうとした。男は、それを制するようにシャルロットにピストルを向けた。ヴォイチェホフスキーの動きが止まった。
「まさか、あんたもポーランド語がわからないと言うんじゃないだろうな?」
 ヴォイチェホフスキーは、ふん、と鼻で笑った。「できたら、わかりたくないものだ。おまえたちと同じ言葉を話すのは、恥ずかしいことだ」
「生意気なやつだ」彼にピストルを突きつけていた男は、彼を殴りつけた。
 シャルロットは駆け寄ってヴォイチェホフスキーをかばった。「お願い、彼を殴るのはやめて!」
「命令するのは俺たちで、あんたたちじゃない」リーダーはシャルロットとヴォイチェホフスキーをにらみつけた。「いいから、二人とも立って、壁に手をつくんだ。俺を怒らせるんじゃない。俺は、いつでもあんたたちなんて殺せるんだ」
「じゃ、どうして今すぐ殺さないの?」シャルロットはドイツ語で訊ねた。
 リーダーは、シャルロットを壁まで引きずった。そして、無理にそこに立たせ、次にヴォイチェホフスキーをならばせた。最後に、エッフェンベルガーを立たせると、男は言った。
「チャルトルィスキー公爵はどこだ?」
「知らない」ヴォイチェホフスキーもあくまでもドイツ語で言った。
「嘘をつけ!」男が言った。ほかの二人の侵入者たちは、二つあるドアの前にそれぞれ立ち、人質たちを見た。
「われわれをどうしようというのだ?」エッフェンベルガーがドイツ語で訊ねた。彼が話したのは、これが初めてだった。
「あんたには、一つ、仕事を頼もうか」男は、オーストリア風のドイツ語でそう言うと、シャルロットが使っていたノートに何か書いて破り取った。そして、それをゆっくりと折って小さくたたみ、エッフェンベルガーに渡した。
「いいか、これをチャルトルィスキー公爵に渡すんだ」リーダーはドイツ語でそう言うと、エッフェンベルガーをナターリア夫人の部屋に通じるドアから外に出した。
 彼は、ピストルを二人に向けたままポーランド語で言った。
「残りの二人は、間違いなくポーランド人だな。さて、ここで自己紹介させてもらおうかな。俺の名前は、フェリックス=ザモイスキーだ」
「フェリックス=ザモイスキー?」二人はまるで幽霊でも見たような顔で繰り返した。二人とも、1907年12月のチャルトルィスキー公爵の暗殺未遂事件のことは忘れていなかった。
 彼はにやりとした。「俺を覚えていてくれたとは、嬉しいね」
 シャルロットは彼から目を背けた。逆に、ヴォイチェホフスキーは彼をにらみつけていた。
「俺は、まだチャルトルィスキー公爵を狙っているし、オーレリアン=ジェルマンの敵討ちも考えている」彼は冷たく言った。「フェリックス=ザモイスキーがいささか若いのでおどろいたかね? 俺は19歳だ」
「でも、どうして、こんなばかなことをするのかね?」ヴォイチェホフスキーは、あくまでもドイツ語で訊ねた。
「ばかなこと?」ザモイスキーは軽蔑したように言った。「いったい何をさしてばかなことと言うんだ?」
 そう言うと、ザモイスキーは胸を張って彼らを見つめた。「俺は、ばかなことなんてしていないぞ。俺たちは、正義のために活動しているんだ」
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