FC2ブログ

年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第22章

第402回

 シャルロットはつらそうに話し出した。「わたしは、ル=アーヴルで、いとこのマクシミリアンと暮らしていたの。マックスは、わたしのお兄さまのような存在だったわ。わたしにとっては、フェレックよりエデックに近いような存在だった。わたしたちは、いつでも一緒だったわ。マックスは、わたしを学校にまで連れて行ってくれたの。勉強をするのも、遊ぶのも一緒・・・。そして、いつもわたしをかばってくれたわ。あの日も、そうだったの・・・」
 かの女は、そう言うと黙り込んだ。
「・・・あの日?」公爵が先を促すように声をかけた。
「あの日も、わたしたち、散歩をしていたの。わたしたちは、夕方になると、一緒に散歩をする習慣だったの。あの日、わたしたちは、いつものように家を出たの。理由は思い出せないんだけど、わたし、よそ見をしていたのよ。ちょうど、マルセルおじ様が帰ってきたところだったんだけど、わたしは、彼の車に気がつかなかった・・・」シャルロットはすすりあげた。しばらく黙ったあと、シャルロットは泣きながら続けた。「・・・でも、マックスは、車にひかれそうになったわたしをかばって、わたしと車の間に飛び込んだの。そして・・・」
 シャルロットはしゃくりあげた。その先は話したくなかった。しかし、公爵の優しいグレイの目を見ると、黙っていることはできなかった。
「そして、彼は足を失ったの。わたしは無事だったのに・・・。わたしさえちゃんと前を見ていたら、あんなことにはならなかったのに!」シャルロットは激しく泣き出した。今まで誰にも言わずにいたことを吐き出して、かの女は動揺していた。
「おまえのせいじゃないよ」公爵はうろたえたように言った。
「いいえ、おばあさまは、わたしのせいだって言ったのよ。おまえは、この家の疫病神だって。ウワディスワフが死んだのも、マックスが足を失ったのも、みんなおまえのせいだって!」
 公爵は激しい口調で否定した。「違う。おまえのせいじゃない!」
「でも、おばあさまは言ったのよ。おまえがここに来てから、ちっともろくなことにならない。おまえなんか、もういらない。ポーランドにいる母親のところに行ってしまえ、って、とっても恐い顔で言ったのよ」シャルロットはすすり泣いた。「ねえ、わたしは、ここでも邪魔者なの? 疫病神なの? わたしが来たから、パパは命を狙われるようになったの?」
「違うよ、ブローニャ。絶対に違う!」公爵はきっぱりと否定した。
「わたしなんか、もういらない? わたし、また出て行かなくちゃならないの?」シャルロットは目に涙をためたまま、公爵を見上げた。
「おまえは、前にもそう聞いたよね。覚えているかい?」公爵が訊ねた。「そのとき、わたしが何と返事をしたか、おまえはもう忘れてしまったのかね? わたしは、こう言ったんだ。『ずっとここにいていいんだよ、ブローニャ。ここは、おまえの家だもの』」
 シャルロットはまだ不安そうに公爵を見つめていた。
「いいかい、ブローニャ。おまえは、わたしにとってたった一人の娘なんだ。おまえがいてくれて、わたしは本当によかったと思っている。おまえは、わたしに喜びを運んできてくれた。たとえ、血がつながっていなくても、おまえはわたしの娘だ。誰が何と言おうと、おまえはわたしの娘なんだ。わかるよね?」
 シャルロットは公爵の首に抱きついた。
 公爵も、これで自分の決心を固めた。そう、誰が何と言おうと、シャルロットは自分の娘なのだ!
関連記事
 関連カテゴリ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第一部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第二部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第三部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 SIDE-B
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 外伝
総もくじ 3kaku_s_L.png 更新
総もくじ 3kaku_s_L.png 日記
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第一部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第二部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第三部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 SIDE-B
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 外伝
もくじ  3kaku_s_L.png データベース
もくじ  3kaku_s_L.png 設定
総もくじ 3kaku_s_L.png 更新
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
総もくじ 3kaku_s_L.png 日記
  ↑記事冒頭へ  
*Edit
  ↑記事冒頭へ