FC2ブログ

年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第22章

第401回

 今度の事件は、チャルトルィスキー家の人々にかなりのショックを与えた。事件は、今度は家の中で行われたのだ。侵入者たちは、庭師のふりをしてなんなく屋敷に入り込んだ。そして、何人もの大人たちがいたのに、彼らには何もできなかった。あのユゼフ=ユリアンスキーほどのボディーガードでさえ、3人の男たちの奇襲の前に破れたのだ。
 チャルトルィスキー公爵は、自分の死を確信した。そして、覚悟を決め、初めて遺言状を書こうという気を起こした。彼は、自分の死に際して、妻のナターリアと娘のシャルロットに財産を残そうと考えたのだった。少なくても、自分の死後、二人にはこれまで通りの生活をさせなければならないと考えたのである。そして、甥のアレクサンドル=ポニァトフスキーをけんせいしていた。彼は、アレクサンドルが妻のナターリアを愛していることを知っていた。妻を亡くした後、再婚せずに暮らしているアレクサンドルを見ると、彼は甥が自分の死を待っているような気がしてならなかった。もちろん、甥がナターリアと結婚できるはずはないのだが、それでも、甥は自分の死によって、自分の財産と、ナターリアに自由に会う権利を手にすることができるのである。彼は、甥を恐れた。
 彼は、ナターリアとアレクサンドルには、何を残すのかそれぞれ指定した。そして、こういう項目を入れたのである。《もし、わたしの死後、二人が再婚するようなことがあれば、二人はそれを相続する権利を失う。そのときには、遺産全体の評価額の9分の2にあたる分(すなわち、それぞれ9分の1ずつ)が彼らの取り分となる。そして、その場合、残りの財産はすべてシャルロットが相続する》というものだった。
 ポニァトフスキーは、弁護士からそれを聞かされ、あぜんとした。彼は、ナターリアと再婚するつもりはなかったが、血がつながっている自分より、ナターリアの連れ子であるシャルロットがそれほどの待遇を受けるのが納得できなかったのである。ナターリアが遺産を相続したとしても、いずれはシャルロットがそれを相続することになるだろう。どうして、血縁である自分より血のつながりがないこの少女が大切なのだ?
 彼は、ナターリアのもとの夫が貴族ではないと聞いていた。しかし、どのような人物なのか、フランスではどんな暮らしをしていたのか、彼にはまるでわからなかった。それで、彼は、フランスに人をやり、シャルロットの父親のことを調べさせたのである。ところが、その調査結果には、ポニァトフスキーが仰天するようなことが書かれていたのである。
 ポニァトフスキーの話を聞いたチャルトルィスキー公爵は、開口一番、「まさか!」と言って笑い出した。公爵にとって、甥の話は、あまりにも突飛すぎた。公爵は、甥がシャルロットをよく思っていないことを知っていたので、出任せ半分に話しているのだろう、くらいに考え、再調査を約束して甥を帰らせた。
 公爵は、怪我が治らずに入院中だったシャルロットのところに出かけた。
 二人は、いつものようにとりとめのないはなしをした。公爵は、シャルロットの無邪気な表情を見つめ、いきなりこう質問した。
「ねえ、どうして、おまえのおばあさまは、おまえをポーランドに送ろうって思ったのかな?」
 シャルロットは真っ青になった。かの女は、こわばった表情になり、悲しそうに公爵を見つめた。その目には、涙がたまってきた。
「・・・言いたくないのなら、言わなくてもいいよ」公爵が優しく言った。
「わたし、隠していたわけじゃないの。話したくなかっただけなのよ・・・」シャルロットは下を向いた。
関連記事
 関連カテゴリ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第一部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第二部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第三部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 SIDE-B
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 外伝
総もくじ 3kaku_s_L.png 更新
総もくじ 3kaku_s_L.png 日記
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第一部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第二部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第三部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 SIDE-B
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 外伝
もくじ  3kaku_s_L.png データベース
もくじ  3kaku_s_L.png 設定
総もくじ 3kaku_s_L.png 更新
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
総もくじ 3kaku_s_L.png 日記
  ↑記事冒頭へ  
*Edit
  ↑記事冒頭へ