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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第23章

第420回

 それから約一ヶ月間、チャルトルィスキー家は混乱していた。主不在の屋敷にアレクサンドル=ポニァトフスキーが乗り込んできて<乗っ取って>しまったからだった。ユゼフ=ユリアンスキーらチャルトルィスキー家がわの使用人たちは、ポニァトフスキーの動きに抵抗した。ポニァトフスキーは、もともと屋敷にいた使用人たちをすべて解雇し、自分が連れてきた使用人を置いたが、チャルトルィスキー家の使用人たちは、決して出て行こうとはしなかった。こうして、屋敷には二つの勢力ができて、どちらも譲らずにいた。
 その対立を知って、シャルロットはユゼフ=ユリアンスキーに言った。
「アレクサンドルおじさまは、あの屋敷を、遺産の自分の取り分だとおっしゃるのでしょう? じゃ、差し上げたら?」
「シャルロットお嬢さま、伯爵さまは、あなたの取り分をお認めになっていらっしゃいません。あの屋敷にこだわるのはそのためです。つまり、あなたに帰る家を用意しないつもりなんです」
「でも、彼は、一族の人間だわ」
「じゃ、あなたは、公爵さまの大切なお屋敷を、彼に渡してもいいとおっしゃるんですか?」
「家なら、ほかにだってあるでしょう?」
「あなたにとって、公爵さまとは、その程度の方だったのですか?」
 シャルロットの顔がくもった。「わたし、あの屋敷が大好きだったわ。そこに、チャルトルィスキー公爵がいたから・・・。でも、彼がいない屋敷は、以前の屋敷じゃないわ。だから、わたしは・・・。あのね、ユリアンスキーさん、わたしにとってあの屋敷は、彼そのものだったのよ」
「だったら、その彼を守らなくてはならないんじゃないですか?」ユリアンスキーは必死になって言った。「あなたのためだけじゃありません。あの屋敷は、奥さまのものでもあります。わたくしたちにも、あの屋敷は公爵さまの象徴なのです。だから、わたくしたちの戦いを認めて下さい。お願いです。お嬢さまにはご迷惑をかけません。みな、わたくしたちだけでやります。ですから、どうか戦わせて下さい」
「でも、彼は、公爵のたった一人の肉親よ。でも、わたしは・・・」
「血がつながらなくても、あなたは、公爵にとってたった一人のお嬢さまです、そうでしょう?」
 シャルロットはうなだれた。
「ですから、この戦いは、お嬢さまのためでもあります。許して下さいますよね?」
「お気持ちはとても嬉しいけど、それはできないわ」シャルロットはユリアンスキーを見つめて答えた。
「じゃ、こう言い換えましょう。わたくしたちは、みな、公爵さまを愛しておりました。そして、あの屋敷もです。あの屋敷がなくなったら、わたくしたちにとって、もう一度公爵さまを失うのと同じ悲しみを味わうことになるのです。それがどんなことか、おわかりですね? だから、やらなければならないのです。もちろん、同じ一族の方を敵にまわすのは、わたくしたちにもつらいことです。でも、またあの悲しみを味わうのはごめんです。どうか、おわかり下さい」
 シャルロットは、エドゥワルド=ユリアンスキーの方を見た。彼もうなずいていた。かの女は、また父親のユゼフ=ユリアンスキーの方へ目を移した。
「・・・わかったわ。あなたたちの気が済むまでおやりなさい。でも、わたしには、何もしてあげることはできないわ」
「認めて頂くだけで結構です」ユリアンスキーは嬉しそうに言った。
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