FC2ブログ

年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第23章

第423回

 7月の終わりに近いある日、シャルロットの病室を一人の老人が訊ねてきた。
 彼は、シャルロットを懐かしそうに見つめ、ポーランド語でこう言った。
「わたしの名は、アファナーシイ=ザレスキー。きみがザレスキー一族なら、名前くらいは知っているだろう?」
「ええ。第10代当主の弟さんで、現在の第12代当主のおじいさまにあたるかただそうですね」シャルロットは静かな口調で言った。「はじめまして。でも、わたしは、あなたにどう名乗ったらいいのでしょう?」
 彼は真面目な顔で答えた。「・・・ナターリアが問い合わせてきたときは、どういうことがよくわからなかったけどね。今考えると、あれは、きみは誰なのか、という質問だったんだね。あのときには、質問の意図がわからなかった。もう少し早くきみに会えたらよかったんだけどね。ここに来るまで、質問の答えを考えていたんでね。きみに会うまでは自信がなかったが、今なら答えられそうな気がする」
「わたしは、ザレスキー一族なんですか?」シャルロットが訊ねた。
「ああ、そう思うな。きみは、ちいさい頃のステラによく似ているよ」
「ステラ?」シャルロットは首をかしげた。
 その様子を見て、彼は初めてほほえんだ。「そうそう、そうした様子が、かの女そっくりなんだ! ステラも、きみと同じ癖の持ち主だった・・・」
 シャルロットは困ったような顔をして彼を見つめた。
「ステラというのは、わたしのいとこだ。ええっと、結婚してフランス風に名前を変えたんだったよね。確か、ステラ=マリー=カトリーヌ=ド=ルージュヴィル・・・だったかな。かわいい子だった・・・」彼は嬉しそうだった。
「・・・死んでしまったんですね、かの女は?」シャルロットが訊ねた。
「ああ。もう20年以上前にね。かわいそうなひとだったよ、あのひとは・・・」彼が懐かしそうに言った。「きみは、ステラの孫なんじゃないかな。きみを見て確信した。きみは、たぶん、1907年に死んだことになっている、ステラの孫のシャルロットだと思うよ」
「死んだことになっている?」シャルロットは驚いて訊ねた。
「そう、交通事故死だったと聞いている」彼は優しく言った。「・・・もし、そうだったとして、どうしてきみは、ちいさい頃のことを覚えていないの? きみは、フランスで---たぶん、ミュラーユリュードというところで、どうやって暮らしていたのか、全然覚えていないの?」
「ミュラーユリュード? わたしは、そこで暮らしていたのですか?」
 彼は驚いた。「ミュラーユリュードを覚えていたの?」
 シャルロットは首を横に振った。「いいえ。でも、一年くらい前にその地名を聞いたとき、初めて聞いたんじゃないような気がして、気になっていたんです」
「なるほど」彼はうなずいた。「次に、きみの名前だが、マリー=クリスティアーヌ=ルイーズ=シャルロット=ド=ルージュヴィルというのだが、事情があってユーフラジー=シャルロット=ド=ラ=ブリュショルリーと名乗っていた」
「母が再婚でもしたのですか?」シャルロットはブローニャの複雑な名前を思い出して訊ねた。
「きみのご両親---と思われる人たちは、両方とも初婚だよ。詳しいことはよくわからないけど、きみの母親は既に亡くなっている。父親は有名な博士だが、同じ交通事故で亡くなった。いや、きみが生きているのだから、どこかで生きているかも知れないが。ルイ=アントワーヌ=ド=ラ=ブリュショルリーといって、ナターリアのいとこにあたる男性だ。彼が、ステラの息子だった」
「・・・ということは、クラリス=ド=ヴェルモンは、わたしのおばさまなんですか?」
 彼は驚いた。「クラリスを知っているの?」
関連記事
 関連カテゴリ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第一部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第二部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第三部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 SIDE-B
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 外伝
総もくじ 3kaku_s_L.png 更新
総もくじ 3kaku_s_L.png 日記
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第一部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第二部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記  第三部
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 SIDE-B
総もくじ 3kaku_s_L.png 年代記 外伝
もくじ  3kaku_s_L.png データベース
もくじ  3kaku_s_L.png 設定
総もくじ 3kaku_s_L.png 更新
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
総もくじ 3kaku_s_L.png 日記
  ↑記事冒頭へ  
*Edit
  ↑記事冒頭へ